3位:加藤訓子(打楽器) 『IX ~ クセナキス:プレイアデス/ルボン』

感覚的に美しい、現代音楽×打楽器の圧倒的音響体験
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大:かつて出たスティーヴ・ライヒの録音も大きな話題となった加藤訓子さんの新録音ですが、現代音楽作曲家のクセナキスという名前から想像するドン引きさとは全然違う聴きやすい内容ですね。

北:ドン引きなんですか(笑)。私は逆に「これは売れるだろうな」「感銘を与える演奏だろうな」という感じがしていました。彼女によるライヒ、ペルトに続く現代音楽を演奏した第3弾で、クラシック・ジャンル以外のファンの方が聴いても面白いのではないでしょうか。計算し尽くされた楽曲を機械のように演奏するのではなく、技術と高い音楽性をきちんと持った方がやると「こういう響きになるのか」という発見があると思います。音が鮮烈で響きも面白く、ランキング上位に挙がったのが分かる素晴らしい演奏だったと思います。録音も良いですし。

峯:音がすごいですね。飛び出すというか、立体的ですよね。

大:ヴィブラフォンなどの音がクリスタルの煌めきのような美しい音楽でした。

北:初回限定生産盤にボーナスDVDが付いていますが、どういう風に演奏しているのかが分かり、その後でCDを聴くとまた違った味わいがありますね。

久:この動画のインパクトはすごいですよね。本当に面白かったです。そもそも6人の奏者のために作られた曲を一人による多重録音にこだわって演奏したわけですが、6人によるアンサンブルともまた違った今風の響きになっている気がしました。

北:高次元でシンクロする感じですよね。多重録音ならでは。しかも邪道ではない。

大:僕は逆に「よく多重録音でできるなぁ」と感心してしまいました。動画を見ると実に自然に演奏していますが、リズムが複雑なので、呼吸を合わせられない多重録音の方が大変そうです(笑)。

北:アンサンブルとはまた違った難しさがありそうですよね。

大:現代音楽のCDでここまで多くの人にアピールできるポテンシャルがあるというのは、加藤訓子さんはやはりすごいですよね。

北:アルバムの内容が面白くて第3弾まで来て、認知が広がっていますね。現代音楽の盤がたくさん売れるのは稀ですが、今回のクセナキスはそういう可能性がある作曲家とも言えますしね。

大:僕は現代音楽が好きでクセナキスも好きですけれど、それでもなかなか人に薦めにくいと思ってしまうのですが、これは薦められるな、と。

北:オーディオ的にも面白いですよね。これが自分のシステムでどう鳴るか。打楽器なので、システムのスピード感と空気感、定位、空間上の響きなどですね。そういう面でも面白い。純粋に音として楽しむということもできるアルバムではないでしょうか。

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2位:清水靖晃&サキソフォネッツ(サックス)  J.S.バッハ:ゴルトベルク・ヴァリエーションズ

アフロ系バッハ? 新たなリズムも発見できる心地良いゴルトベルク
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大:元は2段チェンバロのための曲で通常はピアノで演奏される曲ですが、ここでは5本のサキソフォンと4本のコントラバスで曲により編成を変えて演奏。これはとても心地良いアルバムでした。

久:コントラバスをわざわざ4台も使ったというのが面白いですが、ゴルトベルク変奏曲は主題が低音に現れるのでその辺りにこだわりがあったのかなというのと、あと録音会場は音が良いと評判の岐阜のサラマンカホールですが、その響きを取り入れた自然できれいな録音のまま変に音をいじらないで済むように、ということで低音の補強が必須だったのかなという気がしました。清水さんは前衛的なものからジャズ的なものまでいろいろと演奏していて、このゴルトベルクはクラシックの範疇を出ないですがリズムの強調やリズミカルな部分を作ったりと、アレンジに様々な工夫がされていて面白いですね。聴いていると、曲自体に対する発見もあると思いました。

北:アルバムとしての完成度がとても高いですね。解説書やジャケットなども含めて、総合的にCDとしての完成度が高い。中の解説も非常に面白いですし。

大:この清水さんご本人による解説は面白かった!

北:単なる楽曲解説ではなく、変奏毎の編成と演奏のこだわりなどを、まるで語りかけてくれるかのような優しい解説で良いですよね。写真も多く、CDで買って聴くべきアルバムですね。

峯:この曲はファーストチョイスがどうしてもグレン・グールド(この曲の演奏で世界的著名になった伝説のピアニスト)のCDになってしまうのですが、それだけじゃなくて、それとこれ、ですね。

一同:

峯:笑。グールドと清水さんは、バッハのみならずクラシック演奏の幅の広さを代表しているようなところがあると思うんですよ。バッハはこういう演奏や録音が成り立つ、当然素晴らしい作曲家だと思いますし、清水さんは世界でも十分に第一人者で、素晴らしいCDだと思います。

久:2015年はゴルトベルクのCDがたくさん出たのですよね。アレクサンドル・タローも良かったですし。

峯:確かにあれも良かった。

久:バスーン・コンソート・フランクフルトによるファゴット9重奏版というのも良かったですね。

:面白いんですよね、音的にも(笑)。

峯:なんでゴルトベルクだけみんな極端なことをやりたがるんですかね?

大:やはりグールドが開けた扉なんですかね?

久:清水さんは以前、同じくバッハの無伴奏チェロソナタをサキソフォンで吹いたCDで大ヒットしましたけれど、そのときと流れは一緒かな、という気がしましたね。

大:ですよね。録音もあの時と変わらず残響が美しく「今回はどこの洞穴での録音かな?」と思ったら、ホールの録音でしたが。

久:確かに、無伴奏は大谷石地下採石場跡とかでの録音でしたね(笑)。

大:編曲も技ありですよね。鍵盤楽器では表現しきれなかったリズムの発見というか、解説書にも書かれていますが、アフロ的リズムの着目はクラシックの純粋なアーティストからはなかなか出てこない視点と思い、実際問題バッハがどこまで意識していたかは分かりませんが、こういう解釈も可能ということに目から鱗でした。

北:そうですね、普遍的なバッハという。

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1位:清水真弓(トロンボーン) 『ファンタジー』

超絶技巧と伸びやかさで生き生きと描かれるトロンボーンの魅力
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大:さて、栄えある国内部門1位は、清水真弓さんのデビューアルバムでした! おめでとうございます!

北:1位が管楽器、しかも金管楽器、しかもトロンボーンというのは珍しいことだと思うんですよね。2015年の国内盤は器楽含めてものすごい数のアイテムが発売された中で1位に登るというのはこれまでになかったですね。一般的に話題になったとか、とても売れた、というわけではなくて、純粋な内容が評価されてこれが選ばれたということは、非常に良かったと思います。

峯:上手いですよね。

北:まだ若い方ですが、とても卓越していますよね。清水さんは音大出身ではないオーケストラ・プレイヤーとして非常に珍しく、リンツ・ブルックナー管弦楽団にオーストリアで初の女性首席トロンボーン奏者となった後、2012年秋から南西ドイツ放送交響楽団の首席になったわけですが、女性ということに限らず日本人がドイツ放送オケの首席になるというのは非常に珍しいことで、シュトゥットガルト放送交響楽団にいらした山本雅章さんに次ぐぐらいなのかなと。

実際、アルバムの演奏も素晴らしいですね。ジャケットは爽やかで「エネルギッシュではないのかな?」という印象を持たれる方がいるかもしれませんけれど、そんなことはないですね。とにかく音色が美しく、また断然技術がありますね。

久:タンギングがとてもきれいですよね。音の出だしはもちろん、音の終わりもきれい。プロの方に言うのも失礼ですけれど、プロの中でも本当に美しさがあると思いましたね。

北:内容は至ってマジメで、純粋にアルバムとして楽しめますし。

峯:お店でリリース記念イベントを行いましたが、非常に気さくで、音楽を心から楽しんでいる方、という印象ですね。「これを皆さんと一緒に共有したい」という実に自然なあり方でアルバムにした感じがします。その雰囲気がとても良かったと思います。だから変な編曲ものもなく、トロンボーンのオリジナル作品を大切にしながらこの楽器の魅力を1枚のCDに詰め込んでいる。イベントは立ち見が出ましたよ。

久:古楽器のサックバットも吹いていて、バッハ・コレギウム・ジャパンで演奏もしたんですよね。そういった精力的な感じも良いですよね。

大:伸びやかな気持ちの良い演奏でした。今後の活動も楽しみですね。

峯:バッハを聴いてみたいですね。

北:ぜひまたアルバムを出してほしいですね。

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