赤羽駅に朝の9時集合!
Oくんからプロデューサーが交替するというメールが来た。引き継ぎもかねて、散歩に行きましょうとのこと。場所は赤羽。どんな散歩になるのか、まったく知らされないまま、集合が朝の9時に赤羽駅に決まった。これは“朝活”かなと思った。酒飲みの人たちにとって朝活といえば、朝から酒を飲むことだ。赤羽といえば朝から飲める有名店があるのだ。「おはようございます」とあいさつ。Oくんと、M恵さんだ。「赤羽線を歩くという散歩です」と初めて今回の散歩の趣旨をOくんから教えられた。“赤羽線”かぁ、懐かしい。今の若い人は知らないよね、と僕。「そうなんですよ、埼京線・湘南新宿ラインの赤羽―池袋間は昔、赤羽線と呼ばれていたらしいんです」とOくん。そして、その区間の沿線の踏み切りにはいまだ「赤羽線」と書かれたプレートが残っているというのだ。
てっきり、朝飲みかと思ったよ、と言えば、それも行きましょうとOくん。というわけで、まずは、駅前の商店街などを見て回る。ここは、赤羽にくわしいOくんが散歩リーダーとなって案内してくれた。まずは、『まるます家』さんがある赤羽一番街。
Oくんは10年ほど前、よく赤羽で飲んでいたそうだ。ここOK横丁には、Oくんが初めて赤羽にきたときに飲んだ店があるというのだが、さすがに昔のことで、わからなかった。
歩きながら、ざっくり自己紹介。
M恵さん、なんと1992年生まれなんだそうだ。びっくり!「平成4年生まれですね」とのこと。「彼女が生まれたときに僕は小学校3年生でしたね」とOくん。それにもびっくり。Oくんは1981年(昭和56年)生まれだそうだ。さて僕だが、M恵さんが生まれたときにはもうバリバリに働いていたし、Oくんが生まれたときは大学生だった。
シルクロード商店街へ。「喜多郎の音楽が聞こえてきそうだね」と僕。もちろん二人は「???」だ。NHKでシルクロードを取材した番組を放送していたのは、僕が大学生から社会人になったころだ。
この商店街には、おでんで一杯飲める立ち飲み屋さんの『丸健水産』さんがある。『まるます家』さんと並んで有名なお店だが、こちらの開店は朝10時で、まだ開店準備の最中だった。
『まるます家』さんで乾杯!
シルクロード商店街を抜けると、赤羽一番街の『まるます家』さんがある。入店!朝の9時からやっているこちらのお店で、僕とOくんは生ビール小、M恵さんは、青リンゴサワーでカンパ~イ!
「お新香と、せっかくだから鰻の蒲焼をもらいましょうか」とOくん。しかし、こういう散歩もいいねぇ。
M恵さんは今年、上京したばかりと言う。まだ東京に土地勘がないんだとか。ただ、テレビドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』の原作にもなった清野とおるさんの『ウヒョッ!東京都北区赤羽』というコミックを読んで、赤羽に興味を持ったそうだ。
「おいしいですね、蒲焼、うなぎガイドさんだとこちらはどういう評価をされるんでしょうかね」とOくん。酔いがまわってきたのかハイボールをおかわり。
さらに「白焼きもたのみます?」とすっかりダメ人間になっていくOくん。いやいや、これから池袋まで歩くのだから、ほどほどにしといたほうがいいとたしなめる。そうですね、といいながら、「うなぎガイドさんは、どう評価するんですかね、ここのうなぎ?」と同じことを繰り返してきたので、Oくん、けっこう酔っ払ってきたようだ。
ちなみに散歩のあとで、うなぎガイドの山室賢司さんにコメントをいただいた。
「蒲焼は蒸したふんわりとろとろ系辛めのタレですね。そうです酒がすすむんです。個人的にはうなぎのカブト串=うなぎの頭がおすすめ。柔らかく処理してあって、脳髄の旨味と辛めのタレがよく合うんです。あ~食べたくなってきた(笑)」
なるほど、カブト串がうまいのか。先に聞いとけばよかった。
それにしても、朝なのにお客さんがどんどんやってくるね。お会計をしてお店を出た。
踏切を渡りながら、赤羽線を歩く
いったん、駅まで戻り、東口から西口へ。さて、歩こうと思ったら、Oくんの様子がおかしい。「すみません、お手洗いに行ってきます」と商業施設へ消えていく。冗談なのかと思った。というのも、ほんのさっき『まるます家』を出るとき、店のトイレに行っていたからだ。さて、ここからの散歩リーダーはM恵さんだ。スタート地点は、稲村遊歩道。歩行者専用道路で歩きやすい。左に赤羽線の高架を見ながら、右側は住宅街が続く。
またまたOくんに異変。「お手洗いに行きたいんですけど」と言う。かなり緊急らしく、「そこで借りましょうか」と言う。『清水坂あじさい荘』という福祉施設だ。「いや、この先に公園があるので、そこにトイレがあるはず」と僕。
実はこの散歩コース、なぜ今まで歩かなかったのかと思うほど、いい感じだった。公園の東側を赤羽線が走っていく。赤羽駅では、東北本線、上越・東北新幹線と同じレーンを走っていたが、そこから分かれて赤羽線のみが走っている。
さらに南へ進めば環七に出る。馬坂歩道橋で、環七を渡る。
環七を超えるとしばらくは住宅街を歩く。目まぐるしく景色の変わるいい散歩コースだといえる。
住宅街に赤羽線の踏切があった。赤羽線の上り下りの線路が間近に見えてちょっと興奮!
踏切の場所に名前の入ったプレートがある。Oくんが興奮気味に「ほら、ここ赤羽線って書かれたものが残っていますよ、”埼京線”に変更するのが面倒だからこのまま残しているんですかね」と言う。あくまでこれはOくんの推理だが、その真相を確かめるべく、我々は先に進んだ。
さて、ここから十条商店街を抜けていく。活気のある商店街に2人とも興奮気味だ。「ここは、コロッケが30円だったりするんですよ」と言えば、Oくんが「それじゃ、僕、一人1個ずつおごりますよ。太っ腹でしょ」とのこと。
このお店、奇しくも以前、十条商店街散歩で僕がコロッケを買ったお店と同じ。
十条駅に到着。駅のすぐ横に踏切があった。
この踏切は、十条道踏切というそうだ。ここにも赤羽線の文字がある。
しばらく、赤羽線と平行しながら歩く。住居表示が北区から板橋区にかわったあたりで、石神井川につきあたる。
川沿いの道には“俳句の散歩道”という消えかかった看板があった。かつては俳句が展示されていたのだろう。
川沿いの道は桜並木になっていて、歩いていて気持ちがいい。桜並木は、散歩者にはうれしい。春は花が楽しめて、夏は葉が茂り、木陰をつくってくれる。
冬は、その葉が散り、太陽光を浴びさせてくれる。「四季を通じて桜並木は散歩者にやさしい」と、こんな話をしたら、Oくんからツッコミ。「秋はどうなんですか?」。秋は紅葉。“桜紅葉(さくらもみじ)”という言葉があるように、葉がオレンジ色に色づいて、これまた美しい。
中山道の下を赤羽線が通っている。十条駅方面へカメラを向けた。
板橋駅の手前に踏切があった。こちらは仲仙道踏切。
ここで、この踏切に書かれている“赤羽線”と書かれている文字のナゾがとける。
JR板橋駅のみどりの窓口でお話をうかがった。Oくんは、踏切に残っている赤羽線の文字はなぜ埼京線ではないのかと質問。駅員さんは、いやいや、正式名称は赤羽線だから、とのこと。えーっ、僕らはてっきり、赤羽線という名前がなくなり、埼京線になったのかと思ったら、そうじゃないんだ。
駅員さんが見せてくれたのは『JR時刻表』。そこには、池袋駅-赤羽駅間は赤羽線と書かれている。ちなみにその先、赤羽駅-大宮駅間は東北本線、大宮駅-川越駅間が川越線となっているのだ。なーんだ、正式には赤羽線だったんだ。どうやら、それぞれの区間を合せた総称が埼京線なのだそうだ。ナゾは解けた!