本国にいる家族も健康保険の扶養に入れられる
外国人労働者も要件さえ満たせば、家族を扶養に入れられます
ここで扶養親族の要件を簡単におさらいしておきましょう。同居の場合は、原則として年収が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入180万円未満、以下同じ)、かつ被保険者の年収の2分の1未満の場合に被扶養者となります。一方、別居の場合は、原則として年収が130万円未満、かつ被保険者の仕送り額未満の場合に被扶養者となれます。
国外在住の家族は別居に該当します。そのため、別居のケースの要件に該当すれば扶養に入れられます。通常は、会社で要件を確認しますので、対象者の向こう1年間の年収や、続柄などを確認して、年金事務所に書類を提出します。保険証は国内在住の方同様に交付されますが、もちろん国外の病院で使えるわけではありません。一旦本人が全額負担したのち、還付の請求を行うことになりますが、手続きはかなり煩雑で時間がかかるようです。
外国人労働者も配偶者控除、所得控除を受けられる
お次は所得税です。こちらは103万円の壁として有名ですが、外国在住の配偶者や子などの親族も、国内に住んでいる場合と同じように所得控除の対象にできます。実務上は、103万円の基準について、満たしているかどうかを確認することが難しいとった問題もあります。国内に居住している場合は、税務署側で、確定申告のデータを参照したり、市区町村等から所得データを取り寄せたりするなどして所得をある程度把握できます。例えば、一人暮らしの子どもを扶養親族として年末調整を受けたけど、実は子どもはアルバイトで103万円以上稼いでいました、といったケースも、日本国内であれば捕捉できます。
これに対して、外国人労働者については、国外への送金を証明する書類や、扶養対象者の年齢や続柄などが確認できる書類を添付して扶養状況を確認する取扱いでした。とはいえ、これらの証明書類は添付が強制されていないため、年末調整や確定申告のときに、送金や家族関係を確認することは実務上困難でした。実際、叔父や叔母、兄弟姉妹など日本人に比べて幅広い親族が対象として申告されるケースもあります。もちろん、申告が正しい場合が多いでしょうが、虚偽の扶養親族の申告で所得税逃れになることもないとは言い切れません。
扶養控除の証明書類の提出が義務化に
そのため、平成28年分の扶養控除申告書や確定申告書には、本国在住の配偶者や扶養親族を所得控除の対象とする場合、国外への送金を証明する書類や、扶養対象者の年齢や続柄などが確認できる書類(日本語の訳文付き)の添付が義務付けられました。書類の添付がないと、所得控除が受けられないということも生じてしまいます。平成28年からはかならずこれらの書類を確認の上、年末調整の処理を行うようにしなければなりません。外国人労働者本人にも、これらの書類を揃えておくよう事前に伝えておきましょう。