アドバイス1 リスクがあると言わざるを得ない
ソヨヴさんはセミリタイアを希望されていますが、結論から先に言いますと、現時点でのプランではリスクが高いと考えます。では、具体的に検証してみましょう。まず、現在の貯蓄額と投資額、合わせて4050万円。退職後、退職金は住民税や社会保険料で相殺されてしまうとのことですから、ここには加えません。
退職後の生活費は月13万円。退職後2年間は仕事をしないとのことなので、この間の生活費312万円が、まず丸々支出されます。次に、2年後にパートを開始。月収が6万円であれば、年間84万円が赤字となります。38歳から60歳まで22年間パートで働くと、トータルの赤字額は1848万円。先の無収入の2年間と合わせると、2160万円分の資産が目減り(投資部分は変動なし、貯蓄の利息分なども考慮しない場合)することになります。残りの資産1890万円は、生活費にして約145カ月分。60歳から完全にリタイアし、プランどおりに公的年金の支給を75歳に延長すると、それより3年前の72歳で資産は底をつくことになります。
ソヨヴさんはご自身で試算して「何とかなりそう」という結論になったのは、投資による資産の増加分を考慮しているからですが、その点についてもう少し考えてみます。
アドバイス2 今後50年分の生活費を委ねる危うさ
投資については、仮に資産の半分2000万円を運用して、年2%の運用益を得たとします。そこから税金が引かれ、実際に手にするのは32万円ですが、これを仮に15年間続けると480万円。3年間の生活費がカバーできます。しかし、確定利付きの金融商品で年2%を得られるものがない今、年2%の運用益は、単年ならともかく15年、20年と継続することは相当ハードルが高いと言わざるを得ません。1年でもマイナスになれば、翌年はさらに高い運用益が求められます。投資額を4000万円に引き上げれば、運用益は倍の額になりますが、損失も倍になるため、その難しさは変わりません。
また、生活費で原資を食いつぶしながらの投資ですから、一定の運用益を得るには、途中から2%以上の運用が必要になります。さらに、ソヨヴさんが運用利回りを「物価上昇+2%」と設定したように、実際は物価上昇分を運用利回りに乗せなければ、わずかな運用益なら実質目減りというケースもあるわけです。
もちろん、新規公開株の公募に当選し、運良く1000万円以上の売却益を手にするかもしれません。運用が順調で10%以上の利回りを手にする年があっても不思議ではないでしょう。しかし、それらはあくまで仮定の話です。そして何より、必ず毎年プラスになるという確証がないものに、たとえば85歳まで生きるとすれば、ざっと50年分の生活費を委ねるわけですから、これはリスクがあるとしか言えないのです。
アドバイス3 ポイントはパートの延長と実家に入ること
では、ソヨヴさんが希望する「セミリタイアをし、パート収入と手持ちの貯蓄を取り崩しつつ、老後も含めた今後の生活を送る」には、どうすればいいか。方法としては、まずは収入アップがあります。パート期間を60歳までとせず、65歳、70歳と、できる限り延長することです。もうひとつは、実家に定年後に入るかもしれないとのことですが、必ず入って家賃を浮かすことです。これで年間50万~60万円支出が下がるのですから、投資よりもはるかに家計改善になります。また、ご本人には苦痛でしょうが、少しでも長く現在の勤務を続け、手持ち資金を増やすことも十分有効な方法です。
そもそも冒頭の試算にしても、ソヨヴさんがずっと健康で60歳まで収入が途絶えず、また、予期せぬ大きな支出がないという前提でのものです。何か想定外のことが起きれば、それこそ生活が立ち行かなくなることも否定できません。そう考えれば、より堅実で余裕のあるプランを立ててほしいと思います。
「ソヨヴさん」から寄せられた感想
ご丁寧なアドバイスありがとうございました。改めて指摘されてみると、ここ数年相場環境が良かったこともあり、投資に過剰に頼ったプランになっていたように思います。現在の生活水準をほぼ変えずにリタイアという考えが無謀だったかもしれません。現在の仕事をあと1年程度粘り、この間に基準生活費の引き下げに取り組みたいと思います。あと1年分資金を積み増し、月11万円程度で暮らせるメドがつけばほぼ投資ノルマは無くなると思いますので、改めて退職を考えたいと思います。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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