一戸建ての売却/一戸建ての売却の基礎知識

家の売却~依頼をする不動産業者の選び方

家を売却するためには、どちらかの不動産業者に依頼をしなければなりません。それでは不動産業者をどのように選べばよいのでしょうか? 営業形態の違いも含めた選び方を考えてみましょう。(2017年改訂版、初出:2010年5月)

執筆者:平野 雅之


マイホーム売却の成否は、まず依頼をする不動産業者選びから

マイホーム売却の成否は、まず依頼をする不動産業者選びから

不動産を売却するときに、不特定多数のなかから自分で買主を探し出すことは、かなりハードルが高いでしょう。

近年はインターネットがかなり一般化してきたため、個人のホームページやブログ、SNSなどで購入希望者を募ることができないともかぎりません。

しかし、その場合でも自分で売買契約を仕切ることは困難ですし、買主が住宅ローンを使いたくても金融機関が相手にしてくれないのです。

そのため、個人や(不動産業者ではない)法人が土地や一戸建て住宅、マンションなど、所有する不動産を売却しようとするときには、ほぼ例外なくどちらかの不動産業者に依頼をしなければなりません。

それではどのような不動産業者に依頼をすればよいのでしょうか? まずは不動産業者の営業形態を知るところから考えてみることにしましょう。


不動産業者のタイプを知る

売却を依頼する不動産業者は、宅地建物取引業の免許を受けた宅地建物取引業者であることが大前提となりますが、免許さえ受けていればどこでもよいというわけではありません。

同じ免許制度のもとで営業しているとはいえ、その取り扱い業務は会社によって大きく異なっています。その違いをおおまかに分けると次のようになります。

分譲業者
□ マンションデベロッパー(主に居住用)
□ マンションデベロッパー(投資用マンション)
□ 開発業者(大規模な土地区画分譲や一戸建て住宅分譲)
□ 建売業者(小規模開発) など

買取再販業者
□ 新築売れ残り物件の買取再販
□ 中古物件の買取再販(リフォームやリノベーション後に販売)
□ 中古物件、土地の買取再販(現状のまま販売)
□ 競売物件の買取再販 など

媒介業者
□ 売買物件の媒介
□ 賃貸物件の媒介、管理
□ 投資用物件の媒介
□ 店舗、事務所、倉庫など事業用物件の媒介 など

専門系、その他
□ 企画開発業務
□ 不動産特定共同事業、不動産投資ファンド
□ オフィスビル、テナントビル、商業施設の運営
□ 資産有効活用業務、相続対策業務
□ 不動産競売、任意売却専門
□ 建築業者の兼業 など

これらのうち、マイホームや住宅用土地の売却を依頼する相手先は「売買物件の媒介業務を取り扱っている不動産業者」ということになりますが、これもまた土地や一戸建て住宅を中心に取り扱う業者、中古マンションを中心に取り扱う業者などタイプはさまざまです。

売買物件を取り扱う媒介業者のタイプ(1)
□ 土地や一戸建て住宅を中心に取り扱う業者
□ 中古マンションを中心に取り扱う業者
□ 投資用物件を中心に取り扱う業者
□ 買取り業者へ物件を持ち込むこと(業販)を中心に取り扱う業者
□ 新築マンションなどの販売業務をデベロッパーから請け負う業者(代理業者)

売買物件を取り扱う媒介業者のタイプ(2)
□ 居住用(実需)物件に強い業者
□ 事業用物件に強い業者
□ 投資用物件に強い業者

売買物件を取り扱う媒介業者のタイプ(3)
□ 売却の依頼を受けるのが得意な業者(元付業者、物上げ業者)
□ 購入希望者を見つけるのが得意な業者(客付業者)

これらの不動産業者の性格の違いをはっきりと見分けることは、一般のお客様にとってなかなか困難でしょうし、実際にはいくつかの業務を兼ねていたり、「媒介ならどれも得意だ」という業者もあるでしょう。

大事なのは「不動産業者によってメインの業務が違う」ということを意識しながら、どのような物件を取り扱っているのかをよく観察することです。

また、地方都市などでは「土地も一戸建て住宅もマンションも、売買も賃貸もやっている」というケースが比較的多いかもしれませんが、大都市では賃貸専門、マンション専門のように専業化している媒介業者も少なくありません。

賃貸専門業者やマンション専門業者でも、土地や一戸建て住宅の売買を取り扱うことに法律上の問題は何もありません。賃貸専門業者に土地や一戸建て住宅の売却を依頼しても、結果的にうまくいくケースはあるでしょう。

初めて土地や一戸建て住宅の売買を取り扱う不動産業者、宅地建物取引士、営業担当者でも、何ら問題のない物件で、かつ売買契約に複雑な要素がなければ何とかなるものです。

しかし、敷地境界の問題、地下を含めた構造物の問題、擁壁法地の問題、道路幅の問題(役所の台帳と現況の相違など)、埋設管の問題(配管位置や素材など)、土地の権利関係の問題(隣地や私道など)、あるいは建物自体の問題や隣地とのトラブルなど挙げていけばきりがありませんが、何らかの問題点を事前に調べ上げ、買主との間でトラブルが生じないように売買契約をまとめるためには、ある程度の経験が必要です。

不都合があったときにすべて不動産業者が責任を持ってくれるのであればよいのですが、実際にはなかなかそうもいかず、引き渡しが終わってから買主に契約解除を申し立てられたり、売主に対する損害賠償請求や訴訟を提起されたりする例もあります。

もっとも、自分が売却を依頼したのとは別の不動産業者が買主を見つけてくれたときに、その別の業者がしっかりとしたところであればたいていは大丈夫ですから、あまり深く悩んだり悲観的に考えたりする必要はありませんが……。

それでも、土地や一戸建て住宅を売却するのであれば「土地や一戸建て住宅の売買を取り扱っている媒介業者」、マンションを売却するのであれば「マンションの売買を取り扱っている媒介業者」に依頼をする、という基本は守るべきです。

売却を依頼しようとする業者の取り扱い業務を見極めるのと同時に、その実績などについてよく話を聞くことも必要でしょう。


売却を依頼するのは大手業者か、中小業者か…次ページへ

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