座ることは日常の一部
それが腰痛や肩こりの原因になっていることは広く知られていますが、心筋梗塞の発症率増加や寿命の低下など、近年ではその他の様々なリスクが明らかになりつつあります。
今回は、座ることが身体に与える影響を具体的にご紹介しましょう。
座り続けることで下肢への血流が減る
米インディアナ大学での研究では、椅子に座った状態でいる20~35歳までの男性を被験者に、1時間ごとに大腿動脈の血流を測定しました。その結果、座っていることではじめの1時間で血液を循環させるのに必要な血管の機能が50%も低下することがわかったそうです。大腿動脈とは、骨盤の前面から鼠径部を通って、下肢に血流を送る、体の中でも最大級の血管です。その鼠径部を通る大腿動脈が椅子に座ることによって圧迫され、折れたチューブのようになってしまい、下半身の血流が阻害されてしまうのです。
血流が悪くなると、結果、心臓への負担が多くなり、心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険性が高くなります。
長時間座っていることで寿命が縮む!?
また、椅子に座り続けることで、寿命にも影響があるという研究がスウェーデンで発表されています。その鍵となるのは「テロメア」という遺伝子の中にある構造体。テロメアは染色体の端にあり、長いほど遺伝子情報が保たれ、寿命が伸びるとのことです。つまり、座っている時間が長い人ほど、このテロメアの劣化が進んでいる、という研究結果が示されたのです。違う研究でも、一時間座っていることで平均22分の寿命が短くなっている、という驚きの報告があります。
長時間座ると、子宮体がんや乳がんとの関連も
女性の場合は、子宮体がんや乳がんの発症リスクにも関連がありそうです。米国癌発症研究会(American Association of Cancer Research)の発表によると、長時間座っている、ということは運動不足になっているということであり、運動不足は明らかに乳がんの発症リスクを高めている、としています。現代人は座りすぎている!?
これらの研究結果からも座っていることがいかに健康に害を生むか、想像できると思います。長時間座っていることは、喫煙しているのと同じほどのリスクがあるということも、最近の研究で明らかになってきているのです。TED(学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう講演会)で、ルビコン・コンサルティング創業者のニロファー・マーチャント氏 も、現代人の座りすぎの生活習慣に警告を鳴らしています。彼女によると、アメリカ人の1日あたりに座っている時間は平均で9.3時間であり、それは睡眠時間より長い、と指摘しています。
睡眠について人々は多くの関心を寄せていますが、座り方については関心が薄いのが現状です。睡眠時間より長い「座る」という行為について、もう一度考えて、気をつけることが必要なのかもしれません。