ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

相葉裕樹、目標は敢えて高く【気になる新星vol.15】(5ページ目)

好青年から新婚の夫役まで、様々な役どころに真正面から取り組む相葉裕樹さん。今年は特に大役が続きますが、その手ごたえのほどは? 18年の最新インタビュー、そして15年のロングインタビューをお届けします。

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

『HEADS UP!』観劇レポート
カラフルなキャストが愛情深く描く
“劇場という異空間”

『HEADS UP!』撮影:國田茂十

『HEADS UP!』撮影:國田茂十

客席の前にあるのは、がらんどうの「裸舞台」。作品タイトルが照らされると軽快な序曲が響き、劇場付雑用係の熊川(中川晃教さん)が登場。アンサンブルとともに“すべては夢、マジック”と「劇場で起こること」を歌い踊り、何もない空間をたちどころに異空間へと変えてしまう演劇の不思議を象徴的に見せてゆきます。

華やかなオープニングが終わって現実に戻ると、この日初めて舞台監督を任された新藤(相葉裕樹さん)をはじめ、制作、照明、音響に大道具など様々なスタッフが登場。大御所俳優・小山田(今拓哉さん)の鶴の一声で決まった、予算のない一回きりの公演にぼやきながらも粛々と仕込みを進めていると、緊急事態が発生! 先輩舞台監督・加賀美(哀川翔さん)も加わり、彼らはなんとか無事幕を開けようとするのですが…。
『HEADS UP!』撮影:國田茂十

『HEADS UP!』撮影:國田茂十

運転手(福永吉洋さん)と制作の本庄(青木さやかさん)や大道具の久米(橋本じゅんさん)とのやりとりなど、随所に日本のお笑いのリズムをちりばめた、おおらかなミュージカル(脚本・倉持裕さん、演出・ラサール石井さん)。酸いも甘いも噛み分け、登場するだけで「頼れる兄貴」のオーラが半端でない哀川さん、新人舞台監督の成長過程をしっかりと見せる相葉さん、職人のプライドの中に茶目っ気を覗かせる橋本さん、真面目で優秀、でもどこか憎めない青木さん、ちょっと呆けはじめているのに舞台上では若手もついていけないテンションの老俳優役・今さん、ベテラン女優としてのゆとりと色香が漂う大空祐飛さんら、個性豊かなキャストがそれぞれに持ち味を発揮しつつ、物語を運んでゆきます。

背景もキャラクターも様々だけれど、“舞台への愛情”という点で一致する数十人が集い、裸の舞台にひとときの夢を乗せ、また去ってゆく。そんな劇場の姿を象徴的に描く本作には、作者、そしてかかわる人々の劇場愛がぎゅっと凝縮されています。そしてその象徴とも言えるのが、雑用係の熊川という青年。演じる中川さんがとびっきりの明るさで各場面に登場することで、観終わった観客はじんわりと心温まるものを感じるのではないでしょうか。何度も早変わりをするアンサンブルたちも大活躍の舞台です。

 
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