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報復の連鎖はなぜ起きるのか

パリで起きた同時多発テロを受け、フランスのオランド大統領は「これは戦争だ」と発言。アメリカ、ロシアとともにIS(イスラム国)の拠点を空爆することを明かした。しかし9.11(アメリカで起きた同時多発テロ)後を見てわかるように、武力での報復はテロを沈静化させるどころか更なるテロを誘発してきたのが実態だ。負の連鎖はなぜ終わらないのか。

松井 政就

執筆者:松井 政就

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報復の連鎖はなぜ起きるのか

報復の連鎖はなぜ起きるのか

パリで起きた同時多発テロを受け、フランスのオランド大統領は「これは戦争だ」と発言。アメリカ、ロシアとともにIS(イスラム国)の拠点を空爆することを明かした。

しかし9.11(アメリカで起きた同時多発テロ)後を見てわかるように、武力での報復はテロを沈静化させるどころか更なるテロを誘発してきたのが実態だ。


武力行使で足並みが揃う皮肉

世界が喪に服す中、米仏ロ有志連合としてIS(イスラム国)の拠点とされる地域の空爆で足並みを揃えた。

これまで米仏とロシアはアサド政権への対応を巡って真っ向から対立していたが、今回のパリでの同時多発テロ、そしてロシア旅客機の墜落が爆破テロによるものと判断されたことにより、3者が足並みを揃えることになった。

まさに「敵の敵は味方」というわけだが、それまで相対する方針だった双方が、武力行使となった途端に足並みが揃うのが何とも皮肉だ。しかもフランスは、9.11後にアメリカが報復戦争としてイラク攻撃をする際に反対したが、今回は当時のアメリカと全く同じ行動に出た上、オランド大統領が「これは戦争である」と発言している点も当時のブッシュ大統領と重なっている。


第三者へ憎悪の矛先が替わる瞬間

そんな今、「日本は何もしなくていいのか」という声があがっている。そうした意見に耳を傾けなければならない点があるとしても、第三者の日本が何かすることが必ずしも正しいとは限らない。

憎悪の対象がすり替わる恐れ
があるからだ。

憎悪の対象のすり替わりは、問題とは関係のない者が介入した場合に起きやすい。身近な例が「隣人トラブル」だ。

隣り合う二軒がトラブルになっている時、関係のない第三者が仲裁に入ると、感謝されないばかりか「部外者が口を出すな」という反応が返ってくることがある。

すでにいがみ合っている状況では、両者がともに満足するような解決策はただでさえ見つかりにくい上、第三者の態度が一方に有利に見えるようなことがあれば、もう一方にとっては「敵の肩を持つ者」としか見えなくなる。

こうなるともはや理屈は通用しない。第三者の案が正しいかどうかはもはや問題ではなくなり、「敵の味方は敵」という理屈により憎悪の対象とされてしまうからだ。


武力行使が憎悪を増幅させる

テロリストへの武力行使は空爆によって行われているが、病院や学校、民間人の居住区域も大きな被害を受けているのが実態だ。

中には明らかな誤爆と認めたものもあるが、町とはそもそもそのような区域に明確に分けられているわけではなく、しかもテロリストの居場所も明確でないため、ピンポイントでテロリストだけを狙うことは難しく、数多くの民間人被害者を生んできたのが実情だ。

テロリストの中には、空爆によって家族が殺されたことを理由にあげる者が多いように、武力行使はテロを沈静化させるどころか憎悪を増幅させてきたことは否定できない。
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