食と健康

ジャムだけじゃない ペクチンの体への働き

ペクチンといえば、添加物としてジャムなどの食品に含まれているので、見聞きしている人も多いでしょう。野菜や果物、豆類、海藻類などほとんどの植物に含まれているペクチンは、生活習慣病予防に役立つ機能性があるとして注目が寄せられています。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

ジャムやゼリーのとろみや安定剤でおなじみのペクチン

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果物を煮詰めるととろみがつくのは、ペクチンの働きです。

ペクチンの語源は、ギリシア語の「pektos(硬い)」。植物の細胞壁の構成成分で、セルロースなどの成分と結合し、植物細胞をつなぎ合わせる接着剤の役割をしている多糖類です。

ペクチンは温水には溶け、冷却するとゲル化します。イチゴやリンゴ、レモンやオレンジなどの柑橘類を砂糖と煮詰めてジャムをつくると、とろりとしたとろみ(ゲル化)がつきますね。それは、こうした果物の細胞壁に含まれるペクチンの働きによるものです。

製菓売り場でペクチンを買うこともできますし、加工食品では「既存添加物名簿収載品目リスト」に含まれる添加物として利用されています。果物に含まれるペクチンだけではジャムのとろみが足りない場合は「ゲル化剤(ペクチン)」、またゼリーやアイスクリームなどを作る場合には「増粘剤(ペクチン)」、テクスチャーの保持、保湿・保水・決着などの安定のためには「安定剤(ペクチン)」と表示されます。

食品添加物として利用されるペクチンは、柑橘果皮(主にレモン)、リンゴ搾汁粕、サトウ    ダイコンの搾汁粕から抽出・分離されたものです。

ペクチンは水に溶けますが、人の消化酵素で分解されないため、食物繊維に分類されます。そしてその機能性から栄養補助食品や化粧品、医療品の分野など幅広く利用されています。

食物繊維という定義も、また分類もいろいろとあり、詳しい説明は「広がる食物繊維の仲間と役割」をお読みください。

注目のペクチンの機能性

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レモンなどの柑橘類やリンゴ、サトウダイコンの皮や搾汁粕からペクチンは抽出されます。

古くは、食物繊維は生体の構成成分やエネルギーにならないことから必要なものではないと考えられていました。しかし、1970年代から世界各国で生活習慣病予防などに役立つ研究が報告され、その重要性が広く知られるようになり、今では第6の栄養素と呼ばれています。

欧米の家庭で古くから、お腹がゆるい時も便秘のときもすりおろしリンゴを食べることが手当法と伝えられていたのは、このペクチンの働きによるところが大きいと思われます。

主な生理作用としては、便通の改善や腸内環境改善、血清コレステロールの低下、食後血糖値の上昇抑制などがあります。またペクチンを含む水溶性食物繊維は、摂食された後小腸で消化されずに大腸で腸内細菌によって分解・醗酵され、酢酸や酪酸など短鎖脂肪酸を生成します。消化管などのエネルギー(2kcal/g)源として利用されると考えられています。

短鎖脂肪酸について、より詳しく知りたい方は、「お腹の中でつくられる、注目の短鎖脂肪酸とは」もお読みください。

この短鎖脂肪酸により、腸内のpHを低下させることで、有害な病原性微生物の成長を阻害する、アンモニアなどの生成を抑える、免疫反応を制御しアレルギーの抑制、ミネラル吸収の促進などの機能性があると期待されています。

リンゴペクチン活用にも期待

近年はリンゴに含まれるリンゴペクチンの健康への機能性についての研究も活発に勧められています(青森県)。

例えば「農研機構」によると、アレルギー症状の緩和、血液中の総コレステロールおよびLDL-コレステロールの低下、ビフィズス菌の増殖活性などが、少ない人数ですがヒト介入試験で確認され、健康への有効性についての研究が重ねられています。

ただし、ヒト介入研究で摂取したペクチン含量はリンゴに換算すると6~8個分に相当しますので、毎日食べるには難しい量になってしまいます。

まだまだペクチンの研究は 今後の積み重ねが必要です。特定の成分だけを摂るよりも、野菜や果物などの明らかな食品を食べた方が、様々な栄養成分が一緒に摂れることでメリットがある、あるいはリスクが少ないという考え方もあります。日々の食事の中で幅広い食品から栄養のバランスよく食べることにより、ペクチンも自ずと摂取できることになるでしょう。

関連リンク/
広がる食物繊維の仲間と役割(食と健康)
お腹の中でつくられる、注目の短鎖脂肪酸とは(食と健康)

参考/
・食物繊維(インターナショナルライフサイエンスインスティテュート)
・日本ジャム工業組合
・リンゴペクチンの機能性の解明(農研機構)
・食物繊維の熱量(エネルギー)について(日本食品分析センター)

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