「持たない」=「お金は使わない」ではないことに注意
一方で、注意すべきポイントがあるとすれば、『持たない』がすなわちお金を使わない、ではないということです。一見すると不思議な感じがしますが、『所有』する買い物にお金を使わないようになっても、『消費』する買い物と最低限度の『所有』にお金をつぎ込むようになってしまう可能性があるからです。
ものを持たなくなったことによる予算的余裕が、家計の改善ではなく、食費のグレードアップに回ってしまうと、減らしたはずの出費が別の出費増につながってしまうことになり、家計全体では改善しないことになります。これは「高品質な食生活」のために、予算配分を切り替えたということでしかないのです(それはそれで意識しているならアリですが)。
また、最低限度の消費を行うときにグレードアップ消費になってしまうことも要注意です。たとえば、デスクトップパソコンはいらないけれど、ノートパソコンだけは一台持とうとしたとき、高いノートパソコンを買っていたらあまり節約にはなっていません。部屋に時計は置かないが高級腕時計はOKといっていたらこれまたかかる費用は何十倍にもなります。
所有しないことの長期的難しさもある
ところで、「所有」を避け続ける先に「持ち家」を買わない、という選択があげられます。ミニマリストの多くはものを多く持たない分、狭い部屋でも住むことができます。また持たない、という信条からどうしても住宅ローンを組むより賃貸生活になる傾向があります。しかし、マネープランを「一生涯」のものとして考えたときには、「老後には持ち家があったほうが楽」ということはいえます。年金生活に入ったとき、国の年金には家賃手当はなく、基本的に日常生活費くらいしかもらえないものです。
ミニマリストの場合、月額4~5万円の家賃でも暮らせるでしょうが、それでもセカンドライフを平均20年とみれば960~1200万円の確保が必要です。エリアによっては同程度のワンルームが買えてしまうかもしれない金額です。
「持ち家」という所有については絶対にNGと決めつけず、しっかり考えておくことが必要でしょう。
「所有」を当たり前のことと思わないヒントとして考えてみよう
ミニマリストにもいろいろあるようで、趣味に使うお金を否定しない人もいます。これはそのとおりだと思います。禁欲的にミニマリストを真似してストレスがたまるようでは本末転倒だからです。誰もがミニマリストになれるわけではありません。むしろ実行できない人のほうが多いと思います。それでもミニマリストの生き方から「ムダを削る生活」や「当たり前の消費を見直す生活」のヒントを手に入れることができれば、これはマネープラン上の大きな変化につながる可能性があります。
特に『所有』する消費の多くは、当たり前だという思い込みが消費を削れないことがあります。ミニマリストに学ぶことはそうした思い込みを取り除くチャンスになるはずです。