クラシックCDアワード 2015 ワールド部門

続いては、国内外問わずのオールのランキングです。2015年に発売された新譜の中で、一体どのアルバムが1位に選ばれたのでしょうか? オススメの10枚をカウントダウンです!

10位:パッパーノ(指揮) ヴェルディ:オペラ「アイーダ」

エネルギー溢れる、渾身のセッション録音による全曲盤
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大:さて、ワールド部門に行きまして10位は、今となっては珍しいライヴ録音ではない、オペラのセッション録音盤です。サッカーの応援でも有名な『凱旋行進曲』が登場するオペラです。

峯:このご時勢に手間もお金もかかるセッション録音でオペラを録音したというのが画期的ですよね。歌手もトップ水準の歌手を揃え、オーケストラも名門サンタ・チェチーリアで録音も地元のホール。まずオペラの新録音を歌詞対訳付きでリリースしたというだけで拍手を送りたい。もちろん演奏もとても良いです。オペラハウスは大体音が良くなく、それゆえ音響の良いコンサートホールで聴く演奏会形式オペラの楽しみというのはあると思っていて、これはとても良い感じで聴けました。

配置もこだわっていてオペラ劇場の感じを狙って配置されたと思うのですけれど、このセッションにかける本気の熱気を最初から最後まで感じられた。『凱旋』の力のこもり方は、ハイライト録音ではない全曲録音だからこそのエネルギーを感じましたし、このジャケットの厳かな黒のイメージも含めて素晴らしい盤でした。長く現役盤であってほしいです。

北:作りが良いですよね。物としてのずっしりくる重みといい、紙を大事にする文化といい、良いな、と。

峯:良い写真を使っていますし「これを残すんだ」という、演奏家含むスタッフ全員の使命感を感じましたね。

久:こだわりを感じますよね。

峯:お客様にオペラのCDをご提案するとき、少し前は対訳付きの全曲盤がほとんどなかったのですが、ここ最近揃ってきています。昔の盤が復活したり、新録音もいくつか投入されるようになってきたので喜ばしいです。

久:最近パッパーノは大活躍ですね。協奏曲の伴奏も多いし。

峯:メゾ・ソプラノのディドナートをピアノで伴奏したCDも出てましたね。

久:最近の伴奏指揮者はパッパーノかパーヴォ・ヤルヴィか、あとアントニーニ? 大抵この3人なんじゃないかと(笑)。

大:否定できない(笑)。

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9位:イブラギモヴァ(ヴァイオリン) J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲

しなやかに自由に歌う、人気右肩上がりの注目ヴァイオリニスト
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大:次はイブラギモヴァですが、実は5月にイザイを演奏した盤も人気で票が割れてしまいました。2015年に発売されたCDが1枚だったらもっと上位に行ったかもしれません。

北:そうですね。出す盤はどれも注目が高く、売上も良いです。女性ヴァイオリニストが様々台頭する中、トップ5には必ず入る方ではないかと思います。バッハのCDは2009年に無伴奏を出して以来ですが、今回も名曲ということもあって期待を裏切らない、発見の多いアルバムだったと思います。やはりしなやかさ、伸びやかさというか、良い意味で型にはまらない開放的なヴァイオリンで、その中に彼女ならではの美しさが見える。今後も楽しみな方だと思います。

久:キツめの表現かと思いきやしなやかで、幅広い良い歌心を持っている人ですよね。

北:デビューのときに「エキセントリックなのかな?」と思った方も若干いるかもしれませんが、そんなことはないですね。

峯:良い意味でまともというか、それほどとんがってはいませんね。ゆっくりとした楽章がキレイだと思いましたね。第1楽章、第3楽章も当然良い演奏なんですけど、第2楽章の歌わせ方・音色が美しいなと。

大:“くどくないファビオ・ビオンディ(バロック・ヴァイオリンの名手) ”という感じがします。ビオンディのエキセントリックさに似る感じが一瞬するんですけれど、そうではなく、彼の柔らかさに似ているんですよね。

峯:笑。これからどう芸風が変化していくかというのも楽しみです。

久:レパートリーも幅広いですからね。

峯:個人的にはベートーヴェンの協奏曲を聴いてみたいなぁ。

北:そうですね、イザベル・ファウストとの違いを楽しみたいですね。

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8位:ハーディング(指揮) マーラー:交響曲第6番

軽めのマーラーに物申す! 壮絶に向き合う真摯なマーラー
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大:オケ(オーケストラ)物が来ました。もはやベテランですが、ランキングに出るのは初めてですかね? ハーディングです。

久:この曲は2楽章と3楽章の演奏の順番が人によって違うという非常に珍しい曲で、私はスケルツォが2楽章じゃないとそれだけで聴く気をなくすのですよ(笑)。スケルツォが2楽章に来ることで1楽章のカオスをそのまま引き継ぎ、アンダンテの3楽章で落ち着いて本題の4楽章に入る、というストーリー性を感じていたのです。

なのですが、この盤はアンダンテが第2楽章に来る演奏で初めて説得力感じました。2楽章にアンダンテが来て3楽章にスケルツォが来ることによってスケルツォが引き立ったというか、マーラーらしいスケルツォとして立ち居地がきちっとしている。全体的にもハーディングの唸りがあちこちに入っている激しい演奏で見事ですね。

北:重厚な演奏ですよね。最近は軽めの演奏が多いですよね。マーラーの演奏も一通り出て、新しいものを生み出すのはまた大変なのでしょうが、そういった中で本格的なマーラーでした。

久:ハンマーの音も生々しくて、思わず頭を抱えたくなるような(笑)。

峯:ハーディングって、いろいろなところでいろいろなことをやっている印象ですよね。どこかで腰を据えて音楽作りをしてもらいたい気もします。

北:確かに。2016年からパリ管弦楽団の首席指揮者になるのは楽しみですね。

大:若い頃からとても注目されていたのに起用貧乏な感じがしちゃってますからね。

峯:客演の短い時間でも音楽をきちんと仕上げられちゃうのでしょうね。

大:新日本フィルとも良い関係ですよね。

久:新日&ハーディングは良いですね。今後も更にがんばってほしいですね。

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7位:カム(指揮) シベリウス:交響曲全集

本場オケによる、伸びやかな今のシベリウス演奏の最前線
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大:2015年はシベリウス生誕150周年で数多くの盤が出ました。その中からフィンランドの指揮者&オーケストラという、お国物がランクインです。

北:今のシベリウス演奏の、オーソドックスなものを示してくれた印象ですね。シベリウス演奏もいろいろ発展してきて、70年代までのロマン的重厚な演奏から脱皮し、ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルの録音あたりからスタイルが大分研ぎ澄まされ、今の主流は特に後期の作品は室内楽的で内面的な響きを大事にした演奏が多い。そんな中、これはオーソドックスに1番から7番まで、うまくまとめられていますね。彼らが秋に来日したこともあってよく売れ、スタンダードな名盤という位置にあるのではないかと。

久:風通しの良い演奏というのが今のシベリウスの良い演奏という気がしますね。ごちゃごちゃさせない。変にドラマチックにさせない。

北:そうですね。カムが70年代にドイツ・グラモフォンで録音した1~3番までともまた全然違いますよね。シベリウスはまだまだ発展しがいのある音楽で、これで完成形というのではなくて、更にまた違った発展・演奏が生まれてくる余地があるんだな、と感じた演奏でした。


峯:シベリウスというとフィンランドのオケの演奏は外せず、ヘルシンキ・フィルにしろ、このラハティにしろ、それぞれに持ち味があるので、音の伸び具合や響き具合など聴く度にいろいろ感じる部分がありますね。ただ、ドイツのオケはそれはそれで良い味を出す。シベリウスというのはそういう作曲家ですよね。

大:これは伸びやかで滑らかで自然な肌触りが良かったですね。

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