諏訪内晶子(ヴァイオリン) フランク、R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ、他
自ら国際音楽祭NIPPONの芸術監督を務め、演奏活動に加え後進の指導にも力を入ているヴァイオリニスト諏訪内晶子。4年ぶりとなる今回のアルバムは、ヴァイオリン・ソナタの傑作と言われるフランクのソナタに、R.シュトラウスの青年期の名作であるソナタ、さらには2016年に没後20年を迎える武満徹の悲歌を収録しています。進化しつづける諏訪内晶子の今を伝えるにふさわしい、ファン待望のアルバムと言えるでしょう。
■ガイド大塚の感想
リヒャルト冒頭から一音一音力強く、弓圧の強さ、気の強い攻める音楽が生む出す熱など、諏訪内晶子ここにあり、といった感じ。武満の悲歌はさすが現代音楽を得意とするところで、美しく幽玄な世界を表す。と、そこから続くフランクがこれまたとても印象的。ゆったりと夢のように始まる。何かを思い出すように。次第に彼女らしいよく繋がるボーイングで膨らみを持たせつつ求心力ある大きな歌を歌っていく。が、なんだろう、音がスラーを超えて連綿と繋がり、歌というより絵巻や旅路のように感じる。過去の追憶であり彼女の人生であり、未来への道のりのような。デビュー当初から、美貌の裏に独特な哲学的なものを感じさせる方だが、これからも聴き逃せないと再認識させる演奏。
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堀米ゆず子(ヴァイオリン) J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲
堀米ゆず子のエクストン第1弾アルバム。1980年エリーザベト王妃国際音楽コンクールでの日本人初優勝から、ヨーロッパを中心に第一線で世界的に活躍してきた彼女が、ついにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(BWV 1001-1006)をセッション録音しました。彼女らしいライヴ感溢れる演奏と、見事な技術と最上の音色に圧倒されることでしょう。本人によるライナーも必読です。
■ガイド大塚の感想
これは気合の入ったアルバム。豊かな残響のあるホールの中で、バッハの宇宙を一音一音歌い上げながら正確に空気の創造物のように構築していく。本人の解説も面白く、江藤俊哉先生から聞いた話をよく覚えており、それゆえ演奏における系譜・伝統というものを強く感じる。また、ここが難しい、といった話も書かれるが、生み出される音楽は瑞々しさを持ちながらも流石の堂々たる表現、演奏で見事な完成度。
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ロンドー(クラヴサン) Vertigo(ラモー&ロワイエ:クラヴサン作品集)
昨年デビューした鬼才チェンバリスト『ジャン・ロンドー』のセカンド・アルバム。今回は、フランス・バロックの2人の巨匠「ラモー」と「ロワイエ」の作品を収録。神話、魔法、バレエや精巧な舞台から題された音楽で、当時の光景とフランスのバロック・オペラとの関係と想像力の世界が、キーボード上の10本の指によって誘発されています。なおこのアルバムは、名チェンバリスト「スコット・ロス」の住まいであり名録音が生み出された「アサス城」で録音され、スコット・ロス自身が使用していた名器が使用されています。
■ガイド大塚の感想
次々と登場する新人アーティストの中でも、このロンドーは最も注目すべき個性派と思う。自身の音楽世界が完成されていて、怪しく、夢幻的で、宇宙的な演奏をクラブサン(チェンバロ)から放つ。アルバムタイトル曲のロワイエによるVertigoが象徴的で、めまいを思わせる表現、降り注ぐクラブサンの虹色の雨などめくるめく世界を魅せてくれる。古い楽器により生み出される最も新しい音世界をぜひに。
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