完璧主義の子供は一見、理想的。でも問題点もあり
一見「優等生」の特徴にも見える「完璧主義」も、導き方によっては、「落ちこぼれ」の原因となり得ます。
この記事では、完璧主義の子が抱える問題と、その対処法について整理してみましょう。
「完璧主義」の子供の特徴
「完璧主義」というと、高いレベルの成果を目指し、細部まできっちりと物事に取り組もうとする子を、まずは思い浮かべるのではないでしょうか。そして、「そんな『優等生』のような子に、何か問題があるの?」と疑問を持たれるかもしれません。それでも「完璧主義」には、「ネガティブな面」もあると示す研究が多くあります。「完璧主義」がネガティブに働いているサインとは、以下のような場合です。
・失敗することを過度に恐れる。
・期待した通りに物事が進まないと頻繁に癇癪を起す。
・新しいことへ挑戦するのを避ける。
・間違いを犯すリスクのあることを拒否する。
・恥をかくことを過度に恐れる。
・困難を前にするとすぐに諦める
・するべきことをぐずぐずと後回しにする。
・「優勝できないなら参加しない」など「オール・オア・ナッシング」の選択をする。
完璧を目指すことも、度を過ぎるならば、本人や周りにとって、こうした「困り感」となって現れ始めます。そして完璧主義のネガティブ面は、次のような問題に繋がるとされています。
完璧主義が引き起こす、様々な問題
・様々な能力が伸びにくくなる挑戦を避け、確実にできることしか手を付けようとしないため、成長の機会を逃してしまいます。また「失敗から立ち上がる」体験が重ねられないため、ますます失敗を恐れるという悪循環に陥ってしまいます。そのため、一見「優等生」の特徴にも見える「完璧主義」ですが、実は「落ちこぼれ」の原因とされることもあるのです。
・メンタルヘルスを損なう
未来の失敗を過度に恐れ、過去に「完璧でなかったこと」を引きずってしまうため、例えば不安障害やうつなどのメンタルヘルスの問題との繋がりが指摘されています。また自殺との関係を示す研究もあります。
・人間関係を築くことに困難を抱える
自分や周りの「至らなさ」を受け入れられず、関係がぎくしゃくとしてしまい、孤立しがちになります。
素晴らしい能力を発揮する原動力ともなる「完璧主義」。それでも、導き方によっては、こうして能力面、情緒面、人間関係面において、子供の健やかな成長を妨げる原因ともなってしまいます。では、周りの大人に、どんなサポートができるでしょうか? 完璧主義の子を、健やかに導く方法を、整理してみましょう。
完璧主義の子を伸ばすためにできること
・「評価」と「自身」を分けてとらえさせる完璧主義の子は、100点を取ったら自分は100点の子、80点を取ったら自分は80点など、自分自身と「評価」を同一に捉えてしまいがちです。そのため低い評価を極度に恐れ、わざと努力を怠り、「本気出してないから」などと言い訳することもあるかもしれません。「評価というのは、あなたが100点や80点と決めつけるためではなく、あなたがこれから変わっていくためにあるのよ。今何ができるかできないかを学んで、できないことを改善していくために用いていこうね」そう繰り返し伝えてやりましょう。
・成果より努力を認める
「うまくできた/できなかった」といった「成果」よりも、「難しいことに挑戦してすごいね!」「最後まで投げ出さないで問題を解けて偉かった!」など、その子なりに頑張って取り組む「姿勢」や「努力」を褒めてやりましょう。
完璧主義の子を伸ばすためにできること2
・完璧主義を和らげる言葉がけを心がける問題を前に立ちすくんでいるようならば、こんな言葉をかけてやりましょう。
「この世に完璧な人なんていない」
「失敗から学ぶことで少しずつうまくなっていくのよ」
「結果はどうあれ、全力を尽くすことが大切」
・できていることを認めてから、改善点に取り組む
80点の答案に、「20点もどうしたの?」とまず声をかけてしまっては、完璧主義の子をますます追い詰めてしまいます。「練習ではできなかった問題も、できるようになってるじゃない! 頑張ったね!」などと、「できていること」を、まずは認めてやりましょう。その後で、間違えた部分を理解するよう助け、「これで今度同じような問題が出ても正解できるね! 」と、間違いを次の成功へと繋げる体験をさせてやりましょう。
・能力とは「筋力」のようなものだと教えます
能力は、「目や髪の色」のように生まれ持って変わらないものではなく、「筋肉」のように鍛えることでどんどん伸びていくものだと教えましょう。「より重いものを持つことで、以前は重くて持てなかったものも、ひょいっと持ち上げられる筋力がついていく。能力も、難しいことに挑戦することで鍛えられて、どんどん色々なことができるようになっていくのよ」そう説明してやりましょう。
・モノが出来上がる「過程」を体験させる
様々なことを体験させてあげるのも大切
・伝記から学ぶ
失敗してばかりで全く「完璧」に見えない人々が、大成功していく一生が描かれた伝記を読んでやりましょう。例えば、アインシュタインは学校では落ちこぼれで、相対性理論の正確な方程式を生み出すまでに20近くの論文を積み重ねたといいます。また世界中の子供達に読まれている絵本の著者ドクター・スースも、27回も出版を断られた末、最初の出版にこぎつけたなど、伝記には、「モデル」にしたい人物像が溢れています。
・全体像を眺めるよう促す
線が少しずれてしまったり、文字の大きさが気に入らないなど、ノートを前に何度も消して書き直したりと細かなところに過度にこだわるようならば、「全体」を眺める手助けをしてやりましょう。「丁寧に書こうとするのは大切だけれど、この課題は、『本の感想を書く』ことが目的。内容を煮詰めていこうね」と、目の間の物事から少し離れ、全体を眺める手伝いをしてやりましょう。
・目標を小分けにし、達成できるスケジュールを組む
完璧主義の子は、「今日中に5行書き終えられたらなあ」が、いつしか「何としてでも今日中に5行書き終えないと!」となってしまったり、また、そうして5行書き終えた達成感を味わうよりも、「次は10行、次は20行書き終えないと!」と焦ってしまいがちです。現実的に達成できる具体的な計画を立てるのを、手伝ってやりましょう。とてつもなく大きく見えてしまうゴールも、小分けにし、その都度「できたね!」と達成感を味わうよう促すことで、より落ち着いて課題に向き合えます。
完璧主義のネガティブな面とは、親から子供へと遺伝的に引き継がれていくという研究もあります。親自身、自らの傾向に気づきつつ、親子で完璧主義をうまく導いていきましょう。完璧主義のよい面である「よりよくなりたい!」という子供たちの強い気持ちを、大切に伸ばしてやりたいですね。
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