内閣発足時などに閣僚の資産が公開されるものの、土地や建物の評価方法が実態をほとんど反映していないことはご存知でしょうか。その理由については「閣僚の資産公開における土地評価のカラクリ」で触れていますが、問題は不動産の評価方法だけではありません。
少し古い話になりますが、2007年10月の公開で資産が7億3,036万円とされた鳩山邦夫元総務相(当時法相)がその数か月後、2008年初めの株安時に「40億円の損をした」と言っていたのだそうです。それが本当なら、真の資産は百億円を上回るような額だったのでしょう。
株式の価格などは資産公開の対象外であるため、「隠していた」とか「不正だ」というわけではなく、もともとの公開の目的が資産の全容を明らかにすることでもありません。
それにしても、実態とはまったく異なる数字が公開され、「◯◯大臣は◯億円」などとマスコミで大きく報道されることに違和感を覚える人も多いはずです。
さまざまな偽装事件が頻発している昨今ですが、この制度を「資産偽装」などとは言わないまでも「意図的に分かりづらくしている」ような印象は拭えないでしょう。
以前に閣僚自身の話として「政治にかかわる者は、国民に資産を明らかにして透明性を図っていくことがたいへん大事」と語ったとする報道もありましたが、現在の仕組みでチェックできるのは閣僚在任中の「特定の資産の増減」にとどまります。
不動産をはじめとして、公開される資産額そのものにはまったく透明性がないことをよく理解しておかなければなりません。
ちなみに、2007年10月時点で7億3,036万円とされた鳩山邦夫氏の資産は、2014年12月の衆院選当選時点で30億6,520万円になっていました。おそらく公開対象外の資産はもっと増えていることでしょう。他人の資産をどうこう言っても仕方のないことですが……。
土地や建物の価格が実態を反映しないのが資産公開
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年12月公開の「不動産百考 vol.25」をもとに再構成したものです)