マンション相場・トレンド/マンション相場・買い時

インバウンド急増!マンション市場への影響は?

2015年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれたように、海外からの日本人旅行客が急増しています。インバウンド需要の増加で、ホテルや量販店の売り上げがアップする一方で、今後のホテル不足が課題に。大阪府では、「国家戦略特区外国人滞在施設に関する条例案」が可決され、民泊に対する法整備を進める動きも出ている。こうしたインバウンド需要がマンションマーケットに与える影響について考えます。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

インバウンド需要が急増 ホテルが予約できない
大阪府で、「国家戦略特区外国人滞在施設に関する条例案」が可決

2015年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれました。ガイドも今年3月、仙台訪問を計画した際にホテルの予約が取れない経験をしました。訪問の目的であった世界防災会議のメイン会場であった仙台市。いわゆるMICE(マイス:ミーティング、インセンティブ、コンベンション、イベントの総称で頭文字をとったもの)のうちのコンベンション(会議)で、多くの訪日外国人予約があり市内のビジネスクラスのホテルが、全て満室でした。結局直前にキャンセルがあり何とか宿を確保することができたのですが、国際会議一つでホテルが埋まってしまうほどストックが不足していることを実感しました。
訪日外国人旅行者客数undefined出国日本人数の推移

訪日外国人旅行者客数 出国日本人数の推移(出典:日本政府観光局)

今、すごいペースで、訪日外国人が増えています。日本政府観光局発表の2015年10月までの訪日外国人数は、既に昨年の1341万人を大きく上回る1643万人超。同時期までの比較では、48.2%の増加です。増加の要因は、円安や原油安、LCCの普及などでのコスト面のメリットやビザの緩和などの施策面の後押しが大きくそこに各国へのPRなどの相乗効果が出ています。

2003年に時の小泉純一郎が「訪日外国人1000万人を目指す」と発表したビジットジャパンキャンペーンがスタート。2003年の訪日外国人数が521万人であったことを考えると、大幅な伸びです。当初は、2020年に2000万人を掲げていた目標も、早期に達成しそうな勢い。中国人の爆買いに代表されるインバウンド消費も活発で、不動産価格にも影響が出ています。

2015年都道府県地価調査の圏域別商業地上昇率ランキングでは、銀座6丁目が上昇率19.6%で2位にランクされるなどトップテンに銀座アドレスが3つ入っています。外国人客の購買で、商業施設の売り上げが堅調。日本百貨店協会発表の10月の百貨店の売り上げは、対前年同月比で東京が+7.4%、京都が+8.2%(店舗数調整後)。中でも観光客に人気の化粧品や宝飾品の売り上げの伸びが顕著(東京の化粧品の伸びは、+36.6% 美術・宝飾品・貴金属は、+22.5%)で、銀座などの商業地の賃料相場にも影響が出ています。

また、京都や大阪をはじめ人気の観光エリアのホテルが不足。大阪では、「国家戦略特区外国人滞在施設に関する条例案」が可決されるなど、民泊に対する法整備を進める動きも出ています。今後空家の有効活用として、議論が深まりそうです。

外国人訪問者数は、日本は22位 アジアでは7位
トップはフランス 中国が4位 韓国が20位

訪日外国人訪問者数は、2014年で1341万人。これを世界と比較してみるとトップのフランスが、8370万人。2位アメリカが7475万人で、3位スペインが6499万人。世界と比べるとまだまだ少ないことがわかります。4位が中国で5562万人。隣の韓国が20位で1420万人、シンガポールが25位の1185万人です。シンガポールは、国際会議の開催数がアジアトップで日本も今後の課題としてMICE(マイス)の強化を掲げています。

ここで、MICE(マイス)とは何かを詳しく話したいと思います。MICE(マイス)とは、MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行), Convention またはConference(大会・学会・国際会議), Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一形態を指します(JTB総研の観光用語を参照)。ソウルやシンガポールといったアジアの都市は、MICEの招致に積極的で、1964年に初めて日本で開催されたIMF世銀総会において、当時の田中角栄大蔵大臣は、「IMF世銀総会は100のトレードフェアに勝る」と言って、日本のアピールに力を入れたそうです。
観光客で賑わう浅草

観光客で賑わう浅草

国際会議場と展示会場とホテルの3つがMICEに必要な要素ですが、日本では有楽町の国際フォーラムと「みなとみらい21」のパシフィコ横浜、神戸コンベンションセンター、幕張メッセなどが代表的な施設です。中でもパシフィコ横浜は、国際会議の会場として人気があり、「みなとみらい21」エリアのバリューを高めています。

2020年に東京五輪を控えていることを踏まえると、今後日本への外国人訪問客数がさらに増えることは確実でしょう。香港、台湾、韓国といった主要な訪日外国人のリピーターも増えています。今後アジア全体の外国人旅行者数の増加も見込まれていて、リピーターは少ないものの中国という巨大なマーケットが身近にあることもプラスに働きそうです。先日も、中国系の企業が北海道のリゾートホテルの経営権を取得したことがニュースになりました。今後ビジネスの拠点として東京、大阪、名古屋といった都市が認知されれば、日本の不動産の外国人ニーズもさらに高まっていくのかも知れません。

ホテル用地との競争激化で利便性の高い都心立地は、希少性増す
訪日外国人数が出国日本人数を45年ぶりに逆転

今後のマンションマーケットへのインバウンド需要の影響を考えてみたいと思います。まず、利便性の高い都心商業系立地は、ホテルニーズとの用地の競合が考えられます。ビジネスホテルと競合しやすい駅近いロケーションでのマンション供給は、今後ますます希少になるかも知れません。一方、都市近郊エリアは、都心の価格上昇による代替えニーズはあるものの直接的な用地競合は考えにくいので価格上昇は限定されるのではないでしょうか。郊外エリアも同様だと思います。

また、対陸続きにアクセスできるフランスやスペイン、アメリカと違って日本は、島国でアクセスが空路と水路に限られます。よって輸送ボリュームにも限界があります。また、シンガポールや香港などと比べると国土も広い。価格面の効果が出るエリアも一定の都市圏に限定されると思います。

とはいえ、韓国、台湾、中国といった近隣のアジア諸国だけでなく、ヨーロッパやアメリカなどの欧米諸国の来日数も過去最高を更新しています。海外諸国の日本への親近感が高まれば輸出製品などにもプラスの効果が働くでしょう。そうした経済の底上げこそが大きなメリットかも知れません。今年は、外国に行く日本人数を訪日外国人数を上回るのは間違いない情勢で、なんと45年ぶりのこと。このトレンドは、日本の不動産の価格面だけでなく街のあり方にも影響するでしょう。マンションの両隣とも外国人なんてことも、近い将来当たり前になるのかも知れません。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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