寡婦年金という年金の存在をご存知でしょうか?

一家の大黒柱に万が一のことがあった際、残された遺族に対し支給されるのが「遺族年金」なのは皆さんもご存じのとおりです。

遺族年金と言うと、
  • 国民年金から支給される「遺族基礎年金」
  • 厚生年金から支給される「遺族厚生年金」
を思い浮かべるのではないかと思います。

残念ながら、寡「夫」つまり遺された夫には支給されない

残念ながら、寡「夫」つまり遺された夫には支給されない



しかし、遺族に支給される年金に「寡婦年金」という第3の遺族年金制度があることをご存じでしょうか?

さて、この寡婦年金ですが、名称から、「夫を亡くした妻に対して支給されるもの」だということは何となくわかりますね。ただ、遺族基礎年金や遺族厚生年金も夫を亡くした妻にも支給されます。では、なぜそれとは別の年金として支給されるのか、ちょっと疑問に感じるかもしれません。

「掛け捨て防止」のための年金?

この寡婦年金は国民年金から支給されるもので、「掛け捨て防止」の観点から存在するといわれています。

国民年金から支給される遺族基礎年金は、「子のある配偶者」または「子」に支給されます(※「子」は18歳年度末まで(一定の障害がある子は20歳未満)。

そうすると、夫が死亡した当時、遺族年金の対象となる子どもがいない妻には遺族基礎年金は支給されないことになります。

長年、国民年金保険料を払ってきた夫が、自分の老齢基礎年金を受け取ることもなく亡くなり、妻も遺族基礎年金を受け取れないということになると、今まで払ってきた保険料が全くの「掛け捨て」ということになってしまいます。

この「掛け捨て」状態を救済するために、一定の要件を満たした妻に対し支給されるのが「寡婦年金」ということになります。

受け取れる遺族は「妻」だが、一定の要件あり

寡婦年金を受け取れる遺族は、名称にあるとおり「夫に先立たれた妻」ということなのですが、一定の要件があります。

まず、亡くなった夫が老齢基礎年金を受給できる資格があったこと(受給資格期間(現在原則10年)を満たしていること)が必要です。老齢基礎年金を受け取る権利があるにもかかわらず、受け取れず亡くなったことが必要です。

次に、婚姻生活が10年以上あり、夫により生計を維持されていたこと。そして夫が老齢基礎年金の他、障害基礎年金も受け取ったことがないこと。

これらの要件を満たす必要があります。

老齢年金の受給資格については、会社員や公務員、被扶養配偶者(第3号被保険者)としての期間は含めないことに注意が必要です。

受給期間は最大5年間!

先ほどの要件を満たした上で支給される寡婦年金ですが、受け取れる期間は、60歳から65歳まで最大5年間。期間限定の有期年金なのです。

夫が死亡した際に、妻の年齢が60歳未満の場合は、60歳まで支給を待つことになり、60歳を過ぎていた場合は、支給期間はそこから65歳までとなり、5年間ないこともあり得ますね。

65歳からは妻自身に「老齢基礎年金」が支給されるため、それまでの「つなぎ」という意味合いもあるのでしょう。したがって、老齢基礎年金を繰上げてしまうと寡婦年金の支給が打ち切られてしまいます。

老齢基礎年金を繰上げ受給すると、寡婦年金を受け取れないため、繰上げを検討される際には、寡婦年金の存在にも注意する必要がありますね。

支給額は夫が受け取れるはずだった老齢基礎年金の4分の3だが、注意点も

いくら受け取れるのかというと、夫が受け取れるはずだった老齢基礎年金の4分の3です。ただし、この「老齢基礎年金」とは、第1号被保険者期間部分に限られます。

したがって、仮に夫が満額の老齢基礎年金(平成30年度は779,300円)を受けられるはずだったとしても、国民年金の被保険者期間の中に、第2号、第3号期間がある部分は除かれた上で計算されることになります。

例えば、夫が20歳から60歳まで40年間のうち第1号被保険者期間が30年あり、すべて保険料を納付しているとすると、第1号被保険者としての年金額(平成30年度)は、
  • 779,300円×360月/480月=約58万5000円
となり、受け取れる寡婦年金は、
  • 585,000円×3/4=約44万円となります。

寡婦年金と死亡一時金はどちらか選択

遺族に支払われる「掛け捨て防止の給付」に死亡一時金というものがあります。両方受け取れる場合は、「どちらか選択」となります。どちらを選ぶとよいかについては、「寡婦年金と死亡一時金どちらを選ぶのが得?」をご参照ください。

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