連載:「アラフォーの“傷跡”。ずっと誰かに言いたかった」第二回

「これまで誰にも言えずに、苦しんできたこと」をテーマに、アラフォー女性が背負っている様々な事情や悩みを聞く連載、第二回。
母娘
「母は私を、自分の思い通りの人間にしたかったんですよ」。マリさん(39歳=仮名)は、母親に過干渉で育てられたことを強く恨んでいた。
世のなかには、心身ともに親に虐待されて育った人が現実としている。どうしてそこまでひどいことができるのかと、私自身、話を聞いていて落涙したこともある。そういう人は、とにかく早く親と物理的にも精神的にも離れるしかない。

ただ、「虐待」とは言えず、むしろ、それは「的外れではあっても、親は親の立場としてあなたを愛していたということでしょ」と思われるような関係で、大人になっても親を恨んでいる人も少なくない。

マリさんは、まさにそういう女性。私は彼女のような人に会うと、どうしてそこまで親に対して執着するのか、不思議だなと感じてしまう。親への理想、期待など、いっさい持っていなかった立場としては。

過干渉で育てられて……

――マリさんは、お母さんに対して複雑な思いを抱いてらっしゃるとか。
マリ:私がいまだに結婚できないのは、母のせいなんですよね。好きな人ができても、必ず母がぶちこわしたから。

――ぶちこわした?
マリ:最初は学生時代です。とっても好きな人ができてつきあっていたら、母が彼のことを調べたんです。それで、「家柄」がよくないって言い出して。

――家柄?
マリ:ええ。うちだって家柄といえるほどの家じゃありません。だけど、母は一人っ子の私の人生を壊すことだけが楽しみだったから。

どうしていつも私の邪魔をするのか。考えると、今も怒りがわいてきます。
(マリさんの表情が歪んで、唇が震え出す)

――(少し落ち着くのを待って)子どものころからそうだったんですか? かわいがられて育ったんでしょう?
マリ:かわいがられたというよりは、過干渉で育ったんです。小学生のとき、私が着ていきたいと思った服を、母に「それはかわいくない」と止められたことがあって。どうして自分が着ていきたいものを着てはいけないのか。そんな些細なことから、ずっとぶつかりあってきました。

――着たい服を着て、さっさと登校しちゃえばよかったのに。
マリ:それができれば、苦労はしませんよ。

――じゃあ、あんまり反抗的な態度はとらなかったのですね。
マリ:私が一言いえば百言返ってくるのがわかってるから。中学受験もさせられたけど、私は本当はしたくなかった。だけどしないと言ったら、母はすぐ泣いて寝込んで大騒ぎになる。だから受験しました。

受かってしまったために、中学から電車通学。結局、高校生のときに学校になじめなかった私が何度も自殺未遂を図って、ついに父が母に「マリの好きにさせてやれ」と言ってくれて。それで、公立高校に中途入学しました。

――それでもお母さんの干渉はやまなかったんですか。
マリ:「あんたは卑怯だ。自殺のまねごとなんかして」とよく責められましたね。私がつらい思いをしていることを、母はまったくわかろうとしなかった。

それなのに、「私がこんなにあなたを思って、あなたのためにがんばってきたのに、ちっともわかってくれない」とよく泣いていました。泣きたいのはこっちなのに。母は私を、自分の思い通りの人間にしたかったんですよ。

――でも、それは無理ですよね。
マリ:ええ。高校の一件で無理だとわかってもいいはずなのに、今度は成績以外のことで、私を「理想的な女の子」にしようとした。

――お母さんの理想の女の子って、どういう子?
マリ:かわいくて素直でおとなしくて、女子大か短大を出てまっとうな会社に勤めて、見合いで結婚する、というのが母の理想だったんじゃないですかね。

だから私、がんばって共学の四年制大学に入ったんです。それは母にとって、明らかに「裏切り」だったみたいですね。

――それでお母さんがあきらめてはくれなかったんですか。
マリ:あきらめるという言葉は、あの人の辞書にはないんですよ。だから、私のボーイフレンドを調べたりするんです。

――お母さんは、どうやってマリさんのボーイフレンドのことを知ったの?
マリ:私が一度、家に連れていったから。

――そこが不思議なんですよ。お母さんに会わせる必要なんてないと思うけど。
マリ:……。

――お母さんに認めてほしいという気持ちがあった?
マリ:……。

――もっと、マリさんが思うような方法でお母さんから愛されたかった?
マリ:……。


マリさんは、私に責められていると感じたようだ。何を言っても、石のように硬く口をつぐんだまま。このときは、そのまま物別れに終わった。私としては、このまま終わるわけにはいかない。人間関係を放り出すのはイヤなのだ、個人的に。

後日、改めて連絡をとった。ぶしつけにいろいろ聞いたことは謝った。マリさんとしては、途中から「わかってくれない人間に何を言っても無駄だ」と思ったようだ。

もう一度、会って話したい。率直に言うと、マリさんも応じてくれた。

>>やっぱりお母さんが好きだから?