新時代のカリスマ・ピアニスト、ユジャ・ワン インタビュー

ユジャ・ワン

2015年11月11日、Apple Store 表参道でライブ&トークイベントを行い大盛況に。この日はマイケル・コースのドレスに、クリスチャン・ルブタンの靴で登場。そういった演奏スタイルについて「アーティストとして自分の見栄えも大切にしていて、そうした服を着ることで自分に自信も持てるし、楽しめる」とのこと

初めて彼女の動画を見たとき、あまりのすごさに言葉を失った。そう、若手の注目すべきピアニストは次々と生まれていますが、超絶技巧といえばやはりこの人、ユジャ・ワン。1987年北京に生まれ、まだ20代という若さですが、唖然とする正確無比なテクニックと、常識に捉われず作品に向き合った真摯かつ新鮮な演奏で、トップ・ピアニストとして世界中を興奮させてきました。

ミニのドレスにハイヒールでステージに現れるなど、演奏以外でもクラシックの殻を破る正に新時代を切り開くスター演奏家。果たしてその素顔とは?


最新録音盤
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ラヴェル:ピアノ協奏曲、左手のための協奏曲、フォーレ:バラード
リオネル・ブランギエ指揮、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
クラシックCDアワード2015にも選出
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ガイド大塚(以下、大):ユジャさん、最新録音のラヴェルの協奏曲のアルバム、素晴らしかったです!

ユジャ・ワン(以下、ユ):Thank you! 気に入ってくださり、嬉しいわ。どこが良かったかしら?

大:まずはとてもクリアな演奏だということですね。スコアから全ての埃を取り去ったように感じました。隅から隅まで宝石を磨くよう。個々の音がこんなにも光り輝く曲だったとは知りませんでした。

ユ:ジャズの要素もあるし、面白い曲よね。

大:ラヴェルって斬新なのと同時に古風な魅力があるじゃないですか。なので、アルゲリッチはじめ名演奏が次々に出ても、ずっとサンソン・フランソワの魅力に叶わない気がしてきたのですが、今回遂に「こういうラヴェルを聴きたかったのだ」と気付きました。

ユ:ありがとう(笑)。ミケランジェリやピエール=ローラン・エマールの録音も結構良いわよ(笑)。

大:うん、確かに彼らも良いんですけど、あなたの演奏は更に素晴らしかった! 他の人の演奏も結構聴くのですか?

ユ:そうね。ヴァケーション中で練習はしないとしても音楽を聴きたくなるわ。

大:例えば第2楽章冒頭の夢想的な長いピアノ・ソロはこの曲の一つの聴きどころだと思いますけれど、4小節目で直前の音から5度上昇しそれまでの最高音のシの音が出るところでかなりpになっていたり、最初から最後までとても繊細に弾かれている印象でとても胸に残ったのですが、どういうことを考えて弾いているのですか?

ユ:え? 何を考えてるかな(笑)。そうね、この曲は随分昔から弾いていて、2001年、14歳の時に仙台国際音楽コンクールで弾いたのよ。今28歳(注:2016年2月10日で29歳に)だから随分と演奏してきて、この間にかなり蒸留されてきたと思う。そうした昔の記憶があって、それと同じ場所にいながら、同じ風景だけれど香りとかが変化してきているのよね。弾いていて、そういう事を思うわ。昔を思い出す雰囲気がある曲ではないかしら。それと、ラヴェルの家の写真を見たことがあるのだけれど、庭園が美しくて「雨が降った後の香りや色はどんなだろう?」と想像したり。爽やかそうよ。中国ではなかなかなさそうなヨーロッパ的な雰囲気よ(笑)。

大:楽譜そのものだけでなく、作曲家の人生なども研究するのですか?

ユ:えぇ、時によっては。興味を持つと伝記など読んでみようと思うのだけれど、まずは音楽から入るわ。ただ本によって違うわよね。惹かれるものがあれば作曲家ととても近しい感じになるけれど、本によってはゴシップ的な内容ばかりで「どうせ嘘なのだろう」で終わってしまうものも。哲学者であるウラジミール・ジャンケレヴィッチによるラヴェルの本はとても良かったわ。和声の話なども専門的でとても興味深かった。

ラヴェルは、私と同じく小柄で、繊細な方。結婚しなかったけれど子どもが大好きだった。そんなイメージがある。彼は童話的な素敵な世界を作り上げるか、エドガー・アラン・ポーのような暗くて恐ろしい世界を作るかのどっちか(笑)。後者だと、今回演奏した「左手のための協奏曲」が正にそうだわ。最近はこっちの協奏曲の方が興味があるわ。ただ、私の先生のグラフマン先生はこの録音が気に入らないとふざけて言うのよ。「僕のレパートリーを横取りしたね」って(笑)(注:ゲイリー・グラフマンは左手のピアニスト)。