聴診器は子どもの遊びから生まれた!
聴診器は糸電話とおなじ原理です
1815年、フランスの医師ルネ・ラエンネックは、子供が木の棒の端に耳をつけて遊んでいるのを見て、聴診器のメカニズムを思いつきます。糸電話で音が伝わるのと同じ原理です。ただ、開発された当初の聴診器はというと、一本の筒形の木でできた単純なものでした。
その後、もっと聞きやすくするため胸にあてる部分を大きくしたり、胴体の部分がゴム状になったりと改良されて、現在の聴診器となっていったのです。
聴診器の品質はピンからキリまで
テレビなどで、パラボラ型の集音器をスタッフの人が持っているのを見たことがありませんか? 聴診器にも音がよく聞き取れる集音作用が備わっています。聴診器は品質によってピンからキリまであり、値段も数千円のものから十万以上するものまで様々あります。通常医師が使用しているものは数万円以上の高価なものが多く、音を聞き分ける必要が多い循環器科や呼吸器科の医師はこだわりをもった聴診器を使用していることが多いようです。
次に、実際の現場では、聴診で何を聴いているかを解説していきましょう。
聴診器で聴く……心臓の音
心臓の病気がみつかることがあります
心臓の音は、I音、II音、III音、IV音と分けられています。例えば「ドックン」という音の「ドッ」がI音、「クン」がII音となります。III音やIV音は過剰心音と呼ばれ、これが聞こえる場合は心臓の病気の可能性があります。
聴診する際には、4つある心臓の弁が開いたり閉じたりする際の「音の大きさ」や「雑音」「音の間隔」などを聞き分けます。扉が歪んでいたり動きが悪いと開け閉めする際に異常な音がするように、心臓の弁にも異常があると弁が開いたり閉じたりする際に異常な音が聞こえます。
雑音も音量によって、I~VI度まで6段階に分類されており、雑音が起こるタイミングにも心臓が収縮しているときなのか拡張しているときなのかなど、分類があります。それを聞き分けることで、病気を推測するのです。
また心臓のリズムを聞くことにより不整脈などを確認します。心臓の専門家である循環器の医師ぐらいになると、オーケストラの指揮者がメロディーを聞き分けるように、"心音"の僅かな違いを聞き取って、心臓のどこに部分でどのような問題がおきているかを瞬時に判断することが可能となります。
聴診器で聴く……肺の音
聴診器では肺の音も確認します。たとえば間質性肺炎では、マジックテープをはがすような「パチパチ」とした音が聞こえます。これはマジックテープのメーカーである“ベロクロ社”にちなんで“ベロクロラ音”と呼ばれます。“ラ音”とは聴診の際に聞こえる雑音のことです。ラ音にも「ズーズー」「ピーピー」「ブツブツ」など様々な音があり、どこの場所でどのような原因で音がしているのかを推測します。実際の肺の聴診では、「吐いた時の音」「吸った時の音」「左右差」「音の連続性」「高温・低温」「粗い・細かい」などから、どのような場所にどのような病気が隠れているかを診断していきます。また前からだけでは聞き取りにくいので背部からも聴診します。実際の現場で確認することが多いのは、肺炎や喘息の有無などです。
また「頸動脈の狭窄」や「腸の蠕動運動」の確認など、心臓や肺以外の分野でも聴診は利用されています。昔からある古い検査法ですが、いろいろな情報を得ることができる有用な検査なのです。