リメイクピアノとは?
「リメイクピアノ」とは“リフレッシュ”と“メイクアップ”をベースにつくりだされた造語。メイクを施すようにピアノに色を塗り、外観をリフレッシュさせることを意味します。この言葉の生みの親であり、数多くのリメイクピアノの施工実績をもつ、富山県でピアノ工房を営む南部直人さんにお話をうかがいました。きっかけは「ピアノに携わる仕事がしたい!」という熱い思い
ガイド: ピアノといえば黒が当たり前ですし、なんと言っても高価なものです。このように大胆に色を塗り替えようと思ったきっかけは何ですか?南部氏: 私は実は大人になってからピアノを習い始めたのですが、お世話になっていたピアノ教室の先生が常々「ピアノの選択肢に黒しかないのはおかしい」「もっとかわいらしい色があればいいのに」ということを言っていました。何年かしてフランス人のピアニストとの出会いがあり、ピアノの奥深さと素晴らしさにあらためて衝撃を受け、末席でもいいからピアノに携わる仕事がしたいと強く思うようになったのです。
ガイド: そこでピアノへの情熱と先生の言葉が結びついたのですね。
南部氏: そうなんです。私はかつて自動車の塗装修理をしていた経験があるので、それを活かしてピアノの先生の思いも叶えることができたらと、とりあえずピアノを1台塗ってみようと思い立ったわけです。
「お古」のピアノが新品以上に魅力的なピアノに変身!
ガイド: どのようなお客さまからの依頼が多いのでしょうか?南部氏: 子供の頃にご両親やおじいちゃん、おばあちゃんに買ってもらったピアノを、ご自身のお子さんに受け継ぐというシチュエーションが多いですね。「お古」というイメージだとお子さんもあまり有難味を感じませんが、好きな色にしたりイラストを入れていいとなると、新しいピアノを買ってもらう以上に喜ばれるようです。
ガイド: 練習も進んでやってくれそうですね?
南部氏: 実際にそのような話を聞きました。ピアノの練習は一般的にお子さんにとっては学校の宿題といっしょでそれほど楽しいものとは限らないと思います。ピアノを塗り替えることで、子供さん自身がそのピアノに向かう動機付けになったり、お子さんが小さいうちなどは、お母さんの気配を感じるリビングルームなど生活の中にピアノを持ち込みやすいというメリットがあるのではないでしょうか。
リメイクピアノのバリエーションは無限大
ガイド: ペイントはどのような色でも可能なのですか?南部氏: はい、仕上げもパールやメタリック、ツヤ出しツヤ消しなど、壁紙や家具に合わせて自由自在に選んで頂けます。イラストや装飾パーツを入れることもできます。
ガイド: 黒のピアノは高級感がありますが、部屋の雰囲気によっては存在感がありすぎて浮いてしまうこともあります。他の家具に合わせてインテリア感覚でペイントすると、部屋に馴染んで現代のおしゃれなライフスタイルにしっくりきますね。
変色や色褪せ、音やタッチへの影響は?
ガイド: ここまでカラフルだと、変色や色褪せが心配ですが?南部氏: ペイントに使っている塗料は、基本的には自動車の補修用に使われている種類のものです。自動車は屋外で使用されるものですので、紫外線や湿気、温度変化などに対する耐性は高く設計されています。直射日光の紫外線などによる塗膜の経年劣化がまったく無いとは言い切れませんが、そもそもどんなピアノでも直射日光が当たったり湿度の高い部屋に置くのは避ける必要がありますので、通常のピアノ使用条件の下においては十分な耐久性(数十年単位)があるものと考えています。
ガイド: ペイントすることでタッチや音に影響はありますか?
南部氏: 厳密に言うとボディーの固有振動数はごく微妙に変化するとは思いますが、調律や調整、環境などによって変化する割合に比べると誤差の範囲内です。
ガイド: 実際に音が変わったのか、外観が変わったことでそのように感じるのか微妙なところでしょうね?
南部氏: そうなのです。感性の問題で個人差があるので、変わるかどうか不安に思っていらっしゃるかたには基本的に塗り替え自体をお勧めしていません。
費用と工期
ガイド: デザインやピアノの状態によっても違うと思いますが、費用や工期はどのぐらいかかりますか?南部氏: 費用は、アップライトの場合で基本料金が194,400円と往復分の運送費がかかります。工期に関しては、他の作業との兼ね合いや往復の運送など合わせて、最近は3ヶ月前後お待ちいただくことが多いです。
リメイクピアノは、古いピアノを活用させる新たな選択肢
ガイド: 弾かなくなった思い出のピアノを処分するのも忍びなく、解体して家具に作り直し手元に残しているという話を聞いたことがあります。絶対に弾かないというならば、処分するよりは家具として大切に使うのもピアノへの愛情だと思いますが、できれば音を奏でて人を楽しませる役割のまま第二の人生を送らせてあげたいですよね。リメイクピアノは、処分するか、家具にリフォームするか迷っている人の新たな選択肢としてこれからますますニーズが高まっていくのではないでしょうか?南部氏: お客さまの話をうかがっていると、ピアノというのはその持ち主やご家族にとって、とてもたくさんの思い入れがある大切な宝物だと感じることがよくあります。保管状態にもよりますが、ピアノは修理や調整、調律をすれば何十年でも使えます。リメイクピアノの技術が、ピアノに新たな価値を見出すきっかけとなり、末永く家族と共に歴史を刻んでいってもらえたら嬉しいです。
【取材協力】
ドレミピアノ工房 BBピアノ