彼が好きなのにキスできないと感じてしまう理由とは...?
イラスト:金子べら(@bera_kaneko)
明らかに不潔だったり、心の奥底を逆なでされるようなデリカシーのない言動をするならわかるのだが、この言葉、女性自身も説明しがたいものがあるのだ。
実際、「嫌いじゃないからつきあってみたけど、どうしてもセックスはできなかった」とか、「好きなのに、結果的に体が彼を受けつけなかった」とか話す女性は少なくない。
結婚相手を条件で選んだ結果、招いた悲劇
婚活に励み、やっとプロポーズされた理想の相手だったのに……。
「実家が裕福ではなかったから、とにかくお金の苦労はしたくなかった。結婚は好きか嫌いかよりも条件を重視していたし、性格がよっぽど嫌でなければいいやと腹をくくって結婚相談所に登録しました。それで3年前に、結婚相談所から紹介されたのが、地方の会社の御曹司。大きな会社ではないけど、その地域では古くから続く老舗だし、彼の印象もよかった。そのとき彼は、修業のために都内に勤めていたので、週末にデートを重ねたんです」
つきあっていくうちに、相手がいい人だということもわかった。ただ、自分の中の恋愛感情が動かない。それでも、結婚は恋愛とは違うと割り切っていたから、特に違和感はなかったという。
「半年ほどつきあってプロポーズされました。もちろん、イエスと即答。浮き立つ気持ちはなかったけど、結婚はある種の就職だと割り切っていたんです。でも、その次のデートで、彼が『今夜はふたりきりになりたい』と言い出して、ひとり暮らしの部屋に誘われたんです。そのとき、私の心の中で、何か『これは違う』という気持ちがむくむくと沸き起こってきた。それが何なのかはわかりませんでした」
真剣交際をし、プロポーズをしてきた交際相手なのだから、結婚前にセックスするのは当たり前。ナホコさんはそう納得しつつ、彼の部屋に行った。
「彼が玄関のドアをバタンと閉めて、ぎゅっと私を抱きしめてきたとき、彼の顔と私の顔の間にある空気に耐えられなくなったんです。もちろん、彼が臭かったとかそういうことではなくて……あ、違う空気の人だ、相容れない空気を持っている人だ、と感じてしまった。彼の顔が近づいてきたとき、私、思わず、『ごめんなさい』って叫んで、部屋を飛び出してしまったんです」
走り続けて大通りに出ると、彼女はすぐにタクシーを拾った。一刻も早く、その町から逃げ去りたかったのだという。
「タクシーの中でようやく落ち着いたとき、わかったんです。私は生理的に彼を受け入れることができないんだ、と。理由はわかりません。結婚したい気持ちが先走って、自分が気になる彼のクセなどを見過ごしてきたのかもしれない。そのストレスが積もり積もって、肉体的に近づくのを拒否したのかも……。ただ、決して嫌いだったわけじゃないんです。でも、半年もつきあってキスもできなかったのは、やはり心理的にも実は遠い存在だったんでしょうね」
彼には相談所を通して、断りを入れた。しばらくの間、自分でも自分の気持ちを分析できず、落ち込む日々が続いたという。
「心理的に遠かったから、肉体が近づくことも拒否した」――この証言は興味深い。最終的に、人は自分を騙し続けることはできないのだろう。
好きなフリをし続けた自慢の彼とのセックス「全身に湿疹が...」
まるで、アレルギー? 体が警告を発して、自分の気持ちに気づかせてくれたという。
「1年ほど前のことです。職場に異動でやってきた同世代の人を好きになり、私から積極的にアプローチ、つきあうようになりました。彼はエリートだし、出世街道ばく進中。結婚も視野に入れて、この人なら私の将来も安泰だわと思っていたんです。ただ、彼はセックスに淡泊なほうだったのか、付き合って3ヶ月くらいたってようやく初エッチ。その直後に私、体中に湿疹が出てしまいました。医者へ行ったら1週間ほどで治ったので、たまたま体調が悪かったのかなと思ったのですが、その1ヶ月後にも彼とセックスしたら、また全身に湿疹が……」
2度目ということもあり、彼女自身、彼とのセックスでヘンな病気をうつされたのではと心配した。だが、医者が言った「何かがストレスになって湿疹が出るのかもしれない」という言葉で気づいてしまった。
「あぁ、と納得しました。私、彼のことが本気で好きではない。エリートだからつきあいたい、女友だちに紹介したら羨ましがられるに決まっているから結婚したいと思っていたのだ、と。この年になって結婚するなら、やはり周りに『すごい』『待っててよかったね』と言われたい。そんな気持ちがあったんですね。彼とのセックスも、確かに没頭できるほど気持ちのいいものではなかった。それも彼が悪いのではなく、私が彼を心から好きではなかったから。私の心より体のほうが正直だった」
彼にまた湿疹が出たと告げると、彼はすべてを察したようだった。そのまま自然消滅。彼はその後まもなく、別の女性と結婚したという。
「ひょっとしたら二股をかけられていたのかも。私が彼を本気で好きになれなかったのは、どこかそういううさんくささを彼から感じていたせいかもしれない……まあ、今となっては知りようがないし、どうでもいいことなんでしょうけど」
レイコさんが言った、「体は心より正直」という言葉が印象に残る。
嫌いではない、もしくは、好きだと思っている。それなのにどうしても彼とのキスやセックスを楽しめない、受け入れられないというのは、無意識に相手への不信感を感じていたり、好きではないのに好きになろうと自分にウソをついている可能性がある。そんなときは一度立ち止まって自分の本当の気持ちを考えてみたほうがいいのかもしれない。
結局、自分で自分を騙し続けても、うまくはいかないものだ。
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