情報に振り廻される人が多い
日々私たちに入ってくる情報量は、10年前に比べて約550倍増えたそうです。簡単に情報を集めて比較できるものは良いのですが、中にはそう簡単に比較できないものもあります。特に住まいは、目には見えない住み心地やデザインのこだわりなど、一律で比較できるものではなく、必ず一度、自分あるいは家族などのフィルターを通して検討していかなければなりません。
それには自分という人間にボールを投げて、そのはね返りを大切にしなければならないということです。ですが近年、自分にボールを投げても反発するだけの経験や体験をもちあわせておらず、結局は情報に振りまわされている人が多いように感じます。
情報の迷いから悩みに変えていく力
「迷い」とは、どうしたらよいのかわからないので判断ができない状況です。それは自分の中に明確な判断基準がないからです。一方「悩み」とは、自分へ焦点をあててあれこれ考えている状況です。もし誰かに適切なアドバイスを受けられれば問題点を解決できる糸口を見つけることができるかもしれません。それは自分の中にほんわかしたある程度の判断基準を持っているからです。
迷いと悩みは、はっきりとした境界があるわけではないので難しいものです。しかし悩みは前に進む意志の表れであり、必ず自分が探している部分にたどり着くことができると意識を保つことで解決できるのです。
迷い=軸がない
悩み=軸がある
思考していく力を備えていく
これからの住まいづくりは単に選ぶ、与えられるのではなく、自分達の生き方や暮らしをどのように構築していくかが大切な社会になっていくのでしょう。それが成長ではなく成熟していく社会ということです。そうした場合自分にある程度の知識が必要になってきます。それもにわかに集めた情報ではなく、これまである程度培ってきたものです。家が完成するまでには、一般的に設計者から700~800くらいの質問を受けますので、まさに思考の連続作業です。たとえ夫婦であっても一致するとは限りません。だからこそ家づくりという貴重な体験を、選ぶものではなくつくりあげるものにしなくてはいけないのです。
つくりあげるにはまず自分を知ることから始めなければなりません。そうすることで大切に持ち続けて行きたいものが何かを見抜く力も養われるのです。
家づくりに参加する立ち位置を認識する
ではどうするとよいかというと、専門家に任せればよいのです。いくら素人の人が勉強しても専門家にはかないません。しかしこれだけ情報が入ってくれば「自分のこだわりや生き方をデザインに活かしたい」「家づくりに参加したい!」という気持ちに誰でもなってきます。たとえば、今の生活を1.0、満足度の高い家を2.0が満点とすれば、自分の知識をまとめて1.2~1.5あたりを目指すと良いのです。そうすると、0.2~0.5は勉強しなくてはなりません。その0.2~0.5が思考することなのです。
残りの0.8~0.5は専門家の力を借りることで、満足度の高い家にたどり着けるのです。全体をバランスよくまとめるにはやはり専門家の力を借りてアドバイスを受ける、つまり傾聴することです。
家づくりに参加する立ち位置を認識し、そしてしっかりと情報を整理して思考してみる。きっとその中から自分らしい家づくりのヒントが生まれてくるはずです。
五感を活かして思考してみよう!