テクノポップ/アーティストインタヴュー

ベスト盤から読み取る中野テルヲのこれまで(2ページ目)

P-MODEL、LONG VACATIONで活動後、1996年のソロデビュー作『User Unknown』から現在までの中野テルヲさんの歴史がわかるベスト盤『TERUO NAKANO 1996-2016』が3月16日に発売! これまでのインタヴューでは聞けなかった、楽曲・楽器にまつわるエピソードについて語っていただきました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

愛着のあったスタジオ名称から

ガイド:
2曲目の「Uhlandstr On-Line」の「Uhlandstr」とはベルリンにある駅「ウーランストラッセ」ですね。それ以前から、古村昌史さんと『Uhlandstr Endless』というタイトルで、AからFまでなるMacintosh用フロッピーディスクによる変則的なリリースをされていますが、「Uhlandstr On-Line」はその延長線上にある作品と考えていいのでしょうか?

中野:
「Uhlandstr Endless」のAのフロッピーには古村氏のグラフィックに合わせて再生される短いサウンドループが収録されているのですが、そのサウンドループを発展させて出来上がった曲が「Uhlandstr On-Line」という訳です。

ガイド:
「ウーランストラッセ節」という曲もあり、「ウーランストラッセ」には強いこだわりがあるように思われますが、何か特殊な思い出でもあるのでしょうか?

中野:

作品の世界の中ではあくまで“仮想の場所”としてのイメージです。LONG VACATIONの1stアルバムのレコーディングで訪れたベルリンは刺激的でした。ベルリンから帰ってきて、LONG VACATIONの音源制作の為に私の自宅に設置されたスタジオにKERAさんが付けてくれた名称が「Uhlandstr Studio」でした。たいへん愛着がありましたのでその「Uhlandstr」を拝借、使用させていただいたというものです。
teruwonakano

中野テルヲ [2000年頃]


初のソロライヴで“無人”で演奏

ガイド:
『User Unknown』と『Dump Request 99-05』を横断する形で、「Run Radio」というタイトルで、IからIVまで収録されています。番号が違うだけですが、曲の表情はそれぞれ個性があります。その中でも「Run Radio II」は僕のお気に入りで、とても小気味いい電子ポップスと感じます。これは最初からラジオ・シリーズとして作るつもりだったのですか?

中野:
はい、タイトル通りどれもがラジオをテーマにした曲であります。実は「Run Radio IV」も『User Unknown』のレコーディング時には曲としてはすでにあったのです。曲数の関係でそれには収録されませんでしたが、発売記念でもある初のソロライヴのアンコールで初演、“無人”で演奏していますね。

短波少年のスカイセンサー5900

ガイド:
『Dump Request 99-05』からの「Let's Go Skysensor」は、タイトル通りスカイセンサーを駆使したスカイセンサーのための曲。スカイセンサーについては、以前その仕組みを解説していただきました。スカイセンサー5900がベースになっていると理解しますが、その前のスカイセンサー5800なら昔持っていました(売ってしまったので、手元にないのが残念です)。ご自身もBCL(短波による国際放送を楽しむ趣味)が原体験としてあるとのことですが、その時使っていたのもスカイセンサー5900だったのでしょうか? 短波少年として何を主に聴いていたのですか?

中野:
BCLの当時に使っていたのもスカイセンサー5900でした。主に聞いていたのは海外の日本語放送ですね。放送開始前に流れるインターバルシグナルというのがあって、音楽だったり鳥の声だったりとその国その放送局によって様々なんですけど、このインターバルシグナルを聞くのがとても好きでした。中でもモスクワ放送の音楽は美しく哀愁があり、今でも自分の中に深く刷り込まれています。

Computer Love

ガイド:
Kraftwerkのカヴァー「Computer Love」は元々トリビュートアルバム『MUSIQUE NON STOP ~A TRIBUTE TO KRAFTWERK』(1995年)に収録されていた曲(収録は「2005 Recovery」ヴァージョン)ですが、トリビュートの際にこの曲を選んだ理由は?

MUSIQUE NON STOP ~A TRIBUTE TO KRAFTWERK (amazon.co.jp)
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MUSIQUE NON STOP ~A TRIBUTE TO KRAFTWERK


中野:
この頃は4声のハーモニーというアレンジに凝っていまして、それが効果的に出る旋律というところでいろいろな曲でそれを試した結果この「Computer Love」になりました。
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