日本人好みのクリーンな造詣のコンパクトミニバン「ゴルフトゥーラン」
マルチパッセンジャー仕様のコンパクトミニバン、といっても、国産モデルのように両側スライドドアを採用した背の高い“いかにもミニバン”スタイルを、あえて採らないのがヨーロッパ流のようだ。
トゥーランは乗用車タイプのスィングドアを持つ、7シーターミニバン。
03年に誕生以来、ジャストサイズミニバンとして人気を博してきたが、2015年春のジュネーブショーにて、最新ゴルフと同じFFモジュールプラットフォーム“MQB”を採用した初のミニバンへとフルモデルチェンジを果たしている。
MQBのメリットは、その見た目に既に表れる。旧型に比べて、全長・ホイールベースともにより長く、より幅広になって、室内スペースが大幅に広がったのだ。車高は少し下げられたけれども、前後左右にできた余裕がそれを相殺してあまりある。
このサイズ変更は、スタイリングの見映えにも効く。現行ゴルフと同様に、水平感が強調されており、幅広でどっしりと安定して見えるのだ。しかも、エッジの効いたフォルムとあいまって、非常にシャープでスマートな印象で潔い。イマドキ、潔いくらいにクリーンな造詣。つまり、日本人好みのカタチ、だと思う。
磨きをかけたのは本当に必要な機能のみ
日本仕様として、3つのグレードを用意した。トゥーランとしては初めて、お買い得な価格設定のトレンドラインが生まれたのがポイント。装備の充実具合によって、コンフォートライン、ハイラインとグレードアップしていく。
パワートレインはわかりやすく、全グレード共通とする。すなわち、1.4L直噴ターボに7速DSG(デュアルクラッチシステム)を組み合わせた。パワートレイン選択で悩むな、もまた、最新実用車のトレンドだろう。もっとも、クルマ選びの楽しさがひとつ減った、とも言えるけれど。
乗用車タイプのスィングドアを採用するが、それ以外の使い勝手、たとえばシートアレンジなどは、機能を実用に絞り込んだ使い勝手の工夫で、国産ミニバンと遜色ないレベルに達している。あれもこれもできる、ではなく、本当に必要な機能に磨きをかける。これもまた実用車の正しい方向性というべきだろう。
ゴルフの良さを受け継いだ走り
実際に試乗してみての感想は“背の高いゴルフ”である。ツマラナイ、のではない。むしろ褒め言葉で、ゴルフのしみじみとした良さが、トゥーランにもしっかりと受け継がれているということ。
ちょっと硬質だけれども、軽やかないなしをみせるアシが心地よいライドフィールを実現しているし、車体の動きも軽快のひとこと。乗ってすぐに、長年付き合ったパートナーのように馴染んでしまうあたりも、モダンVWの真骨頂といえるだろう。
ハイラインにはドライビングプロファイル機能とオプションでアダプティブシャシーコントロール(DCC)を搭載し、5つのドライビングモードが設定可能に。DCCはダンパー減衰力やパワーステアリング特性をコントロール、ノーマル/コンフォート/スポーツが選択できる
加速は必要にして十分。高速安定性もゴルフと変わりなく、視線の高いぶん、安心してクルージングもできる。もちろん、街乗りでの取り回しもラクラク。そうは見えないけれどドライバーオリエンテッドで、かつ、優れたパッセンジャーカー。トゥーランは今や、日本人ファミリーにとって、ベストなワーゲンとなった。