家族あり、悲恋あり、ABBAあり?
『プルートで朝食を』(2005年度作品)両親に捨てられ、近所の家族に育てられた性同一性障害者の主人公キトゥン(キリアン・マーフィ)。彼は、自分を産んだ母に会いたいと生まれ育った街を出て行くことに……。
けっこうひどい両親の元に生まれ、性同一性障害でいじめられ、それでも自分を愛し、前向きに生きるキトゥンが魅力的。やさしさと愛に満ちた素晴らしい人格者キトゥンをキリアン・マーフィが熱演しています。
ヘビィなストーリーなのにファッションや音楽がポップで美しく、悲しみや孤独はさりげなく……。シリアスな状況を軽やかに飛び越えて生きるキトゥンの孤独だけど快活な生き様がいい。キリアン・マーフィの女装も本当に可愛くて素敵すぎます!
監督:ニール・ジョーダン 出演:キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン、ルース・ネッガ チャーリー、スティーヴン・レイほか
『エム・バタフライ』(1993年度作品)
北京でフランス大使館の外交官(ジェレミー・アイアンズ)が「蝶々夫人」を演じていた女優(ジョン・ローン)に恋をする。実は女優は、女装をした男。外交官に近づいて機密情報を得ようとしていたスパイだったのです。
女を装った男に恋をして「妊娠した」と嘘をつかれても信じてしまう外交官。「そんなバカな」と思うけれど、外交官はゲイではなく女だと信じた純愛だったのです。ストーリーに忠実にしなければならなかったのかわからないけど、クローネンバーグ監督らしさはあまりありません。もっとクローネンバーグ節をきかせてアレンジを加えたら世にも奇妙な『エム・バタフライ』になったかも。ジョン・ローンの女装は色っぽいけどニューハーフ色も濃いです。
監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ジェレミー・アイアンズ、ジョン・ローン、バルバラ・スコヴァほか
『プリシラ』(1994年度作品)
性転換者バーナデット(テレンス・スタンプ)バイセクシャルのミッチ(ヒューゴ・ウィーヴィング)一番若いフェリシア(ガイ・ピアース)はショーのためにシドニーからバスに乗り、砂漠のど真ん中のリゾート地へ……。
良いことも悪いことも様々な出来事が彼?彼女?たちの人生に彩りを加えていく。全編ABBAの楽曲がふんだんに使われ、きらびやかなサウンドとつややかなコーラスが3人の物語をより華やかに盛り上げています。
それにしてもテレンス・スタンプの芸達者ぶりは凄い。いつもは渋い熟年男優なのに、ド派手なドラッグクイーンに大変身して説得力のある演技!ミッチを演じたヒューゴはこのあと『マトリックス』のエージェント・スミスで日本でも知られるようになりました。3人のドラッグクイーントークに笑いつつ、しんみりさせるエピソードも挟んで最後は前向きにGO!いい映画です。
監督: ステファン・エリオット 出演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアース
『Mr.レディ、Mr.マダム』(1978年度作品) オカマクラブのオーナー(ウーゴ・トニャッティ)が一度の過ちでできた息子が結婚することに!息子を母のように育てたオーナーの愛人(ミッシェル・セロー)は大反対。おまけに相手はクリーンな政党の書記長の娘という。ムリムリと思ったけど、彼女の父の政党のスキャンダルがきっかけで結婚することに。双方の親が会う日、オーナーはド派手な家を上品にリフォームしてお出迎えをするのだけど……。
オカマの両親、フツーの息子、厳格な婚約者の両親というキャラクターの色分けが明確でわかりやすく、ギャグもほとんどドタバタ。かねてからフランスのコメディはドリフっぽいと思っていたけど『Mr.レディ、Mr.マダム』もまさにそのもの。後半はたたみかけるギャグ連射に笑いっぱなし! 女装も笑いに一役買っています。
監督:エドゥアール・モリナロ 出演:ウーゴ・トニャッツィ、ミシェル・セロー、ミシェル・ガラブリュほか