クラシックのプロが選んだ2015年のベストCD!
毎年たくさんの名盤が生まれるクラシック。2015年に発売されたクラシックCDの中からベストのCDを、クラシックに強いCDショップ3社(HMV、タワーレコード、山野楽器)の担当8名に点数を付けていただき、それを集計しランキングを作成しました。部門は国内アーティスト部門(5選)と、ワールド部門(10選)の2部門。CDショップおすすめの聴き継がれるべき名盤は何? 選考した3社から1名ずつスペシャルなお三方にご参加いただき、ガイド大塚と座談会を実施しました(2015年12月7日)。では、発表です!※国内盤・輸入盤、現役・故人、国籍問わず、2015年1月~11月に発売された新譜CDからセレクト
クラシックCDアワード 2015 国内アーティスト部門
まずは国内アーティストのランキングから。国内アーティストを応援したいという思いから実施。選ばれた盤はどれも国内という枠で語るには勿体無いくらい、世界的に見ても全く遜色ない力作揃い。日本人アーティストによるレベルの高い演奏をぜひ聴いてみてください。5位:庄司紗矢香(ヴァイオリン)、プレスラー(ピアノ) ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、他
室内楽の名匠と若き才能の、組み合わせの妙。孫の年齢差共演
HMV 久保さん(以下、久):これはコンサートの情報が発表されたときから話題でしたよね。庄司さんは日本の若手ヴァイオリニストの中でも実力No.1という感じがし、鋭い表現が持ち味だと思うのですが、プレスラーは丸い表現なので面白かったですね。特にブラームスは良い演奏でした。プレスラーは否定的なところが全くなく、全てを肯定するようなピアノ。音楽に対して探究心旺盛な庄司さんに対し、それを優しく包み込むようでしたね。
大:この年齢差は結構すごいですよね。
久:曾孫くらいですかね?
タワーレコード 北村さん(以下、北):曾孫まではいかないかもしれない(笑)。
山野楽器 峯岡さん(以下、峯):(笑)。意外な組み合わせでしたね。
久:庄司さんは、ジャンルカ・カシオーリとよく共演していますよね。あの組み合わせは年齢も近いし、よく分かるんですけれどね。
北:こういった組み合わせは面白いですよね。逆に音楽が豊かになると言いますか。発散ではなく、より緻密に作っていこうと、意思が内に向かっていくような充実度・凝縮度を感じました。確かにブラームスが評判でしたね。
峯:彼女は様々なレーベルからアルバムを出していて、自らの主導による録音活動をしているヴァイオリニストだと思っていたので、プレスラーと組んでブラームスを演奏するというのは意外な感じがしました。ですが、庄司さんの方からプレスラーに伴奏を依頼したという話ですから、彼女自身が内面の充実に向かっていっているのかなという気がして今後も楽しみです。実際に売れ行きは好調でした。
大:ボザール・トリオは名グループとして有名でしたが、プレスラーが今になってこういう出方をするとは驚きました。
久:ボザール・トリオ解散後から世界中で引っ張りだこなんですよね。各地で室内楽の共演、ソロの公演を行っていますね。
北:彼が表舞台にこういう形で出てくるというのは良いですよね。年を取った指揮者と若手の奏者の組み合わせはよくありますけれど、伴奏でこういうカタチはあまりない。
久:2015年秋の来日公演が体調不良で中止になってしまったのが残念でしたね。長生きしていただきたいです。
※該当CDのwebページをランダムに記載しています(以下同)
HMV
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4位:山田一雄(指揮) ベートーヴェン:交響曲第3番
日本の名指揮者、若きオケに火をつける最晩年の熱き咆哮
峯:出る前から「こんな演奏がまだリリースされずに残っていたのか」と話題でしたね。良くも悪くもヤマカズさんを聴く演奏なのかなという感じがしますが、オーケストラが今の日本センチュリー交響楽団、当時の大阪センチュリー交響楽団で、熱気・勢いがありますよね。『英雄』は世に様々な演奏があり、その中でどうアピールするかというのは非常に難しいところがあると思います。これはこれで正統派の演奏ではあるのですけれど、これから時代を切り拓くという若いオーケストラと、演奏家人生の集大成の時期にあったベテラン指揮者が融合し良い方に出た、とても印象深い1枚と感じました。
大:庄司紗矢香&プレスラーと似た部分もありますね(笑)。
久:オーケストラが小編成だから今で言うピリオド解釈(作曲当時の楽器での演奏法)の先取りになるかと思ったらそんなことはなく、良い意味でピリオド解釈を取り入れた融合の解釈に近いというか。非常に情熱的なとても良い演奏ですよね。
峯:ヤマカズさんの録音ももう出尽くしたと思っていたのですけれど「ここでこういうものが来たか」と驚きました。
北:ヤマカズさんの『英雄』は4種類ディスクが残っていますが、全て88年以降という短い時期に集中していて、どれも大体同じような解釈になっています。ですが大阪センチュリーという若いオーケストラや聴衆に対して、日本のクラシックの歴史の初期から尽力されてきた彼が亡くなる直前までご自身ならではの演奏をしている。啓蒙というと違うかもしれませんけれど、学ぶところの多い演奏だと思います。
特に1楽章がとても熱気があって、素晴らしい出来だと思いました。オケの反応もとても良く、小編成でのヤマカズさんの演奏は他にもあるなら聴いてみたいと思いました。
峯:技術的というよりも、演奏の温度の高さでやってきた指揮者だと思っていたのですが、これは内容的にも充実していましたね。内声部の音の響き・厚みが際立っていたので印象深かったです。
北:それにしても、2015年も国内のオーケストラによる演奏はたくさん出ましたが、なぜこれが選ばれたか、ということですよね。選者が全員ヤマカズさんのファンだったわけではないと思うのです。
大:指揮者の名前を伏せて聴いても「すごいな」と思っただろう圧倒的な感動がありました。
峯:ここまで印象を残す演奏ってなかなかないですよね。
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