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認知症が重いと介護費用も倍に? 夫婦の認知症予防法(2ページ目)

最近、認知症がある高齢者の行方不明や車の運転ミスなどが、社会問題となっていますが、認知症が重度になると、介護費用も2倍になることが分かりました。一方、認知症は、生活習慣で予防したり、早期発見、早期治療で、治療効果が高くなることも分かってきました。患者本人はもちろん、支える家族や周囲の人のためにも、夫婦で認知症予防を始めましょう!

平野 直子

執筆者:平野 直子

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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介護が、家計や家族、仕事に与える影響は?

介護をしながら、働き続けることができるのかな……

介護をしながら、働き続けることができるのかな……

前出の調査では、認知症に限らず、介護をしている人を対象に、「介護をすることになって、家計や家族関係、仕事にどのような影響があるか」を聞いています。

「介護を始める前に比べて、総世帯収入が減った」という方は、男女ともに半数以上となっています。以前、コラム「30、40代での介護退職も3割! わが家はどうする?」で、30代、40代でも介護・看護を理由に仕事を辞める人が増えている、と紹介しましたが、近年、男性の介護離職者も増えています。また、仕事を続けている方でも、残業を減らしたり、非正規雇用の方は勤務時間を減らしたりすることで、世帯収入が減ったという方もいらっしゃるでしょう。

一方、「介護を始める前に比べて、総世帯支出が増えた」という方は、男性で約半数、女性は6割以上でした。介護サービスにかかる費用だけでなく、水道光熱費やおむつなどの消耗品費が増えたり、介護をする人と家族のために、外食・お惣菜等の食費、お掃除サービスなど民間サービスに費用をかけている方もいるかもしれません。
家計経済研究所undefined「在宅介護のお金とくらしについての調査」をもとにガイド平野が図表作成(クリックすると拡大表示されます)

家計経済研究所 「在宅介護のお金とくらしについての調査」をもとにガイド平野が図表作成(クリックすると拡大表示されます)



家族関係については、「他の家族と一緒に過ごす時間が減った」「他の家族のことに思うように手が回らなくなった」という方が、男性約3割に対して、女性は6割近くいらして、まだまだ女性が介護を多く担っていることが伺えます。一方、「家族・親戚と意見があわなくなった」と挙げた人は、男女ともに約4割でした。

また、最近、介護離職が社会問題になっていますが、「仕事にさける気力・体力が限られている」と挙げた方は、男女ともに6割を超え、「自分の仕事のできばえ(質)に満足できていない」という方は、男性が6割超、女性も半数近くになっていました。「仕事を休みすぎている」という方は、男女ともに約3割で、仕事を休むことに罪悪感を感じている方も多いことが分かります。認知症の方を介護する場合は、見守りが必要な時間もさらに多くなるので、心身ともに負担はかなり重くなり、介護と両立することが困難に感じて、退職してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

介護離職を防ぐためにも、認知症予防を夫婦で始めよう!

日頃の生活で、取り入れられる認知症予防、始めよう!

日頃の生活で、取り入れられる認知症予防、始めよう!

介護にかかる費用や時間、家族や仕事への影響を考えると、要介護にならないように予防することや、介護度が重くならないように、早めに気付いて早く治療やリハビリなどの対策を取ることが大切です。特に、認知症を発症すると、本人や家族など支える人の負担も重くなります。

家族が介護にかかりきりになる⇒仕事と両立が困難になり退職を余儀なくされる⇒収入が減り、経済的にも負担が増す⇒外部サービスにかける費用を節約し、さらに介護にかかりきりになる⇒介護をする人もされる人もさらに辛くなる、といった負のスパイラルに陥ってしまう方が多いのも、現状です。

超高齢社会の日本で、誰もが認知症になる可能性がある、ということで、政府も認知症対策に力を入れ始めたり、介護離職をなくすための対策を検討し始めています。実際に、制度等に反映されて、私たちの暮らしの中で対策を実感できるまでには、時間がかかるものもあると思いますが、まずは、私たちにできる対策を始めてみましょう。政府広報オンラインのHPによると、

●野菜・果物・魚介類の豊富な食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症の予防につながる
●症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療が受けられれば、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできる。

とあります。

一般的な生活習慣病予防対策と同じなので、「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、例えば、夫婦でお互いの両親と会ったり、話したりする機会に、「最近、お母さん、食事の支度が面倒だからと、あまり食べなくなったね」、「そういえば、お父さん、最近、物忘れが多いかな?」と感じたら、夫婦で話し合って注意深く見守ったり、近所の地域包括支援センターなどに相談をしに行ってみる、ということも大切です。一緒にでかけたり、食事をする機会を増やしたり、皆さんが情報収集してご両親に役立つ情報を提供したりすることも効果があると思います。

また、将来、ご両親等が認知症を発症したとしても、早期発見・早期治療することで早く改善できる可能性が高まります。認知症の人に対する接し方や治療法など、認知症に対する知識を夫婦が共有することで、認知症の改善に役立つことも多いと思います。

できることを少しずつ取り入れて、ご両親等の介護・認知症予防を行いつつ、皆さんが仕事や家族との生活も維持できるように、職場の制度や地域サービス、民間サービスを活用していただけたら、皆さんも、ご両親等も、より幸せに暮らせると思います。そして、将来、皆さんご自身が、老後も認知症など介護を必要とせずに、元気で暮らせることにもつながると思います。

●政府広報オンライン
お役立ち記事「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」

●e-65.net(イーロゴ・ネット)
認知症 地域支援マップ
お住まいの地域の医療機関や地域包括支援センター(相談窓口)などを検索することができます。

●知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス 総合サイト(厚生労働省)
「認知症とは」

【関連リンク】
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