森公美子 宮城県出身。昭和音楽短期大学卒業、1982年『修道女アンジェリカ』でオペラデビュー。翌年『ナイン』でミュージカルにも出演。97年のオリジナル版『レ・ミゼラブル』からマダム・テナルディエ役を演じている。『シスター・アクト』地球ゴージャス『Xday』『海盗セブン』、など舞台の他、テレビなど多方面で活躍。『千客万来!森クミ食堂』(BS日テレ)出演中。第40回菊田一夫演劇賞を受賞。(C)Marino Matsushima
ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒット映画をアラン・メンケン作曲でミュージカル化、英米を経て14年に日本初上陸した『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』。ヒロインのデロリス役には森公美子と瀬奈じゅんさんというタイプの異なる二人がキャスティングされましたが、2年ぶりの今回の再演でも森さん、蘭寿とむさんのダブルキャストが実現、大きな話題を呼んでいます。前回はその圧倒的存在感とコメディセンス、そして歌唱力で客席を笑いと涙で包み込み、第40回菊田一夫演劇賞も受賞した森さんにとって、本作はどんな作品でしょうか? 「30年がかりだった」という初主役までの道のりとともにお話いただきました。
想定外だった「デロリス」役
『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』写真提供:東宝演劇部
「映画版はDVDも持っているくらい大好きな作品でしたが、ナンバーが2曲くらいしか登場しませんので、ミュージカル化は難しいのでは、と思っていました。それが舞台化されたことは、私は年に何回かブロードウェイに行っていますので把握はしていましたが、当時トニー賞をとるかもと話題になっていた作品があって、そちらを優先したためその時は観ることができなかったんです。
その後、日本版への出演が決まりまして、デロリス役はまったく想定外でしたのでびっくりしました。映画版で演じていたウーピーと私は性格的に近いかもしれないけど、デロリスはギャングの情婦ですよ! 私はそういうタイプじゃないから、まさか、と。映画版に出てくる大柄な修道女の役でいいんですけど、と言いましたし、その後観に行ったLA版のキャストにも「日本でこの作品に出るの?おめでとう、シスター・パトリック」とその大柄な修道女役だと思い込まれて……。「いや、デロリスなんだけど」とは言いにくかったですね(笑)」
『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』写真提供:東宝演劇部
「私の中では、映画でウーピーが演じた、野心はあるけどそれほど上手じゃないキャバレー歌手をイメージしていました。一生懸命やっていても空回りしていたのが、なりゆきで修道女たちに歌唱指導をすることになって、ひどかった彼女たちのコーラスが激変する。大勢の人たちが彼女たちの歌声を聴きに来るようになって、挙句の果てにはローマの偉い方までいらっしゃることになる。そこまでのレベルに仕上げているなんて、あら私、指導者としては100点満点だったんだ。私がほんとに求めていたのは何だったんだろう……と思い返していたら、そこにギャングたちがやってきて大変なことになるんです。
いよいよデロリスが危ない、となったときに修道女たちが体を張ってかばってくれて、そういうことに慣れていなくて、一人で頑張ってきたデロリスはものすごく感動してしまうんですね。そしてやっと自分の居場所が定まってゆく、というお話なんですけど、演技に関しては初演の瀬奈じゅんさんも私も、演出された通りにやっていました。そうしないと、共演者の方々が(タイミングがずれたりすると)困ってしまわれるでしょう? でもどういうわけか、同じにお芝居をしても同じ振付で踊っていても、なぜか違って見えたようですね(笑)。
*『天使にラブ・ソングを~』トーク、次頁にまだまだ続きます!本作、とりわけ日本版のチャーム・ポイント、そして今年の見どころは?