照明・LED

オールLEDの10年後も見据えた節電住宅実例

S邸はオールLEDで照明設計された住宅です。そのため照明電力は1平方メートル当たり4.5W以下に抑えることができました。これは従来光源では考えられないほど、少ない電力で照明ができています。S邸は照明電力の節減だけではなく、あかりの質にもこだわって設計されています。特に色がより鮮やかに見える光源を使用したり、調光調色機能を導入した部屋が幾つかあり、生活行為に相応しい雰囲気を楽しむことができます。

中島 龍興

執筆者:中島 龍興

照明ガイド

オールLED照明のS邸

全長1.3kmの、東京で一番長い商店街と言われる戸越銀座商店街。そのメイン通り中ほどから一歩横道に入ると商店街の賑わいとは対照的な静かな家並みの佇まいがあります。その近くに昨年暮れに竣工した住宅がS邸です。

S邸は2階建てで、延べ床面積が約118平方メートル(内ロフトが18.2平方メートル)あります。建築設計はi.e.designの小垣外明子氏で、照明設計を中島龍興照明デザイン研究所が担当しました。

照明器具はすべてLEDで、各部屋の求めたい雰囲気や明るさに応じて、7社の照明メーカーから適切と考えられる器具を選んでいます。
それでは次に主要な部屋の照明について説明します。

1階の照明

まず1階部分ですが、玄関から入ってすぐのところに天井高さ4.25メートル(一部2.5メートル)高さを持つダイニングキッチンがあります。部屋の真ん中に特注のアイランド式カウンターキッチンが設置されています。(図1)
照明イメージスケッチ

図1. ダイニングキッチンの照明イメージスケッチ


この部屋の照明は2.5メートルの天井側面にライティングレールを取り付け、そこにダイクロハロゲン形LED電球(E11口金)のスポットライトを4灯(1灯あたり10W)取り付けています。

4灯のうち2灯が広角配光で、天井に向けて照明し、天井面を広く明るくすることで間接照明による空間の高さを強調する効果を狙っています。(写真1)
ダイニングキッチン

写真1. ダイニングキッチンから見上げる

残りの2灯は中角配光で、やや光が絞り込まれることでカウンター面を平均500ルクスどの明るさで、効率の良い照明を実現しています。(写真2)
ダイニングキッチン

写真2. 2階廊下からダイニングキッチンを見る


ここで使用しているLEDは、青色LEDに黄色の蛍光体を被せた一般形ではなく、紫色LEDに3種類(赤・青・緑)の蛍光体を被せた高演色タイプで、色の見え方に優れており(Ra95)、特に白色がより自然の白に見える高品質のものです。

したがって電球色の光でありながら、内装色の白さが際立ち、さらにカウンター上の料理もより美味しそうに見せることができます。

2.5メートル高の天井側の壁面は全開口オープンウインドで占め、季節の良いときに開けると約11平米の中庭(オープンデッキ)になっており、食事などを楽しむことができます。外壁面にはスポットライト器具などがついているので、夜も使用することができます。

ダイニングキッチンは別にアクセント照明として上下に光の出るブラケット器具2灯をオープンウインドの両脇に配灯しています。

ダイニングキッチンの隣には、2階に上がる階段室を兼ねた床面積で約21平方メートルのリビングルームがあります。床はフローリングで一部床から50cm高さに、大型TVが設置できる台が作り付けられています。

部屋の照明は7.3WのLED一体型で調光調色対応型のダウンライト器具6灯で全般照明を行っています。(写真3)
リビングダイニング

写真3. 調光調色機能対応型ダウンライトによる照明。左が電球色、右が昼白色で照明した例。(リビングルームからダイニングキッチンを見る)
 

その他にアクセント照明として、ダイニングキッチンと同様のブラケット器具を3灯配置し、全般照明用のダウンライト照明と合わせて、床面で最大400ルクスほどの平均照度が得られるようになっています。

次のページでは「2階の照明」についてご紹介します。

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