アドバイス1 老後資金づくりは確定拠出年金に絞る
老後資金の準備ということですが、確かに老後までまだ時間はタップリあります。また、独身で実家住まいですから、収入の多くが余裕資金になるでしょう。とはいえ、投資額が貯蓄額の25倍というのはあまりにも投資比率が高過ぎます。投資は当然ながらリスクをともないます。今は余裕資金であってもいずれ使いみちが決まってくるはずです。しかし、必要なときに必ずしも利益が出ているとは限りません。また、リーマンショックのような大きな下落が再び起こる可能性も否定できません。そういったことへのリスクヘッジとして、現在利益の出ているものを徐々に売却し、現金化しておくべきでしょう。目安として現時点で400万~500万円は現金で持っていたいところです。
また、投資目的を老後資金づくりとするならば、確定拠出年金を始めることを勧めます。毎月の掛け金が全額所得控除され、また投資信託の分配金等が非課税といった税制優遇のメリットもあります。60歳まで解約できないという点も、逆に老後資金と明確に位置づけできます。勤務先でその制度(企業型)がなければ個人型で行うことも可能です。
アドバイス2 保険料を支払うためにバイトは不自然
Yさんの家計の大きな特徴は、保険料支出が19万円にも達しているとこと。この金額は手取り月収の約60%にもなります。今年になってバイトを始めたのも、赤字家計だからという理由ですが、正しくは保険料を払うためにしていることになります。これは、どうにも不自然でおかしな話です。保険料の大半は外貨建ての終身保険に掛けているものです。
当然ですが、現時点で死亡保障を取る必要はありません。また、貯蓄性を求めたものだとすれば、予定利率は高いでしょうが、それでも保険料の一部はコストとして差し引かれています。効率で考えれば、貯蓄商品で増やした方が無駄がない(預けた金額が全額貯蓄となっていく)のです。さらにいえば、外貨建てですから、為替差益もありますが、為替差損というリスクもあります。その意味で、投資をしているのと環境としては同じです。
この保険に関しては、すぐに払済保険にして今後、保険料の支払いをやめる。結果、日本円にして毎月16万~17万円が浮きますから、その一部(できれば限度額いっばい)を確定拠出年金の積立金に充て、残りをしっかり定期預金で貯めてください。この方が、お金の流れとその目的が明確で、かつ合理的です。
(※)保険会社または商品によっては、掛けた年数などによって「払済保険にできない」規定を設けている場合があります。
アドバイス3 結婚をすればダブルインカムで乗り切れる
もうひとつ、気になることがあります。結婚について「縁があればしたいが現状の収入では無理」と言われていますが、はたしてそうでしょうか。パート収入を含めず、手取りで年収340万円ほど。年齢から考えて、決して低いとは思いません。しかも、結果的に保険商品で積立貯蓄をしているわけですから、実家住まいという恩恵はありますが、実際はかなりの黒字家計で回っているのです。また、今は共働きがほぼ当たり前の時代です。結婚すれば、逆に生活費を効率よく使えるので、子どもが生まれるまでかなりのペースで貯蓄できるはずです。そこで貯蓄が一段と増えれば、家計的に苦しくなる出産~保育園・幼稚園時代も慌てず過ごせ、小学校入学からまた貯蓄ペースが上がります。家族のライフプランを十分組むことができるのです。
もちろん、縁があってのことでしょうが、老後対策は確定拠出年金に任せ、より手前のこと(結婚、子どもなど)にお金を活かしてみてはどうでしょうか。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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