アドバイス1 現状の貯蓄ペース維持が「子ども3人」の条件
まずは貯蓄が今後どうなっていくかを試算してみます。現在、毎月9万円を積み立てていますが、新居では今後、売電による収益が月3万~4万円見込まれるとのこと。それを3万円として、すべて貯蓄に回せば月12万円ですから年間144万円。ボーナスから実際どのくらい貯蓄できているのか不明ですが、明記されているもの以外にも何かと支出があると想定して、仮に支給額の半分、年間125万円できたとします。これを、ご主人が60歳になるまで28年間継続すると、その間に貯められる額は約7500万円となります。
しかし、奥様の出産~育児の間は世帯収入が減額となりますから、大まかではありますが、500万円差し引いて7000万円としておきましょう。
次に支出を見ていきます。
教育費を含めた、お子さん1人を育てるのにかかる全費用は1200万円ほどと言われています。今後、お子さんを2人希望されていますので、子育て費用は計2400万円。現在2歳のお子さんについては、大学費用は終身保険の解約返戻金で、ほぼ確保できていますから、費用の計上を800万円とすれば、今後かかる総費用は計3200万円ということになります。
他に、ご主人が60歳までに発生する大きなコストは、自宅の外構工事がトータルで500万円。あとはクルマの買い替えが3回程度あるでしょうか。それらをさらに差し引くと、60歳までに貯蓄として残せる額は、現在の貯蓄額と投資商品と合算すると、2700万~3000万円ということになりそうです。
退職金については、あくまで推定ですが、夫婦合算で1500万~2000万円は手にできるのではないでしょうか。であれば4500万円程度の老後資金が確保できます。65歳まで働くとして、そこから25年間、90歳までを老後生活とすれば、月額15万円が公的年金に上積みできます。夫婦とも厚生年金に加入していることを考慮すると、将来、自宅のリフォーム費用が発生しても、老後資金として十分な範囲で用意できることになるわけです。
アドバイス2 ボーナスからの貯蓄が大きなポイント
こう考えていくと、今の支出額を超えないように家計バランスを保っていくことが家計管理のポイントであり、貯蓄額の目安となることがわかります。当然、保育園と小学校ではかかる教育費に差がありますので、教育費は時期によっては支出額が異なってきます。しかし、それ以外の支出費目は現状を維持するようにしていけば、結果的には先の試算に近い資金が用意できることになります。とは言え、家計管理の維持はそう簡単ではありません。家族が増えれば食費も増えますし、水道光熱費や通信費も上がる可能性があります。そこで、カギとなるのが、いかにボーナスから継続的に貯蓄をしていけるかということです。
先ほどの試算で、年間ボーナスからその半分=125万円を貯蓄に回すとしましたが、100万円に減ったら総額で700万円、50万円に減ったら同じく2100万円、老後資金が減ることになります。
また、ボーナスからの支出を抑えても、ボーナスの支給額そのものがダウンする可能性もゼロではないはずです。思いのほか家計支出が増えれば、ボーナスからの貯蓄率を上げなくてはいけません。そう考えれば、ボーナスの管理は十分気を付けておくことが大切です。
アドバイス3 予算枠を決め、それを徹底していく
もうひとつ大事な点は、家計は一人で頑張っても、目指すような管理はできないということ。家族の理解と協力が不可欠なのです。そこで気になるのが、やはり日頃からご主人が支出過大という点。ゴルフも自己啓発も、それ自体を浪費と決めつけることはできませんが、そのことで「日頃喧嘩が絶えない」ということですから、その支出額には問題があるということです。しっかりと予算を決め、それをオーバーしないということを徹底してください。大変でしょうが、十分に話し合い、奥様の真剣な思いを時間をかけて伝えることしかないでしょう。
確かに、世帯収入が高いため、4600万円もの住宅ローンを背負っていますが、実際に日々の生活費では困っていません。それどころから、貯蓄ペースもそれなりの額を維持できています。ご主人の危機意識が低いのも、当然かもしれません。さらに言えば、「せっかく新居を買ったのだから窮屈な思いはしたくない」と言われている奥様にも、ご主人ほどではないにしろ、そういった意識は多少あるかもしれません。それもまた自然なことだと思います。
支出は予算ですから、どう配分するか、ということが大事となります。収入から必要な貯蓄額を差し引き、残った資金に優先順位を付けて、支出に回す。そして、資金の枠内に全体支出を収めることが、家計管理です。
たとえば、毎月の支出費目に、年2回の帰省と数回の家族旅行の費用が計上されていますが、お子さんが3人になれば、おそらく今の予算では足りなくなります。収入が増えていないのなら、その旅行費用を削るか、他の支出を削らなくてはいけません。それは、ご主人と奥様がともに納得する部分で調整していかなくてはならないということです。
最後に、貯蓄について。社内預金が金利1%とのことですが、これほど金利の有利な元本保証商品は、現在の金融機関には見当たりません。これをメインに積み立てを行ってください。投資については、当分これ以上額を増やすべきではないでしょう。今後、お子さんが2人増えて、それでも家計の貯蓄ペースがしっかり維持できるまで、しばらくリスクは取れません。
また、マネープランは、一度立てれば終わりではありません。お子さんの進路や退職金の金額など、マネープランに関わることが具体的になれば、そのつど試算をし直してみることも大切です。所得の減額についても同様です。それが結果的に、いざというときに慌てることなく、十分な備えを実現することになるのです。
相談者「もちこ」さんから寄せられた感想
住宅購入や奨学金の一括返済により、貯金が底をつき、新居での新たな生活に不安がありましたが、専門家の方にきちんと試算していただき、このままの貯蓄ペースを維持していけば子どもや老後についても、なんとかなりそうとのご意見をいただき安心しました。社内預金を活用しながら、できる限り今の貯金ペースを維持していきたいと思います。また、夫とも協力しあい、夫婦で家計管理ができるように、無理のない範囲で我が家の生活スタイルをつくっていきたいと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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