「財務会計論」の論文式試験で問われるのは、見解の相違や論拠の理解!
論文式問題の理論問題を見てみましょう。(2)は、のれんの会計処理方法に関する問題で、頻出する問題といっても過言ではありません。
のれんとは、企業の無形資産の一種で、一般に営業権(ブランド、ノウハウなどの見えない財産)などと呼ばれているものです。
日本の会計基準では、のれんは規則的に償却することとされていますが、国際的な会計基準では、のれんは償却しないことになっています。つまり、日本と世界とで見解の相違があります。
そのうえ、のれんと言えば、企業の決算書において多額に計上されている場合もあり、のれんをいかに評価するかは監査上も重要なポイントになります。
監査上重要なポイントであるうえ、日本と世界とで見解が異なるのですから、公認会計士試験の出題者ならば、受験生が理解できているかどうか聞きたくなりますよね。
日本の基準ではのれんを「超過収益力(ブランド力)」として考えており、ブランド力は企業が何も努力しなければ年々低下していくことが経験的に分かっていますから、規則的に償却します。
このように、穴埋め問題が、論文式試験で出題された場合はラッキーかもしれません。過去には、出題者の著書を読んでいなければ解答できないような穴埋め問題も出題されたこともありましたが、最近は穴埋め問題が出題されるのは典型論点であることが多く、取りこぼしのないように注意しましょう。良問であり、まじめに勉強している受験生は容易に解答できます。
出題者は、「実務的」「財務諸表において重要」な問題を出したい!
次に、計算問題に関する最近の出題傾向を見てみましょう。・連結財務諸表・企業結合・事業分離・概念フレームワークに関わる問題は毎年のように出題されます。
・改正論点もよく出題される傾向にあります。最近では、退職給付会計基準が改正された際に、平成26年論文式試験で出題されています。
先に解説した問題も、最近の出題傾向も、「実務に直結している」「財務諸表(決算書)に重大な影響を与える」という共通点があります。
公認会計士として監査現場で、企業の財務諸表(決算書)が妥当な内容かどうかを判断するときに必要とされる知識が問われているのです。
少し出題者の立場になって、考えてみましょう。
財務会計論という非常に幅の広い出題領域のなかで、どの問題を出題するか?出題者は悩むわけです。「なんでこの分野から出題したの?」と、出題者もその力量が問われます。受験生と同じですね。
実務的でなく、財務諸表において重要でない分野から出題しようものなら、出題者側もその能力に疑問符がつけられてしまいます。
ですから、出題者としては「実務的」「財務諸表において重要」ということは、出題するにあたって外せないポイントです。ましてや、日本と世界とで考え方に差異があったり、最近会計基準が変更されたりしている場合は、出題したくてウズウズしてしまうはずです。
また、実務的で重要なポイントについては、会計基準や実務指針など、ルールが詳細に設定され、公表されているため、出題もしやすいですし採点もしやすいと考えられます。
そのような出題者側の事情(?)も考慮して学習すると、より効率的かもしれませんね。
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