子育て事情/子育て事情関連情報

中国一人っ子政策廃止に子育て世代が喜べない理由は?

中国が一人っ子政策を廃止し、一夫婦あたり2人までの子どもを持てることになった。バランスを欠いた急激な少子高齢化、いわゆる「人口構成の時限爆弾」に対応するものとされているが、中国も日本も子育て層の反応は「そんな簡単じゃない」といまひとつだ。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

世論調査で分かった、中国国民の「シラケ度」

中国の経済発展は一人っ子政策のおかげ?

中国の目覚ましいGDP上昇は「一人っ子政策のおかげ」と中国政府は言うが……?

中国政府が、1979年から35年以上にわたり推進してきた一人っ子政策を廃止し、どの夫婦にも2人までの子どもを持つ権利を認めたと大々的に報じられた。人口抑制を目的とした一人っ子政策は、狙い通り出生率を著しく低下させた反面、上の年齢層が膨大な数を維持したまま高齢化するという非常に偏った人口構成をもたらした。

中国は2012年に労働人口(15~59歳)の減少フェーズに突入したと報道され、今後は社会保障の維持が困難になると予測されている。この事態は「人口構成の時限爆弾」としてかねて指摘されてきたもので、中国政府の言い分としては出生率の増加により労働人口の減少に歯止めをかけ、高齢化に対応するとのことだが、子育て世代にあたる国民の反応は冷ややかだ。

■中国市民、過半数が第2子望まず 「一人っ子」撤廃に(47NEWS)

政策の撤廃いかんにかかわらず、すでに過半数が第2子出産を望んでいないことが、中国紙の世論調査で判明した。中国の発展の帰結として、上海、北京などの代表的な大都市は地価の暴騰と人件費の高騰、それに牽引される教育費用など生活コスト全般の上昇に悩まされており、大都市圏で働く層が労働を維持しながら子どもを持つのは負担が重い。中国政府は各地区の計画出産条例を適用することで、大都市在住など特定の条件を満たす夫婦には第2子の出産を認める優遇措置を設けてはいたものの、出生率の伸びには繋がらなかった。

貧しい農村部では育児放棄された「留守児童」が社会問題化

中国の留守児童問題

中国農村部では「留守児童」の虐待や教育困難が社会問題化

また一人っ子政策が罰金制度(集められた罰金は地方失政の埋め合わせや役人の懐へと注ぎ込まれた)によって厳格に運用された農村部でも、経済的困窮から両親が子どもを農村の老親や親戚に預けて都会へ出稼ぎに出てしまう「留守児童」問題が拡大しており、養育放棄された子どもたちが親戚や教師から虐待を受け、教育機会を奪われ、社会問題化している(参考:中国農村部、親の出稼ぎで置き去りされる「留守児童」6000万人、原因は戸籍制度―英紙 レコードチャイナ)。すでに一人っ子でさえも養育できない状況の貧しい農村部では、多くの人々があえて子どもは一人にとどめることを選択しているのだ。

次ページでは、日本の少子化対策でも感じる「コレじゃない感」について考えていきます。


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