『CHICAGO』
12月4~23日=東急シアターオーブ 12月26~27日=梅田芸術劇場メインホール『CHICAGO』
20年代のシカゴを舞台に、野心家の男女が火花を散らす様をボブ・フォッシー・スタイルのセクシーこの上ないダンスを織り交ぜて描き、ブロードウェイではロングラン記録2位の大ヒット作。日本でも何度となく上演されている人気作品ですが、今回は連続テレビ小説『マッサン』でヒロインを好演したシャーロット・ケイト・フォックスがロキシー役を演じるのが話題です。先日の記者会見ではジャジーなアレンジで歌唱を披露していましたが、アメリカでは地方でのミュージカル出演経験もあり、本番ではどんな歌声を聴かせてくれるか、また清楚な“エリーさん”役がまだ記憶に新しい中でとびきりの悪女をどう演じるか、注目されます。
ヴェルマ役はブロードウェイで“最高のヴェルマ”と称され、来日公演でもおなじみのアムラ=フェイ・ライトが演じますが、上演期間中8公演では〈シカゴSPマチネ〉と称して、湖月わたるさんがこの役を演じる予定。既に昨年の宝塚OGによる女性キャスト版『シカゴ』でこの役は経験済みですが、数年前から英語版への出演を目指し、英語などのレッスンを積み重ねた結果、出演が決まったのだそう。業界内でも“努力の人”と高い評価を得る彼女の“夢舞台”、ぜひ見守ってはいかがでしょうか。
『エルコスの祈り』
12月20日~1月11日=自由劇場『エルコスの祈り』撮影:阿部章仁
84年に『エルリックコスモスの239時間』として初演、03年からは『エルコスの祈り』となり、ヴィジュアルや振付でヴァージョンアップを続けてきた劇団四季ファミリーミュージカルが、この冬、自由劇場に登場します。
舞台は“今から50年後の世界”。落ちこぼれの烙印を押され、画一的な教育で個性を否定されている子供たちと、彼らを世話するためにやってきた“心を持つ”ロボット、エルリック・コスモスが出会う。うつろな目をしていた子供たちは一人一人の個性を把握し、応援するエルコスに心を開きますが、教師たちは快く思わず…。
イタリア人デザイナーによる、カラフルで幻想的な衣裳・装置も目に楽しく、人間社会におけるロボット活用への期待が高まる中で、「そう遠くない未来」に起こりうる、心温かくも切ないドラマが楽しめそうです。
『エルコスの祈り』撮影:阿部章仁
物語の舞台は50年後の世界ということで、はじめに「これからタイムスリップします、お席が揺れるかもしれません」とのアナウンスがあり、場内はアミューズメント・パークのアトラクションのようなわくわく感に包まれながら開幕。「50年後の世界」に現れるのは落ちこぼれたちが集う「ユートピア学園」の生徒たちですが、テクノ風にアレンジされた音楽に乗った彼らのダンスは驚くほどぴたりと揃い、子供たちを無理やり枠に押し込んだ学園の教育の在り方が鮮やかに表現されます。演じる若手俳優たちの気迫に、筆者の5歳の子もたちまち飲み込まれているようでした。
教師を雇うよりコストがかからない、との理事長の考えで、学園にはエルリック・コスモスというロボットが送り込まれてきます。はじめは「ロボット?」と警戒する子供たちですが、一人ひとりの個性を理解し、伸ばそうとするこの「エルコス」に彼らは次第に心を開き始め、現場の教師たちは大慌て。このままでは自分たちの職がなくなると焦った教師たちは、エルコスを追い出そうと悪だくみを始めるのですが…。
『エルコスの祈り』撮影:阿部章仁
終幕後、劇場を出て歩いていると、筆者の娘は首をかしげて自分の胸に耳を近づけていました。何をしてるの、と聞くと「エルコスはここにいるんだよね。何か言ってるかもしれないから、聞いてみる」。幼稚園児には、学校のお話はまだ難しいかなと思っていましたが、5歳児の心にもしっかりと届くものがあったようです。
『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』
12月23日=梅田芸術劇場メインホール 12月26・27日=東急シアターオーブ『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』製作発表でのフランク、和央さん、トーマス。(C)Marino Matsushima
代表作の『ジキル&ハイド』から日本初演の話題作『デス・ノート』まで、パワフルで叙情的なメロディで多くのミュージカル・ファンに愛される作曲家フランク・ワイルドホーン。キラ星のような彼の名曲の数々を、各国の選りすぐりのミュージカルスターがフランク自身の伴奏で歌うという贅沢なコンサートが、日本で実現します。
出演はドイツから、トーマス・ボルヒャートとサブリナ・ヴェッカリン。アメリカからアダム・パスカルとジャッキー・バーンズ。そして宝塚卒業公演であるフランクの作曲作『NEVER SAY GOODBYE』で彼と出会い、今夏奥様となられた和央ようかさん。アダム(『RENT』)はじめ並外れた声の持ち主ばかりとあって、テクニックはもちろん、強靭な声と肉体がなければ歌いこなせないと言われるフランクの楽曲の魅力を存分に届けてくれる一夜となりそうです。
『フランク・ワイルドホーン&フレンズ』撮影:岸隆子
舞台下手のピアノの前にフランク・ワイルドホーンが座り、彼のリードでアップテンポの「鏡の国へ」(『アリス・イン・ワンダーランド』)が始まると、舞台中央に5人の出演者たちが登場。ぱっと華やいだ空気をさらに盛り上げるように、スターたちは一節ずつメロディをボリューミーな声で歌い継ぎ、広大な劇場空間の温度を上げてゆきます。ニコニコと人懐こい笑顔のフランクが自ら曲と歌い手を紹介する形で、コンサートは熱気の中にも親しみを感じさせながら進行。「炎の中へ」(『スカーレット・ピンパーネル』)の力強いデュエットではアダム・パスカルののびやかなたたずまいに対してトーマス・ボルヒャートが実直そのもの。いかにもヨーロッパのスターらしい真面目さを見せますが、「罪な遊戯」(『ジキル&ハイド』)での彼は一転、歌終わりに相手役のジャッキー・バーンズにちょっかいを出し、意外なお茶目さでも観客を魅了します。
『フランク・ワイルドホーン&フレンズ』撮影:岸隆子