3代目が考案した「趣味のとろそば」
何度か訪問したことがある同店。この日は11時30分、ランチタイムの少し前に1人で伺います。暖簾(のれん)の奥の自動ドアから店内へ。向かって右手奥には小上がり、中央に大きなテーブル席が2つ、左手に小さなテーブル席が並んでいます。この日は左手のテーブル席に座ることに。一応お品書きを眺めますが、来る前から決めていたメニュー「趣味のとろそば」(1512円)を大盛りでオーダーします。同店のそばの量は少なめなので(少し小腹がすいた際やおつまみにお酒を飲んで仕上げに少し……という場合を除けば)、「大盛り」での注文をおすすめします。ちなみに大盛りは216円増しとなります。
そしてこの趣味のとろそば、こちらはいわゆる「とろろそば」です。夏向きのそばとして広く一般的な存在ですが、同店はとろろそば発祥の店と言われています。まずは、とろろがたっぷり入った器が運ばれてきます。とろろそばは、そばの上にかけられている“ぶっかけ”のようなタイプもありますが、同店では、大きめのそば猪口にとろろが入った“つけ汁”タイプですね。続いて、大盛りのそばが登場。そばには海苔がかかっています。
あとは食べ進めるだけです……と言いたいところですが、1点だけ。とろろの中には卵黄が入っています。まずはとろろをグルグルかき混ぜてからいただくのがいいと思います(途中でこの作業をして、“味変”を楽しむのもアリですが)。少し長めの白っぽいそばを箸でたぐり、たっぷりとろろを付けてズルズルっと喉の奥に運びます。そば汁と卵黄、ふわふわに泡立ったとろろが混ざったつけ汁は食欲を増進。暑い時期にぴったりですね。
そばを食べていると店員の方から「小さいご飯をお持ちしますか?」と声がかかります。「お願いします」と返答を。とろろの量を考えると、大盛りのそばを完食してもまだ余ります。そう、余ったとろろをすべていただくための嬉しいサービスです。
あらわれたご飯は茶わん半分、いや3分の1程度でしょうか。残ったとろろを全部かけて、飲み干すようにとろろご飯を流し込みます……ごちそうさまです。
「特製ごまざる」 は薬味にレモンも
別日、今度は13時ごろに伺います。実は前回の訪問時、隣に座った客が食べていた「特製ごまざる」(1080円)が気になり、再訪問です。お品書きでは以前から確認していたこちら。てっきりゴマをそばに練り込んで打った「ゴマ切り」みたいなものを想像していましたが、正体はつけ汁が「特製ゴマダレ」というタイプのそばです。注文はこちらのメニューを大盛りで(プラス216円)。運ばれてきた特製ごまざる。とろそばと同様に大きな器にたっぷりとつけ汁が入っています。持ち上げたそばの下部分を少し付けて、“汁”に意識を集中して一口……濃厚なゴマ風味が鼻を抜けていきます。いいですね。そして、こちらのそばで特筆すべきは、ネギと一緒に薬味皿にあったカットレモンです。半分くらいそばを食べ進めたタイミングで、つけ汁の器上でギュっとレモンを絞り果汁を混ぜてみます。そして、再びそばを汁にくぐらせていただきます……そば汁とゴマ、そして柑橘……こちらも爽やかでいいバランスですね。
ふと隣の客を見ると、これまた以前から気になっていた「特せいろ」(1080円)をオーダーしています。同店のそばは二八ですが、この特せいろは十割。数量限定の一品ということでマークはしていましたが未食でした。結局食事を終えるタイミングだったので、お隣さんの現物を見ることもなく店を後にすることに……また“宿題”ができてしまいました(笑)。
江戸天保年間に創業し、同店3代目が考案した名物「趣味のとろそば」を擁するそば店で、ランチはいかがでしょうか?
※2017年6月閉店
■巴町 砂場
・住所:東京都港区虎ノ門3-11-13
・TEL:03-3431-1220
・営業時間:11:00~14:30、17:00~20:00
・定休日:土曜・日曜・祝日
・地図:Yahoo! 地図情報