競馬/一頭追っかけシリーズ

追っかけシリーズ第12回 ~現役生活最大のピンチ!?~(2ページ目)

最上級クラスである「オープン」の仲間入りを果たしたシャドウダンサー。しかし、諸事情でもう一度「1600万下」クラスからオープンへの再昇格を目指すことになりました。ただ、1600万下は一度クリアしたから、そんなに難しくないはず……と思いきや、そこには大変な困難が待っていたのでした。

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド

負け過ぎの理由は、「闘争心の欠如」か?

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シャドウダンサーのスランプは、まるで母のよう?

立て続けとなった2度の凡走。細かな敗因を探れば、色々な理由が挙げられるでしょう。ただ、それにしても負けすぎです。

デビュ−2戦目、豪華メンバーの中で2着と健闘した走り。昨秋、夏休み後の1000万下を快勝して、続く1600万下でも僅差の2着となった走り。そのレースぶりを見れば、このクラスでここまで凡走するのは不自然と言わざるを得ません。これはおそらく、「気持ち」の問題ではないでしょうか。つまり、闘争心を失いかけているのではないかということです。


兆候はありました。先ほども触れたように、昨冬あたりからシャドウダンサーは好走と凡走を繰り返すようになりました。2着のあとに7着、そしてまた2着のあとに8着。レース毎の差が激しいのです。管理する陣営も「集中して走らないときがある」「最後まで気持ちが続かないときがある」というコメントを何度かしています。

競走馬は、もちろん目の前のレースの価値を知りません。ですから、気持ちが乗らなければきちんと走ってくれないのです。だからこそ、サラブレッドに全力を出してもらうのは、難しいもの。たとえ高い能力があっても、馬にやる気を出してもらわなければどうにもならないのです。

シャドウダンサーは、いわば「気分屋」の面を少しずつ覗かせてきたのかもしれません。馬にとって、それは決して不自然なことではないのですが。

母のスランプから考える、息子シャドウダンサーの復活

シャドウダンサーのスランプは、精神面によるものではないか。そんな考えの背景には、母ダンスインザムードの現役時代も関係しています。

ダンスインザムードは、2003年冬にデビュー。破竹の4連勝で、翌年のG1桜花賞(芝1600m/阪神競馬場)を制覇します。兄姉にもG1馬がいる家系で、その走りは「天才少女」と言われました。

2004桜花賞のレース映像(ダンスインザムードは黄帽の9番)

しかし、その後は強さを見せるレースもあれば、あっさり負けてしまうレースもあり……。徐々に成績が不安定になっていきます。それでも、強さを見せるときの走りは凄まじいものがありました。

それが2005年、シャドウダンサーと同じ4歳のときに、ダンスインザムードは大スランプに陥ります。9着→18着→8着→12着と、デビュー時には考えられないような大敗が続いたのです。これは能力の問題ではなく、闘争心の喪失であることは明らかでした。

母のこういう軌跡を知っているからこそ、シャドウダンサーが同じような精神的スランプに陥っても不思議ではないと思うのです。むしろ、それ以外に考えられません。シャドウダンサーは、このままスランプから抜け出せなくなるのでしょうか。

なお、母ダンスインザムードは、12着のあとに出た4歳秋のレースで8着。やはり成績は上がりません。ただし、ここではわずかな光明が見えました。というのも、このレースでダンスインザムードは、最後方の17番手を追走。直線だけスパートすると、素晴らしい追い込みで8着まで押し上げたのです。コンビを組んだ北村宏司騎手の意図に応えるかのように、少しずつやる気を見せたレースでした。

そして、その後のダンスインザムードは、見事に闘争心を取り戻します。桜花賞以来となるG1を勝利し、牡馬(オス)相手のG1でも2着と健闘。「天才少女」と呼ばれたその才能を見せつけました。

ちなみに、スランプ明けのG1勝利となったのは、2006年5月のG1ヴィクトリアマイル(芝1600m/東京競馬場)。このときコンビを組んだのは、復活の足がかりを作った北村宏司騎手でした。彼にとっては、ジョッキー人生で初めてのG1勝利。まるで、ダンスインザムードが“恩返し”とばかりに走ったようでした。

話は逸れましたが、そんな母を思えば、シャドウダンサーがふたたび力を見せてくれる可能性も十分にあるでしょう。母と同様に、闘争心を呼び戻していくしかありません。そこは、管理する角居勝彦厩舎に託しましょう。日本最高峰のスタッフなら、きっとやってくれるはずです。

シャドウダンサーは、ただいま休養中。しっかり立て直して、もう一度オープンを目指してほしい!


(リンク)
シャドウダンサー|netkeiba.com
ダンスインザムード|netkeiba.com

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