お金の悩みを解決!マネープランクリニック/マイホーム購入・住宅ローンで悩むファミリー世帯

32歳貯金150万。家を買うため親から借金しますが赤字(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、住宅購入を決めたものの、ローン返済に悩む30代女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 親への返済額を下げるのがもっとも現実的

住宅ローンの支払いが始まったら家計がどうなるか、まずはそこから試算してみましょう。

住宅ローンは、ご主人が定年になるまでに完済したいということですから、60歳定年とすれば借入期間23年となります。希望される10年固定で借りたとして、金利1.0%、借入額1500万円とすると毎月の支払いは約6万1000円。これに親御さんへの返済4万円が加わりますから、返済は計10万1000円。さらに、固定資産税や将来のメンテナンス費用として、月2万円をランニングコストとして上乗せすれば、トータルの住宅コストは月12万1000円となります。

一方、家計支出からは家賃が消えますから、実質の住宅コストは6万8000円増となり、毎月の収支はマイナス2万4000円。赤字分はほぼボーナスで補てんできますが、車検費用や自動車税、その他の不定期の支出を考えれば、年間で10万円程度の赤字になるはずです。

こうなってしまう要因は、やはり住宅コストの負担増にあります。金融機関からの借り入れと親御さんへの返済で毎月10万円。この金額は、世帯の手取り収入の3分の1に相当します。また、今ある貯蓄も150万円ですから、小さいお子さんのいる家庭としては、やはり心許ない。しかもこのままでは、今後増えることはなく、何かあれば取り崩すという状況です。

対処法としては、親御さんへの返済額はしばらく待ってもらうしかないでしょう。日頃からいろいろ援助してもらい、その上、住宅資金の返済を下げるよう頼むのは、実の親でも心苦しいと思います。しかし、このままでは教育資金の積立(児童手当分)はストップし、貯蓄も目減りしていきます。であれば、もっとも現実的で持続可能な方法として、返済額の軽減を選択するしかありません。
 

アドバイス2 支出削減で年間50万円貯蓄が目標

もちろん、親御さんばかりに甘えてもいられません。これを機会に家計も見直してください。

とは言え、家計に大きな無駄はありませんので細かく削減していくことになります。通信費と家族の小遣いと雑費で計6万円。これを5万円に抑えてみる。
また、保険については、ご主人の保険料が月1万1500円。保障内容は不明ですが、終身タイプかあるいは特約が多数付加されている商品のばす。この保険は払済保険にして、新たに死亡保障2000万~2500万円を割安の10年の定期保険か収入保障保険で確保する。医療保障は単体の医療保険(入院5000円)、もしくはがん保険に絞ってもいいでしょう。それでも保険料は合計で5000円台前半のはず。

結果、これで月1万5000円は支出が節約できることになります。

さらに、家計収支を見てみると、月4万4000円の黒字となります。対して貯蓄は1万5000円ですから、2万9000円の行き先が不明。貯まっていないなら支出していることになります。問題は、それが現状で本当に必要な支出かどうか、です。半分の1万5000円を削れるとすれば、家計から3万円が貯蓄分として捻出できます。

加えて、親御さんへの返済が一時期的になくなることで、家計負担は計7万が軽減されます。したがって、ローン返済開始後も計算上は月4万7000円の貯蓄が可能ですから、ボーナスと合わせて年間70万円の貯蓄が見えてきます。また、奥様も時短勤務から通常勤務に戻り、お子さんも小学校に上がれば教育費も下がりますから、貯蓄ペースはグッと上がってきます。そして数年後、貯蓄額が500万円程度まで回復してきたら、親御さんへ月4万円返済していけばいいのではないでしょうか。
 

アドバイス3 老後の備えは優先順位としてずっと下

心配されている老後資金ですが、考え方としては、老後の生活費から公的年金等の収入を差し引き、実際の不足分がわかれば、老後資金に対するある程度の目安は立てられます。

たとえば、夫婦の生活費を月20万円とします。受け取る年金額はこの場では算出できませんが、もし夫婦で15万円(1人が厚生年金、1人が国民年金として場合の概算)なら5万円が不足することになります。65歳まで働いたとして、90歳まで生きたとすれば、25年間。不足額は1500万円となります。

では1500万円あれば安心かと聞かれれば、断言はできません。途中、要介護になるかもしれません。医療技術が発達して、100歳まで生きるかもしれません。そして何より、そういうことをすべて想定して、資金を100%用意すること自体、現実的ではないのです。

もちろん、1500万円を今から貯めても構いません。家計に余裕があれば貯める方が賢明でしょう。しかし、ご主人が、公的年金の支給が開始される65歳まであと27年。1500万円を貯めるには、年間55万円の貯蓄ペースが必要です。結果、月1万5000円の教育資金の積立ができなくなります。考えるべきは、それでも、目安となる金額を目標に老後資金の積立を優先させるべきか、ということです。

不安になる気持ちはわかります。しかし、そもそも1歳のお子さんがいるご家庭で、今の家計状況や住宅ローンを考慮すれば、まずは教育資金づくりや住宅ローンの返済、そしてその土台となる家計の建て直しであり、老後資金の優先順位は現段階では低いと考えます。

しかし、老後に向けて、今できることが2つあります。

まず貯蓄をすること。貯蓄が増えることで、家計に余裕が生まれます。それは結果的に老後資金につながるからです。結果的に1500万円は貯まらず、500万円だとしても、それはそれで意味のあること。貯蓄に励まなければ、その500万円も手にできないのです。

とは言え、何でも節約では息が詰まります。家族で旅行やレジャーを楽しみながら、生活にメリハリを付け、無駄を削っていく。いただいた支出データも、抜けている支出があるのでは。それが必要なのかどうかを十分チェックしていくべきでしょう。

もうひとつが、元気に、できればフルタイムでより長く働く(=厚生年金の加入時期を延ばす)こと。65歳まで働く。心身とも元気なら70歳まで働いてほしいものです。給与やボーナスのアップは望めなくても、長く働くことで、アップと同様の効果が得られます。とくに、60歳以降も継続して収入を得ることは、金額に関係なくとても重要なことなのです。

そのためにも、たえず家族の健康管理には気を配り、仕事で頑張れるよう、心休まる家庭を築いてください。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
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業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ




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