シャマラン監督のPOVホラー誕生
『ヴィジット』(2015年10月23日公開)両親が離婚して母とともに暮らす姉ベッカ(オリヴィア・デヨング)と弟タイラー(エド・オクセンボウルド)。母は若い頃、実家を飛び出して以来帰っていないので、ベッカたちは祖父母に会ったことがありません。
ある日、祖父母から孫と休暇を過ごしたいと連絡があり、ベッカはハンディカメラを持ってタイラーとともに祖父母の家へ。やさしく迎えてくれるおばあちゃん(ディアナ・ダナガン)とおじいちゃん(ピーター・マクロビー)でしたが、夜の9時30分になったら部屋を出てはいけないと言われます。その夜9時30分になると、部屋の外で奇妙な物音が聞こえてきたのです。それは……。
おじいちゃん、納屋で何しているの?そこにあるものは何?
ベッカが撮影しているシーンも多いので、彼女の視覚体験がそのままダイレクトに観客に伝わるのもこの映画の醍醐味です。
今回、POV映像を効果的に使ったのは、この映画のプロデューサーがPOVを熟知したジェイソン・ブラムだったからかもしれません。
ブラムは『パラノーマル・アクティビティ』などPOVホラーで成功をおさめた人物。シャマランの世界をPOVに落とし込み、またシャマラン監督自身が「人を怖がらせる」というホラーの基本をしっかり踏まえてわかりやすい映画作りをしたことが良かった。超常現象や“わかる人にはわかる”的な特殊な世界観ではなく、誰もが怖いと思うことや嫌悪を感じることにフォーカスしたからこそ、この映画はギョっとする怖さと気持ち悪さを含んだ作品になったのです。
田舎のおじいちゃんとおばあちゃんの家に泊まりに行くなんて楽しい思い出作りになりそうと思いつつ、ふっとかすめる“大丈夫かな”という不安。『ヴィジット』は、そこにつけこんだ映画です。ベッカとタイラーは「こんなはずでは!」という体験をするのですから。
また、弟タイラーのキャラクターが良いんですよね。強迫性障害を抱えたラッパー志望の少年は、エンドロールまでいい仕事しています。
監督:M・ナイト・シャマラン 出演:オリヴィア・デヨング ベッカ、エド・オクセンボウルド、ディアナ・ダナガン、ピーター・マクロビー、キャスリン・ハーンほか
(C) Universal Pictures.
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