「失恋をきっかけに、ワンナイトラブしか出来なくなった」
職業柄、友人からよく恋愛相談を受けます。相談といっても、正式なセッションでは無いですし、近況報告のひとつとして話してくる感じなので、気軽に「こうしたら?」とアドバイスをすることが多いのですが、先日はいつもと違う流れになりました。
「特定の恋人を作りたい」と言っていた彼(以下、A君)でしたが、なぜか女性と「一夜限りの関係」に陥ってしまう、という悩みを持っていました。もちろんこれまで何人かの女性とそれなりの期間は付き合ったことはあるのですが、ある失恋をきっかけに新しい恋人をつくることができなくなっていたのです。
その時も、「またやってしまった」とA君はワンナイトラブの経験を話していたのですが、彼としても「いい加減にこのパターンを止めて、本気の恋愛に取り組みたい!」という気持ちが強まっているようでした。そこで私は、ある言葉をA君にかけたのです。
A君が、「変わりたい」のに「変われない」理由は?
「もし君が本気で変わりたいと思っているなら、今ヘラヘラしていてはいけない。君にはまだ“痛み”が足りないんじゃないかと思うけど、どうかな?」電話越しの相談でしたが、彼が今回の失敗談を普段のトーンで話していたのが気になって、あえてこのように問いかけました。彼は表面上では「変わりたい」と言っていますが、意識の奥底では「変わりたくない」と思っていたのが分かったからです。
私の言葉を聞いたA君はギクッとした様子でした。
そして、「確かにそうだ」、とA君は観念した様子で、次のように続けました。
「俺は変わりたいと今まで何度も言った。でも、変われていない。じゃあ、どう痛みを得ればいいんだ?」
まだまだ甘い汁を吸えると思っていると、人は手放せない
私が言った、A君にとっての『痛み』とは、いわば現状の恋愛……つまりワンナイトラブを続けることに対して「いかにデメリットを感じるか?」ということを指しています。
なぜなら、人は自分にとってメリットの多い行動を続けます。逆に、デメリットを多く感じる行動は、次第に避けるようになります。
つまり、A君は「ワンナイトラブ」を続ける方が、特定の恋人と付き合いを続けるよりもメリットがあると内心では感じているのです。
「今の恋愛には、まだまだ甘い汁がある。メリットが沢山ある。だから、特定の恋人をつくりたくない」……彼の心の声は、そう私に語りかけていたのです。
更に言えば、つらい「失恋」がきっかけとなり、A君は一夜限りの関係以上に相手の心に踏み込めなくなってしまったようでした。相手に否定されることを、極端に恐れているのです。「しかたない、自分の恋愛とはこんなものだ」とセルフイメージを下げて、納得し、本当のパートナーシップをあきらめているのです。
友人としても、専門家としても、A君により素晴らしいパートナーシップを築いて欲しいと思っていた私は、次のようにアドバイスをしました。
吐き気がするほどの未来を断ち切る方法
「まず、心から決断すること。そのために、未来の痛みを先取りし、それから最高の自分にリードしてもらうんだ」
このままでは、A君は何かしら痛い目を見ないと何も変わることはない。そう思い、あらゆる感覚を使ってもらうべく、上記のような質問を投げかけ、イメージワークをしてもらいました。
・このまま現状の恋愛が続いた5年後に自分がどうなっているのか?
・そんな未来を迎えた自分は一体どんな表情なのか?
・そのとき、周囲の人間から、どんな目で見られるのか?
・共通の友人はどんな言葉を投げかけるのか?
つまり、今のA君本人に、とことん未来の痛みを先取りして感じてもらったのです。
A君は電話越しでも分かるくらい落ち込み、時には嗚咽をしている様子だったので、彼に「変化」を決断することを促しました。そして、本当に迎えたい未来をイメージしてもらい、未来の自分からアドバイスをもらうよう伝えました。
未来の自分を創造し、退路を断ち切る決断を
後日、話をしてみるとA君は、恋愛に対する考え方に変化が起きていました。「自分にふさわしいパートナーシップは、現状のような恋愛ではない」と、セルフイメージを上げることに成功することができたのです。表面上の「またやってしまった」「変わりたい」では意味がありません。「二度と戻らない!」という退路を断ち切る気迫で決断してもらった成果でした。
あなたの現状の恋愛が、もし本当に得たいものではない場合、未来の痛みを先取りし、決断し、セルフイメージの基準を上げる必要があります。
「もう絶対に、今のままでは満足しない!」――心の底からそう思える時、古い恋愛のパターンを捨て、新しい恋愛の流れを手にすることができます。