マンション相場・トレンド/マンション相場・買い時

2015年のマンション総括 価格新時代突入?

2015年もあと一月足らず。前年の2014年以上に2015年のマンション市場には大きな変化がありました。今年のマンションマーケットを振り返り、今のマンショントレンドを考えてみたいと思います。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

首都圏マンション価格は、前年同月比で17.6%アップの5,364万円
首都圏マンション平米単価は、19.0%アップの75.9万円

不動産経済研究所発表の2015年10月度の首都圏マンション市場動向によれば、10月度の首都圏マンションの1戸当たり価格は、前年同月比17.6%アップの5,364万円、平米単価は、19.0%アップの75.9万円となっており大幅に上昇しています。2013年の1戸当たり価格が、4,929万円。2014年の一戸当たり価格が5,060万円で上昇率が2.7%だったことを踏まえると、2015年10月度は2014年平均より5.9%の上昇。この一年の価格上昇の大きさを実感します。
2005年以降の首都圏マンション価格の推移(出典:不動産経済研究所データを基にガイドが作成)

2005年以降の首都圏マンション価格の推移(出典:不動産経済研究所データを基にガイドが作成) 単位は万円

2005年以降の首都圏マンションの平均価格を見るとリーマンショックのあった2008年に平均価格4,775万円を記録した後、4,500万円台に下落。東日本大震災を経て、緩やかに回復基調だったものがこの1年で大きく上昇に転じました。価格上昇の主要因として挙げられるのが、マンション用地の取得価格の上昇と建設費のアップです。ここ数年マンションマーケットが堅調に推移していることもあり、事業ニーズが高いものの、景気回復で企業業績も改善しマンション用地に適した都市部の敷地面積の広い事業用地案件が供給されにくくなっており価格が上昇しています。
建築費指数の推移(出典:一般財団法人建設物価調査会undefinedundefined集合住宅undefinedRCデータを基にガイドが作成

建築費指数の推移(出典:一般財団法人建設物価調査会  集合住宅 RCデータを基にガイドが作成)

一方、マンションの建設費も上昇しています。一般財団法人建設物価調査会が発表している建築費指数(2005年を100とする)の集合住宅 RCデータによれば、2015年7月の建築費指数は、115.8で東日本大震災のあった2011年と比べると大きく上昇しています。一般的に、マンション用地の仕入や工事費のおおよその目安は、販売開始1年以上前と想定されるので、今後も強含む公算は高いでしょう。価格上昇は、2015年のマンションマーケットを表す顕著な傾向と言えるでしょう。

2015年10月度の契約率は、首都圏で68.8%。前月の66.0%から2.8%上昇も2カ月連続で70%を割り込み販売ペースがやや鈍ってきています。都心エリアから都市近郊、郊外エリアへと徐々に価格上昇の波が広がりつつあり購入に慎重になっていることが契約率鈍化の一因と思われます。

「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」、「Brillia Towers 目黒」全戸完売
注目度の高いプロジェクトが人気 売れ行きも集中化の傾向も

好立地の注目物件に人気が集中しているのも今年の傾向です。マンションとしては日本最高階数の60階建ての『ザ・パークハウス 西新宿タワー60』(三菱地所レジデンス ほか)が今秋に全戸完売。目黒駅の駅前複合再開発として注目された『Brillia Towers 目黒』(東京建物 一般財団法人首都圏不燃建築公社)も今秋に全戸完売しました。高価格帯で戸数規模があっても注目度の高いマンションが早期完売しているのも2015年の特徴で、供給戸数が増えない中でも訴求力の高いマンションが供給されたということでしょう。
「Brillia Towers 目黒」の完成予想模型

「Brillia Towers 目黒」の完成予想模型。駅前に憩いの場を提供

こうした注目度の高いプロジェクトがエリアの相場観を大きく変えたことも2015年の特徴です。中でも都心3区にその傾向が強く、港区の『ザ・パークハウス グラン 南青山』(三菱地所レジデンス ほか)や『パークコート赤坂桜坂』(三井不動産レジデンシャル)は、エリアの相場観を大きく変えました。

中央区も同様で、東京駅徒歩圏の『Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE』は、中央区としては希少な29階建てのタワーマンションということもあり、総戸数387戸に対し既に360邸が完売。堅調な売れ行きを示しています。千代田区でも希少な一番町立地の『ブランズ ザ・ハウス 一番町』 のデビューで大きく相場感が変わりそうです。値段設定が難しいプライスレスなプロジェクトが目立ちますが、都心3区の好立地の相場観は、数年前との比較で約3割から5割程度上昇しているのが実感値です。

こうした傾向は、都心エリアから世田谷区や大田区、杉並区などの都心アクセスの良い住宅街にも見られ、城南・城西エリアの相場観も約2割から3割程度は震災以降から上昇しているように感じます。神奈川県のみなとみらい地区や東急線沿線、田園都市線などの人気沿線も価格上昇が浸透しつつあり、現在散見される郊外エリアの新価格物件も今後増えてくることが予想されます。

価格上昇が避けられない中、コミュニティづくりなどの提案が深化
価格相応の価値を提供できるかが今後の売れ行きを左右する

地価上昇トレンドや建築費の動向を見ると、当面の新築マンション価格の上昇は避けられないでしょう。やや陰りがあるとはいえ、堅調な大都市圏のマンションマーケット。消費税の引上げも2017年4月に控える中、一段の価格上昇が市場に受け入れられるかは、新たな価値を提供できるかどうかに関わってくるでしょう。今年デビューしたマンションでは、コミュニティづくりのサポートやエコシステムの採用など様々な取り組みが行われています。

「ザ・パークハウス 青砥」で11月14日に行われた防災訓練の模様

「ザ・パークハウス 青砥」で11月14日に行われた防災訓練の模様。総勢約160名が参加した

三菱地所レジデンスでは、マンション居住者と地域をつなぐ「街とつながるレジデンスパーティ」を始動。第一弾として「ザ・パークハウス 青砥」で、地元商店と連携したハロウィンパーティと葛飾区と連携した防災訓練を実施しています。ハロウィンパーティでは、青戸商店街より8 店舗が参加し、総勢約400人が参加。地元商店による出店やマンション居住者の仮装パレードなどが行われました。こうした多くの人が集まって住んでいるからこそ可能となるハード面とソフト面はマンションの強みの部分。『どんな価値を提供できるか』が、今後マンションにますます要求されていくでしょう。

鬼怒川の決壊や昨今の杭の問題で安心・安全への関心が高まる中、どんな未来を提示できるのか。今後のマンションの商品企画に注目していきたいと思います。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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