薬湯とは……身近な植物を使った伝統的な入浴剤
柚子を入れるだけでできる柚子湯。手軽な薬湯としての健康効果は?
日本では、季節ごとに身近な植物を使った「薬湯」が、伝統的に伝わってきました。現在では各メーカーからさまざまな入浴剤が販売されていますが、昔ながらのものでよく知られているものとして、
- 菖蒲湯(しょうぶゆ)……端午の節句(5月5日)
- 柚子湯(ゆずゆ)……冬至(12月22日)
柚子湯の効果……αピネン、リモネンなどによる血行促進・冷え予防
こうした薬湯の中でも、寒いこの時期に最もおすすめなのは柚子湯です。5~6個の柚子をそのまま、あるいは半分に切って湯に入れます。皮に含まれている精油成分には、血行を促進してからだを温めてくれるαピネンやリモネンが含まれており、精油自体も、風呂上りの皮膚からの水分蒸発を防いで、体が冷えるのを抑えます。また、柑橘系の香りがなんとも良い気持ちにさせ、リラックスすることができます。柚子でお手軽簡単薬湯を!
以前から柚子湯の保温効果は報告されていましたが、私自身があるテレビ番組でかんたんな実験にたちあう機会がありました。柚子湯・しょうが湯・日本酒湯・ネギ湯で温まりを比較するというものです。この4つを同じ温度の湯に入れて、同じ時間入浴し、保温効果をサーモグラフィーで体温を測定して比較しました。
その結果は、期待以上のものでした。柚子湯では60分以上皮膚が温まった状態が持続し、他の薬湯と比べて、ダントツで保温効果があったのです。以前に他の研究者が行った調査報告は読んでいましたが、実際に自分の目ではっきり画像を確かめると、納得感が違います。改めて昔の人の知恵はすごいと実感しました。
柚子湯の注意点・やり方・お風呂の温度の目安……絞りすぎは肌に負担も
保温効果や血流促進効果が期待できる柚子湯ですが、やり方に注意点があります。それは、欲張って柚子を絞り過ぎないこと。たくさん柚子の精油や果汁をお風呂に入れすぎると、肌への刺激が強くなり、肌を傷めることになります。また湯の温度は40℃までとし、入浴時間も10~15分程度としておくと良いでしょう。湯から出ても、浴室内には揮発した成分が拡がっていますので、洗い場で体を洗いながらも香りを楽しむことが可能です。
みかん湯の効果……リモネンやテルピネンを含む陳皮の作用
冬至にはスーパーなどでも柚子を入手できますが、時期が過ぎると難しいこともあります。そんな時は「ミカン湯」をお勧めします。ミカンも柚子と同様にかんきつ類です。特にミカンの外皮は「陳皮(チンピ)」と言われる漢方薬として使われています。リモネンやテルピネン、ポリフェノールの一種であるヘスペリジン、ビタミンCなどを含み、食欲増進、かぜによるのどの痛みや咳などに用いられています。また血管を広げて血流を促進して体を温める作用があります。特にリモネンやテルピネンはミカンの皮を干すとその効果が高まります。
自宅でも、食べ終わったミカンの皮を刻んでザルなどにのせ、陰干ししてカラカラになるまで乾燥させることで作ることができます。約20個分の皮を古くなったストッキングや水切りネットなどの袋に入れて、お風呂に浮かべましょう。
ミカンの皮を干すのが面倒なら、ミカン数個分のむいた外皮を生のまま水洗いしたのち、同じように袋に入れてお風呂に入れます。
先人の知恵でもあるお手軽な薬湯で、冷えた体をじっくり温めましょう!