「とんでもないエンタテインメント」の中心で、しっかり光を放ちたい
『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
「この物語はたぶん劇場で見て初めて納得したり、「おっ」と思えるものがあるのであって、特に事前の情報知識は何も持っていなくていいと思うんですよ。なので「はいそうです」って言って終わりでいいのかもしれないけれど、かといってそれが本当にそうなのかはわからない。うまく説明するのは難しいですね。なぜ彼が人から一目置かれるのか、なぜ女性が彼に対して憧れを持ち、彼がそれに対してどういう思いなのかは、謎めいています。スターって謎が多いじゃないですか。その裏側も登場して即・描かれています」
――孤高というイメージでは、『エリザベート』のトート役ともかぶってくるものがあるでしょうか。
「公開稽古で歌ったナンバーで言うと、一人対全員、という意味ではおっしゃる通りかぶる部分もありますし、僕もこれだけ体が大きくて威圧感の塊でしかないけど、本番を御覧いただければ、ベールに包まれていたものが即・はがれてゆくと思います。トートはずっとベールが残っていくというか、あれがはがれた状態だとしても誰も指を触れられない存在ですが、今回の役は虫ではあるけれど感情もあり、あることに苦手意識をもっていたりと、「人間味のある」昆虫です」
――今回、ご自身が課題にされていることは?
「ダンスと殺陣ですね。こんなに立ち回りをするのは昔『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面をやっていたとき以来、十数年ぶりです。当時は高校生だったので体力があったけれど、今は年齢を感じますね(笑)。殺陣が終わると袖でほんとに倒れるんじゃないかというくらい、息がぜえぜえになっています。僕の役が強力なイメージがあるので、今回の立ち回りは華麗というよりすごみだったり勢いみたいなものが大事なのかな。一つ一つの形を意識しつつ、それよりも勢いだったり強さを大切に稽古しています」
『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
「非常にわかりやすいし、優しい方です。「間」だったりリズムだったり、芝居を見る人間が一番気になるところにちゃんと目を向けて修正していらっしゃるイメージがありますね。細かいセリフの言い方とかニュアンスよりも、全体の流れを重視されていて、役者の個性も生かしますし、ご自分の意図したとおりに役者が読んでいなかったとしてもそれを直す方ではないです。
僕、他のキャストの演技を観ていて「五朗さんはああいう意味で書いたわけではないんじゃないか」と思って五朗さんに質問したことがあるんですが、五朗さんは「そうそう、でも今のやり方で面白いからそのままでいいんだよ」と。ご自身の解釈を押し付けることがないんですよね。中には、僕の経験では語尾を上げる、下げる、どこにアクセントを置く、どれだけの間をとるかなど、詳細に指定する演出家もいらっしゃるんですよ。でも五朗さんはそういうことよりもテンポだったり感情という、芝居のベースになる部分を大事にしていらっしゃるんです。自分の書いた台本イメージに固執するのではなく、実際に現場で起こっていることに自分を寄せて行かれる演出家なので非常に柔軟だし、役者からしたらとてもやりやすい演出家です」
――今回、どんな舞台になりそう、あるいは「したい」でしょうか。
「本作は笑いあり涙あり、歌ありダンスありという、様々な要素の入った「とんでもない」エンタテインメント・ショー。一つのカテゴリーにはおさまらない舞台ですね。華々しくなければならないし、観ている人を驚かさなければならないし、いろんな仕掛けを五朗さんが考えていらっしゃる中で、自分はその真ん中に立たなければならないので、ちゃんと中心にいて全体を支えられるよう、真ん中できっちり光を放てるように頑張らなきゃいけないなと思ってます」
*次頁からは城田さんの「これまで」をうかがいます。幼くしてエンタテインメントの世界に目覚めた優さんですが、はじめは挫折の連続。それでも諦めなかった原動力とは?