難しい審査を勝ち抜いたトクホ

1991年からスタートした特定保健用食品(トクホ)。現在はトクホに加えて、機能性表示食品や栄養機能食品などさまざまな制度があり、健康によい食品を選ぶための選択肢が広がってきました。

お茶

「体に脂肪がつきにくい」と謳う飲み物など、取り入れやすいトクホ製品が生活に密着しつつあります

健康によい食品の表示のなかでも、トクホは消費者庁の審査を受けて認可を得た商品のみが表示を許されています。この審査では、人体での臨床試験によって、効果の有無や安全性の問題など「ヒト臨床試験」の結果が必要になります。

ヒト臨床試験は被験者を集めて実施することになりますが、一般的に高額になります。食品会社の開発部ではそのような試験をすることを想定した予算組みをしているところは少数派なので、トクホの商品は大企業が本腰を入れて発売したいと考える一部の商品に限られてしまうのが本音でしょう。

とはいえ、この高いハードルを乗り越えて「トクホ」の表示許可を得た以上、消費者庁のお墨付きが出ているわけです。実際にその商品は健康効果があると考えてよいと思われます。

本当にトクホを飲めば安心か?

このように健康効果が高いと考えられるトクホですが、これだけの試験をしてもまだ分からないことがあります。それは「長期摂取」をした際の安全性です。食べ続けた場合にどのような影響が出るのかが分からないのです。

というのも、トクホの商品は特定の成分を多く含む食品です。天然由来の食品から抽出した成分であったとしても、濃い濃度で摂取することで多量に摂取することが可能になります。それがゆえに、効果があるともいえます。

消費者庁の審査時も長期摂取への影響として、3か月程度の摂取に関しては実験をしていますが、それ以上の期間については未知数です(実験していないため)。食事は一生食べ続けますので、天然由来の食品中に含まれる量であれば一生食べ続けても害のない量であったとしても、濃縮をして大量に摂取できるようになったトクホの成分が悪影響を及ぼさないという保障はありません。

トクホの成分はいつもの食品からも摂取できます

ブリ

トクホ商品でよく見かけるDHA、EPAの文字。実は、青背の魚にも豊富に含まれています

また、トクホの成分はいろいろありますが、私たちに馴染み深い食品から摂れるものも多くあります。

例えば「中性脂肪が気になる方に」と表示されている商品でも、その有効成分はジアシルグリセロール、グロビンたんぱく分解物、EPA・DHA、ウーロン茶重合ポリフェノール、ベータコンクリシニン、モノグリコシルヘスペリジン、難消化性デキストリン(食物繊維として)などさまざまです。

これらの成分は人工的に合成したものもありますが、基本的には天然由来の食品から抽出をしたものが多いようです。

これらのうちEPA・DHAは青背の魚(サバ、マグロ、ブリ、サンマ、アジ、カツオ、イワシなど)に多く含まれていることはよく知られています。また、難消化性デキストリンは野菜類や海藻類に多く含まれています。

あえてこれらのトクホ商品を買い求めずとも、天然由来の食品にも中性脂肪を下げる成分が豊富に含まれているものはたくさんあります。

1つの成分だけでは健康になれません

さらに他にも、別の角度から考えてほしいことがあります。人間の体は「1つの成分」だけで出来上がっているのではありません。筋肉・骨・歯などさまざまな栄養成分で出来上がっています。

時々、「○○を食べると健康になるという食べ物はありますか?」という質問を受けることがあります。コアラであればユーカリの葉さえあれば生きていけると思いますが、人間に生まれた以上、単一の食品で元気に過ごすことはできません。

言われてみれば当たり前に思われる話ですが、このことを忘れてしまっている人が多いように感じます。人間が「雑食」である理由を忘れてはいけません。

やっぱり天然の食材には敵わない!

そう考えると、トクホもいいけど食事もね、というところに落ち着くように思います。トクホにはない自然食材のよいところは、未知の栄養素が入っている可能性があることです。有効成分として認められている成分は、トクホよりも含有量が少ないかもしれせんが、この未知の栄養素のおかげで身体の恒常性が保たれている可能性も否定できません。

いろいろな記事で繰り返し書いていることですが、やはり自然の食材を新鮮なうちに料理をして食べるというのが最も人間の身体に合っていると思います。必ずしもトクホがいけないというわけではありませんが、値段的にも決して安いものではありませんし、続けるのはなかなか難しいものです。

またトクホの成分もバランスの取れた食事からの栄養がベースにあって効果を発揮するものです。トクホや健康食品に頼りすぎず、栄養バランスのとれた食事を心がけるとよいでしょう。


■関連記事
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。