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トイレから漏れる情報…スマート家電のハッキング対策

今、家電業界はネットに接続できる「スマート家電」の開発に力を入れています。未来の生活を一変させると期待されていまですが、同時に「家電のハッキング」という今まで想像もしなかったリスクも予見されています。IoT(モノのインターネット)の時代とも言われる昨今、そのメリットとデメリットと共に解説します。

福田 正人

執筆者:福田 正人

インターネットサービスガイド

知っておきたい「スマート家電」のセキュリティリスク

みなさんは「モノのインターネット」という言葉をご存じでしょうか?これはあらゆるモノにインターネット機能を持たせ、制御する仕組みのことです。そのモノには家電も含まれており、ネット接続機能を有した「スマート家電」が注目を集めています。しかしネットあるところにセキュリティリスクありで、スマート家電のハッキングが危険視されています。

スマート家電とはどんなもの?

例えばスマート家電の炊飯器であれば、家族それぞれの好みにあった炊き方をスマートフォンに登録し、炊飯器にタッチするだけで好みの炊き方ができます。電子レンジであれば、レシピの中からよく作るレシピをお気に入りに登録することができます。

遠隔操作も可能なので、外出先からエアコンをオン/オフしたり、レコーダでテレビ番組を録画することも可能になります。より快適な暮らしの提供をスマート家電は目指しており、家電業界は製品のスマート化にまい進しています。

スマート家電がハッキングされる?

このようにスマート家電は未来の生活のあるべき姿としてさかんに喧伝されていますが、ネット回線に接続している以上スマート家電がハッキングされる可能性はあります。

実際のところ家電がハッキングされるとはどんなものでしょうか?

シミュレーション「家電がハッキングされた!」

Aさんの家の家電はすべてスマート家電です。ある日家に帰ってみると様子が変です。夏なのにエアコンからは熱風が吹いています。冷蔵庫は電源が入っておらず食べ物は全滅です。トイレに行くと便座が上げ下ろしを繰り返し、ウォシュレットが作動し続けています。ある日怪文書が届き、そこには視聴したテレビの内容からお気に入りのレシピ、いつトイレに行ったかの情報が書き込まれています。
人の家のクーラーやトイレを勝手に操作する、というのはいくぶん間の抜けた話ではありますが、スマート家電のハッキングはユーザーの生活情報が筒抜けになるということであり、個人情報の観点から決して無視できない問題です。

さらにカメラ機能が搭載されている家電がハッキングされた場合、家の中を盗撮されるという危険性もありえます。

イタズラに留まらない家電ハッキング

問題はプライバシーの侵害やイタズラに留まりません。生活情報を知られれば留守の時間帯を知られるということになり、空き巣に入られる可能性もあります。

また、家電製品を利用する商業施設や病院など、建物の規模が大きくなるほど被害は甚大なものになります。家電のハッキングは悪質ないたずらに留まらず、実害につながる可能性は十分にあるのです。

スマート家電は携帯電話やノートパソコンに行うような暗号化やハッキングのテストがされていないことが多いため、従来のデバイスよりもセキュリティの脆弱性が指摘されています。

2014年1月16日、アメリカのインターネットセキュリティ会社Proofpointがスマート家電に接続された10万以上の家庭用電気機器からサイバー攻撃があったことを発表しました。

家庭用ルーター、テレビ、冷蔵庫、ワイヤレススピーカーなどから1日に3回で合計10万以上のスマート家電に遠隔操作でプログラムが埋め込まれ、企業や個人宛てにスパムやフィッシングメールが75万通以上も送られました。不正ウイルスに感染したスマート家電が、知らないうちにサイバー攻撃に利用されるということもありえるのです。

ハッキングを防ぐにはどうすればいい?

スマート家電を製造しているメーカーもセキュリティ対策を講じていますが、ユーザー自身のセキュリティ意識が低ければ意味がありません。

しかしスマート家電の数が増え、それらひとつひとつにセキュリティ対策を施すのは現実的と言えません。そこでスマート家電を含めたすべての通信デバイスが経由するホームルーターにきちんとセキュリティ対策を施すことが推奨されます。

IDやパスワードは購入したときのままの状態(デフォルト)にせず変更し、ルーターを動かす基本プログラムを最新状態にアップデートすることが求められます。

モノのインターネット化で変わる社会

調査会社IDCによると、2019年にはインターネット機能を有するデバイスの普及台数は国内で9億5,600万台に達すると見込まれています。

家電のみならず、自動車や住宅もスマート化が進んでおり、私たちがこれまで経験したことのないリスクが今後発生していくと思われます。

「そんなモノにスマート化は求めない」というアナログな生活を好むユーザーももちろんいるでしょう。しかし従来のアナログ製品が今後発売されなくなるとしたら、その時は否応なくこうしたリスクにさらされていくことを覚えておかなくてはなりません。
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