アドバイス1 手元に残る老後資金は約5450万円
現在の勤務先を退職した場合、貯蓄を取り崩しつつ、パート収入で生活できるかどうか、まずは試算してみましょう。仮にパート収入を月8万円、パート勤務は希望する60歳までとします。現在の生活費が28万5000円ですが、そのうち7万円は、保有株式売却のための一時的なアップ分のため、それを除くと21万5000円。また、相談者のしほみさんは「趣味・娯楽費の月7万円はかなり減らせます」とのことですから、これを半分の3万5000円に減額したとすれば、実質の生活費は18万円。この時点で、生活費の不足額10万円を毎月貯蓄から取り崩すことになります。結果、60歳までの12年間に1440万円が貯蓄から引き出されます。
次に、パート勤務を辞めた60歳から年金支給までの65歳までですが、こちらは18万円を全額貯蓄から取り崩しになりますので、トータルで1080万円。ただし、60歳以降に保険料の支払いがなくなりますので、実際は1014万円となります。つまりは、今から65歳までにトータルで2454万円を取り崩すことになるわけです。
一方、手持ち資金は、株式を売却する時期やそのときの株価で違いがでますが、とりあえず現状の株価だとすれば、譲渡所得に対する売却時の税金約1000万円を差し引くと、残る資産は7000万円。また60歳時に、保険の満期金900万円が受け取れるとのことですから、65歳時に手元に残っている貯蓄は約5450万円ということになります。
アドバイス2 「貯蓄に依存する」生活のリスク
この5450万円は、65歳以降の老後資金となりますが、それで足りるなら、今からパート生活でも問題ないということです。結論から言えば、問題ありません。年金受給額が月14万円ということなので、先の生活費(保険料を差し引く)との不足分は2万5000円程度。90歳まで生きても十分足りる計算になります。ただし、あくまで計算上での話です。つまりは90歳まで健康で、かつ16万~17万円の生活をずっと続け、その間、大きな支出がないという条件付きということです。もちろん、心配したらきりがありませんが、「貯蓄に依存する」生活がずっと続くことは、それなりのリスクを背負っているということは認識しておくべきでしょう。たとえば、月17万円の生活が、ある月は20万円になり、またある月は22万円になりと、恒常的にオーバー気味になると、いつしかその生活水準が当たり前になる、そういう面があるからです。
スポット的に「夏休みに旅行に行くから10万円」という貯蓄の使い方はいいと思います。普段の生活費がアップしてしまうのは、やはり避けたいところです。
アドバイス3 パート収入のアップか働く期間の延長
それを踏まえて、老後生活をより安心できるものにするには、パート収入をもう少しアップさせる。理想は月12万円以上。この収入であれば、60歳までの貯蓄の取り崩しは864万円となり、60歳時に受け取る保険の給付金900万円とほぼ同額になります。つまり、結果的には今の貯蓄部分はまったく手を付けず済むことになるわけです。あるいは60歳までとするパート勤務を65歳まで頑張って続けるという方法でもいいと思います。家計支出については、趣味娯楽費を半分にするという前提で試算しましたが、付け加えるなら、保険でしょうか。終身保険と共済、ともに必要性はほとんどありません。これだけ貯蓄があるのですから、医療費など貯蓄から捻出すればいいはず。浮いた保険料は貯蓄の取り崩しを減らすことにつながります。その方が合理的ということです。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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