上半期と下半期で状況が変わった2015年
価格上昇による実需の減退が主要因

2016年の不動産マーケットは、どうなっていくのか? 2016年の不動産市場の行方を考える識者インタビューとして、不動産アナリストでHOME’S総合研究所 副所長の中山登志朗氏にインタビューしました。再開発や稀少立地のマンションが好調に売れた上半期でしたが、秋以降やや陰りが出ています。今年を振り返るとともに2016年を占っていただきます。
不動産アナリストの中山登志朗氏

不動産アナリストの中山登志朗氏

■プロフィール:中山 登志朗(なかやま としあき)
株式会社ネクスト HOME’S総合研究所 副所長 チーフアナリスト。1963年 横浜市中区生まれ。出版社、不動産調査会社を経て、2014年より現職。現在、不動産市況全般の調査・情報分析を担当。不動産シンクタンクのチーフアナリストとして、新聞・雑誌・テレビ・ウェブサイトなどに多くの原稿・コメントを提供。

―――中山さん。よろしくお願いします。まずは、2015年の不動産市場を振り返っていただけますか

「激動の一年だった」と中山氏

「激動の一年だった」と中山氏

中山氏:
一言でいうと激動の2015年だったと思います。消費税増税の影響が懸念されたスタートでしたが、上半期はマンションの売れ行きは堅調でした。目黒の駅前再開発など話題性の高いマンションの供給が続き、市場が盛り上がりました。高額物件の売れ行きも相続税対策と実需で好調でした。

ただし、価格上昇にともない後半の売れ行きは好不調がわかれてきています。都心の高額物件の供給が増えるとマーケットに流通する新築マンションの平均価格が上がります。フラット35利用者調査を見ても、ここ数年マンション購入者の年収が上がっているわけではないですから、中には見合わせる人も出てきているのでしょう。今の市場を下支えしているのは、住宅ローンの低金利状況ですが無理をしてまでローン組むのは、お薦めしません。

―――他にも要因は、ありますか?

中山氏:
秋以降の市況減速感の要因の一つに、横浜市のマンションの杭問題の報道があります。実態の把握や対策の立案は、長期化することがほぼ確実ですから当面は影響が続きます。中古マンション市況も同様に、価格上昇と杭問題によって需給のバランスが緩み、弱含む可能性あります。

もう一つは、11月初旬に国税局のタワーマンション節税監視強化の報道がなされた影響です。税の公平性や機能を考えると当然の成り行きだと思いますが、相続税対策で高額物件を購入することのリスクを感じる人が出てくる可能性があります。1億円超の高額中古マンションの動きは、既に鈍っているようです。

―――外国人マーケットの影響はどうですか?

中山氏:
外国人の購入は、投資にしても実需にしても相変わらず根強いです。ただし、中国系の方は中古の2,000万円から3,000万円台の比較的低価格のマンションが人気で、高額物件にはほとんど手を出していません。セカンドハウスを購入して日本に資産を持ちたいという側面が今のところ強く、マーケットに対する影響はそれほど大きくないと思います。。

「首都圏は、都市近郊エリアの供給が増えそう」
「消費税引上げでも焦らずじっく判断」

―――2016年の不動産市場はどんな感じになるとお考えですか?

中山氏:
まず2016年の新築マンションの供給戸数ですが、2015年よりもさらに絞り込まれる(減少する)のではと思います。都心エリアのマンション供給も弱含むでしょう。一方、首都圏近郊~郊外エリアの大規模マンションの供給が活発化すると思います。神奈川県の中西部、東京都下、埼玉県、つくばエクスプレス沿線などで大型マンションが分譲される見込みです。戸数規模が大きいだけに、ディベロッパーがどう安心・安全を担保できるかが売れ行きを左右するでしょう。

一方で、高層マンションの建築コストは上がっているので、タワーマンションの供給は減少すると予想しています。当初の見込みと大幅に見積もりが乖離し、早期の着工を断念したり計画を見直したりするケースも増えてきました。

―――価格動向は、いかがですか?

中山氏:
高額な都心のマンションの供給が減るので、平均価格は下落すると思います。ただし、用地価格も建設費も下がってはいないので、どこのエリアでマンション供給が活性化するかによって供給価格の平均値は変動するでしょう。エリアごとの価格は、やや上昇か横ばいではないでしょうか。工事費は、これ以上は上がらないかも知れません。都心でおおよそ坪500万円前後。城南・城西などの近郊エリアで坪300万円台~400万円台、郊外エリアで坪200万円台前半といったところでしょうか。価格の上昇は売れ行きに直結しますから、価格変更を余儀なくされるプロジェクトも出てくると思います。

―――売れ行きはどうなるでしょうか?

中山氏:
消費税の経過措置の期限が、2016年9月末までなので新築マンションの駆込み需要も発生するでしょう。短期で見れば売れ行きは堅調ではと思います。一方、中古マンションは、ここ数カ月在庫が積み上がってきています。在庫が増えると価格が弱含む可能性が高いので、現在強気に売り出されている都心エリアなどの中古マンション価格も徐々に弱含むのではないでしょうか。

―――2016年のマンション購入で注意すべき点はどんなことですか?

中山氏:
消費増税の引上げ前に買うのか、後に購入するかの判断が難しいところです。消費税の2%の引上げ幅は、物件によっても異なりますが例えば建物価格2,500万円なら50万円分になるのでそれほど大きくない。引き上げ後の価格動向が弱含めば、その方が安く買える可能性もあります。であれば、焦らずじっくり検討することが大切なのではないでしょうか。

―――最後に、2016年に住宅を探す方アドバイスをお願いします。

中山氏

「安全面の確認を」と中山氏

中山氏:
安心・安全をいかに確認するかが重要です。買ってからでは遅いので買う前に様々な視点でチェックし、慎重に不動産選びをしましょう。私は、常々対象物件の資産性、安全性、利便性、居住快適性、個別性を見るのが重要と考えています。時節柄、安全性は資産価値に直結する重視すべき要素としてよく確認して下さい。

―――本日は、ありがとうございました。

編集後記
今回の中山氏の話の中に、「値上がりする前に買いたいという焦りは禁物」という話がありました。一部のエリアでは、中古マンションの在庫増や新築マンションの売れ行き動向もやや弱含みの兆しもあります。買い手にとって見ると、じっくりマンションが選べる好機とも考えられます。消費税の引上げなど、気が急く2016年ですが、10年、20年先を見据えて熟考すべき年と言えるかも知れません。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。