築15年の建築家の自邸はオリジナルにこだわった楽しい家
今回お邪魔したのは、「普通の形なんて無い、生活者が幸せなら、それがベストの形」と仰る建築家の自邸です。築15年の木造一戸建てで、特に変わったことはしていないと言いつつ、とにかくあちこちに面白い物がいっぱい!玄関から和室、洋室など様々な空間を見せて頂きましたが、こんなのどこで売っているの?というような楽しいモノをたくさん発見しました。聞いてみると、オリジナルな物が多いとのこと、また自然素材や伝統工法をさりげなく使って、空間の質を高めていました。
オリジナルなスチールの親子玄関ドア。15年経ってそろそろ塗り替えようと思っているとのこと。まだまだ長持ちする。
既製品に気に入ったものが無かったので作っただけ、しかもローコスト
なぜオリジナルにこだわるのかを聞いてみたところ、既製品に気に入ったモノが無かったから作っただけ、またビニールクロスなどの樹脂製品は何となく合成の違和感があるので、できるだけ自然界にある素材を使いたかったとのことでした。階段ホールから中2階を見下ろす。手すりはスチール。壁はシナ合板目透かし張り、ウレタン仕上げ。今ある壁紙の上からリフォームで張ることができる。
なるほどリフォームと言うと、ラインナップされた商品の中から選んで設置するというイメージが強いですが、気に入らないなら自分で好きなように作ればいいわけです。と言っても、そうなると気になるのが費用です。
特注と言うと高いイメージがありますが、一概にそうとは言えず、この家もかなりローコストに仕上がっているとのこと。
例えば上で紹介した赤いスチールの玄関ドアは、特注で作ってもらったものだそうですが、通常に売っている既製品より安く、またそろそろ塗り替えの時期なので、再塗装すればまだまだ長持ちしそうです。費用対効果とデザインの両方から考えられたさすがの住まいです。
空間の質を高めるスイッチプレートのリフォームも忘れずに
建築家のお住まいにお邪魔した時に、ガイドYuuが必ずチェックするのがスイッチやコンセントのプレートです。いわゆる一般的な樹脂製のプレートが付いていることは少なく、様々なデザインを見ることができます。アルミ鋳物のサンドブラスト仕上げや磨き仕上げの、オリジナルのスイッチプレート。こだわる価値があるポイント。
建築家の安藤忠雄氏もオリジナルなスイッチプレートを使っていて、安藤プレートとして建築家の間ではとても有名です。ただし販売はしていないので、このタイプで手軽にリフォームに使えるというと、パナソニックの新金属プレートがあります。値段も安く、フラットでシャープなデザインは通の間では人気のアイテムです。
更にオリジナルのスイッチプレートも見せてもらいました。型を起こして流しこんで作ってもらったそうで、費用はプラスチック製品よりは張りますが、それだけの価値があるとのこと。空間の質を高めるプレート類は壁紙の張り替えリフォームの時にはこだわりたいアイテムです。
和室は伝統的な織りの畳や本物のベンガラ仕上げの壁で粋に
見どころは和室です。真ん中に掘りごたつが切ってあり、粋を感じるとてもステキな空間になっていました。まずハッと目をひくのが畳です。これは市松表という織り方で、目が立体的で素晴らしく美しい!通常品よりほんの少し割高ではありますが、そろそろ畳の表替えの時期に来ているという方にお勧めの畳表です。ちなみに表替えの時期の目安は7~8年です。美しい市松表の畳。ほんのちょっとの値段の差なのでぜひ試してみて。
壁は本物のベンガラの壁、美しい赤色をしています。ベンガラとは酸化鉄の顔料で、屋外の壁にも使えるほど丈夫な仕上げになります。何より紅の色が本当に美しく和空間に調和しています。和室を少しイメージアップさせてみたいという方に、使って頂きたいアイテムです。
このベンガラの壁は、強度を増し、亀裂を防止するために、シュロ縄を2cmにハサミで切ってほぐしたものを混ぜて塗り上げています。この縄の切れ端は自分で準備したとのことで、ビニール1袋分を用意するのに手にマメができたのを覚えているそうです。でもそれがとても楽しい想い出になっていて、皆さんにもぜひそんな思い出を作って欲しいとおっしゃっていました。
本物のベンガラの壁。シュロ縄を混ぜて立体的に仕上がっている。
床の間の天井は杉あじろ張り、襖は本鳥の子に桑の引手と、ひとつひとつていねいにセレクトしています。確かにこれらは、少しずつ費用は高いのですが、それ以上の効果を生み出す素晴らしいアイテムばかり。リフォームの際にはこのような選択肢があるということを知っておくと、より満足度の高いこだわりの空間を作ることができます。
ラワン合板の床にシナ合板の壁、古くなったら塗ればいい
さて、こちらの家はいわゆるフローリングにビニールクロス張りではありません。床にはラワン合板を、壁にはシナ合板をそのまま仕上げとして張り、ともにウレタン塗装で仕上げています。ラワン合板は木目が少し荒々しく、シナ合板はきめ細やかな肌をしています。ラワン合板の床。目地が少なく部屋が広く感じられる。そろそろ塗り替えの時期。
シナ合板の壁。目透かし仕上げと呼ばれる、少しずつスキマを開けて張り付けてある。
なぜ壁を合板にしたのかを聞いてみたところ、板を並べて柄を選んだり、塗装色を微妙に調整してコーディネートしたり、ただ既製のビニールクロスのリピート柄を張るより面白いから!何よりどこでも画びょうが打てて便利でしょ、なんて楽しい答えが返ってきました。
15年経ち、そろそろ塗装が剥げてきたので塗り替えの時期とのこと。塗り替えリフォームをすれば、また美しくよみがえります。
このようなちょっとシャビーでナチュラルな風合いは、今人気のカフェ風スタイルにもピッタリの仕上げです。今張ってある壁紙の上から工事できるので、リフォームは意外と簡単。もうビニールクロスには飽きた!という方にお勧めです。
自分で考える楽しみ、経年劣化ではなく味わいに変化した家
築15年の家を拝見して感じたのは、ただ経年劣化をしたのではなく、その年月によって更に味わいが増した家になっているということ。塗装が剥げたラワン合板の床も、フローリングの表面がはがれて劣化したようなイメージではなく、古びた味わいを醸し出していました。黄色のペイント仕上げの室内窓。建具や間仕切りなど、全て自分が好きにデザインしたオリジナル。
上の写真もオリジナルの間仕切り窓、色もデザインも自由自在、もちろんローコストです。建築家の自邸は、自分で考え、生み出す楽しみに満ちています。ありものから選ぶのではなく、自分の好きなデザインを考える、そんな建築家的リフォームを楽しんでみて下さい。
建築家たちが御用達のアルミ製のスイッチプレート、新金属は下記で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧下さい。
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