今回は、「売らない」と決めた場合の選択肢、「貸す」「経営する」「持っている」「自分で使う」の4つの場合の活用法をご紹介します。
持っているのが大変なら「寄付」という選択肢も
空家は管理も大変です
例えば、栃木県宇都宮市では次のような条件で土地の寄付についての相談を受けています。
- 所有権者全員が寄附に対して異議のないこと
- 隣地との境界について、明確な境界杭等があり、隣地所有者の同意を受けていること
- 抵当権等の担保や、借地権等の私権の設定がないこと
- 農地であれば、宅地に転用できること
- 原則、更地であること
売らないなら、「借家」「土地貸し」という方法が
「売らない」と決めた場合の選択肢は4つあります。「貸す」「経営する」「持っている」「自分で使う」です。「貸す」には2つのバリエーションがあります。1つ目のバリエーションは、親の家に住んでくれる別の家族に「貸す」ことです。できるだけ早く、高く貸す。そのために家をリフォームするかどうかという住宅の賃貸についての問題です。
築30年超の古い家の場合は、台所、浴室、トイレなどの水回り設備の交換、傷んだ床や外壁の修理などに200~300万円、もしくはそれ以上かかってしまうこともあります。家賃を原資にして改修しようとすると、家賃3万円程度でしか借り手のつかない地方では70~100か月かかり、現実的はありません。
あまり手を入れずに貸し出せる、築年数の浅い家に向く活用方法です。賃貸住宅の借り手は、勤務先や最寄駅への近さを優先します。便利な立地でないと、借り手はすぐには見つからないでしょう。
2つ目のバリエーションは、「更地」にして土地を貸すことです。駐車場、自動販売機の設置、貸農園、資材置き場など、最近では太陽光発電が活用方法の一例ですが、とにかく、その土地を活用したいという需要者ありき、なのでこれも賃貸についての問題といえるでしょう。
マンション、アパートに建て替えて「賃貸経営」という選択肢も
「売らない」選択の2つ目は賃貸マンション、アパートなどを新たに建て直して貸すという「賃貸経営」です。親の家をいったん更地にして事業用の建物、たとえば賃貸マンションやアパートを建てる、機械式の駐車場・駐輪場にするなどにして貸し出すという方法です。この方法は8割がたこうした事業が成り立つ立地条件と事業に見合った土地の広さなどが、決め手となります。更に事業費用として、新しい建物の建設費用などのための資金が必要で、多額のローンを借りることになります。10年~30年といった長期間での事業収支を予測しながら、採算があうのか否かを判断しなければならず、にわか事業主としては難易度の高い活用方法ではあります。まさに経営の問題です。
親の土地を手離したくない!という熱意に加えて、自営業や会社経営などの経験、不動産ビジネスに対する専門性があることが、事業成功の秘訣ではないでしょうか。
売らずに「持っている」という選択肢は保全策が問題
「売らない」選択の3つ目はそのまま「保有する」ということです。ただし、保有するためには、家・土地の保全策が問題となります。これは「売る」と決めたにもかかわらず「売れない」場合の問題といみじくも一致しています。4つ目の選択肢は「自分のために活用する」という選択肢です。自宅として住む、別荘として時々利用する、物置にする、などが主な活用方法でしょう。この方法を選択できるのであれば親の家問題に悩むことはありません。
このコラムを閲覧していただいた方々の多くは、残念ながらこの選択肢は取れないからこそ、どうしたらいいか、が知りたいと思っておられることでしょう。
売るも貸すもできないなら「相続放棄」という選択も
どう考えても、親の家の有効活用の方法が見当たらない。お荷物を背負い込むくらいなら、最後は「相続放棄」という選択です。その場合、気を付けておきたいのは、たとえ子が放棄しても、親の兄弟などに相続が及ぶので、親族全員が「相続放棄」の意思統一ができていないと、誰かが迷惑をこうむる、ということです。また、親の家以外の株や現金などは相続したいと都合の良いことを考えがちですが、オールオアナッシングで、親の家の相続を放棄すればその他のすべての財産を放棄しなければなりません。
空き家にしないための選択肢はこれだけです。このなかから、あなたの親の家にふさわしい活用方法を絞り込み、早めに行動することをお勧めします。早ければ早いほど親の家が空き家になる期間が短くてすみます。