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子どもの急な発熱への対処法・解熱剤の注意点

【小児科医が解説】子どもが急に発熱した場合、皆さんはどのように対応していますか? 発熱時はおでこを冷やせば良いと考えている方もいるかもしれませんが、それは誤りです。急な発熱に慌てないためにも、親として正しい知識をあらかじめ身につけておきましょう。発熱の原因と効果的な対処法、また解熱剤使用上の注意点を詳しく解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

発熱は身体に異常が起こっているサイン……正しい対処法は?

寝込んでいる女の子

子どもの急な発熱……。どのように対応すればよいでしょうか?

休日や夜間の急な発熱……。特に子どもの発熱には慌ててしまうことも多いため、正しい知識や対処法をあらかじめ身につけておきたいものです。

発熱と一言でいっても、急激な高熱や、ずるずると長く続く微熱など、その重症度や期間は様々。いずれの場合も、発熱は身体に何かしらの異常が起こっているサインです。

まずは発熱は身体のどのような仕組みで起こるのか、子どもの急な発熱時に体温を下げる効果的な対処法はあるのか、小児科医が詳しく解説します。
 

体温が1℃下がると免疫力が40%低下する? 発熱の原因と仕組み

病原体が侵入すると、有害なものを排除しようと白血球が活発になり、白血球から「プロスタグランジンE2」という物質が放出されます。このプロスタグランジンE2が放出されたことにより身体は発熱するのです。

発熱によって体温が上がると、免疫機能が高まるため、病原体を速やかに排除することができます。体温が1℃下がると免疫力は30~40%も低下するといわれているため、基本的には発熱しても体温を下げないことが重要です。

その一方で、免疫を抑える薬を飲んでいる場合、発熱しにくいことがあります。病原体が身体に侵入してきているのにも関わらず、発熱が無い場合、逆に注意しなくてはなりません。そういった意味でも、発熱は重要な危険信号のひとつといえます。

体温を下げないのはあくまでも「基本的に」であり、発熱によって水分や食事が取れず、睡眠もままならない状態になると、免疫以外の機能が低下してしまいます。そもそも、高熱で辛い思いをしている時には、誰だって少しでも楽になりたいものですし、熱が42℃以上になると、身体の成分であるタンパク質が機能しなくなってしまうため、インフルエンザ等でひどい高熱が出た場合には、速やかに解熱する必要があります。下記で、効果的に体温を下げる方法をご紹介します。
 

汗が出ない場合の対処法・効果的な体温の下げ方

冷やす

おでこを冷やしても、体温は下がりません

発熱時、身体を温めて、汗をかかせて体温を下げる方法を取る人も多いかもしれません。しかししっかりと汗がかけない状態で温めると、さらに体温が上がるだけになってしまいますので、適切に冷やすことを考えましょう。

血液は身体全体に流れているので、血液を冷やすことが体温を下げることにつながります。脇や首、足の付け根である鼠径部を冷却剤、氷嚢などで冷やします。

ちなみに、絵的に連想しがちな「おでこに冷たいタオルを乗せる」という方法には、残念ながら体温を下げる効果はありません。ひんやりとしたタオルを当てることで得られるのは、発熱による不快感の緩和という気分的な効果でしょう。
 

解熱剤使用の注意点・解熱剤を使う判断はどうすべきか

プロスタグランジンE2の生成を抑制するのが「解熱剤」です。解熱剤の多くは、プロスタグランジンを産生するための酵素であるシクロオキシゲナーゼを抑制します。一方で子どもの場合はアセトアミノフェンが使用されますが、こちらはシクロオキシゲナーゼを抑える力は弱く、脳内体温調節中枢に働くのではないかといわれています。小児科では、解熱剤は、アセトアミノフェンを出すことがほとんどです。

子どもがインフルエンザや水疱瘡にかかった時に、アスピリンなどのサリチル酸を使用すると、脳症という脳の病気を起こす可能性が報告されているため、十分な注意が必要です。

解熱剤は発熱を抑えているだけで、感染症そのものを良くしているわけではありません。あくまで、発熱による不快感や倦怠感を緩和するためです。つまり、解熱剤の効果が切れてきた頃には、再び発熱してきてしまいます。人によって異なりますが、高熱が持続している時よりも体温が急に上がってくる時の方が辛いと感じる人もいるため、解熱剤の使用による再発熱には注意が必要です。

また、熱性けいれんをもっている子どもでは、体温が急に上がってくる時にけいれんしやすいといわれています。再発熱時のけいれんのリスクを考えると、解熱剤の使用は、熱が高すぎて水分が飲めない場合や、寝られないなどの症状緩和を目的とするときに限った方がよいかもしれません。

解熱剤には、内服薬・座薬・点滴があります。効果発現は、点滴>座薬>内服薬の順番ですが、使用しやすさや手軽さは、内服薬>座薬>点滴の順でしょう。それぞれの状況に合った解熱剤の使用が望まれます。

また、大事なイベント等の前には心因性の発熱を起こすこともあります。そのため、発熱した場合には対策前にまずは原因の把握が必要です。心因性の発熱については、「大事な用事のある時に限って発熱! なんでなの?」もあわせてご覧下さい。
 

平熱は36℃?37℃? 体温の個人差と測定方法

哺乳類であるヒトは、爬虫類や昆虫と違って、体温を一定に保つことができる恒温動物です。体温を一定に保つためには、筋肉を細かく収縮させてブルブル震えることで熱を産生したり、発汗や皮膚への血管を拡張させることによって、熱を放出したりします。

では、「平熱」とは何度のことでしょうか? 平熱は年齢や性別等によってさまざまで、当然個人差があります。また、個人でも1日のうちで変動するため、いつ測定するかによっても異なります。子供だけでなく、大人も自分自身の平熱は把握しておきたいものです。自分の身体がきつくない体温がその人の平熱だとも言えます。しかし一定の基準があると便利なので、一般には37℃未満を平熱と考え、予防接種などでは、37.5℃以上の場合、ワクチン接種ができないことになっています。

また、体温はどこで測定するかによっても異なります。口や脇、直腸などが一般的ですが、体温計によっては耳に当てたり、おでこに当てて測定するものがあったりと、どの数字を信じるべきか判断に困ってしまいます。最も外気の影響が少ないのは直腸温ですが、毎回肛門に体温計を入れるのは抵抗があるかと思います。

大切なのは、最も計りやすい方法で体温測定を繰り返し、その平均を目安にすることです。子供にしろ大人にしろ、発熱時に異常な値だとわかりやすくなります。普段の平温と発熱を知る意味では、日ごろから測定方法を決めておくことが大切なのです。
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