名前の「ぶった切り」……読みを途中で切った名前は多い
漢字の読み方にはルールがある
A:当然です。明らかに間違った読み方ですから他人に読めるはずはありません。ただそういう名前は最近多くなっていて、皮肉なことに、そうした特殊な読み方の名前がありきたりで陳腐にさえなっているほどです。
読み方の線引きは難しい
読み方の一部だけを使う名前、たとえば「彩」の字を「サ」と読ませたり、「凜」「凛」を「リ」と読ませる名前などは最近はかなり見られます。もちろん正しい読み方ではありません。しかしながら読み方が正しいかどうかにもグレーゾーンがあり、玲奈(れな)、優香(ゆか)などの名は、厳密にはレイナ、ユウカと読みますが、縮めてレナ、ユカと読ませる名前はかなり流行しており、誰でも読めますし、不自然な感じはありません。
寧々(ねね)という名前もこの10年ほど人気を保っています。やや強引な読み方ではありますが、歴史上の人物がいて広く知られており、すでに市民権を得たような名前です。心をココと仮名をふる名前はあまりに増え、今では心美(ここみ)、心音(ここね)などという名前も特に難読とはいえず、あまり不便を感じないという方もいるでしょう。
ですから名前というのは、どこからがいけない、という明確な線引きは難しいのです。多くの人に読んでもらえれば不便はなくなりますし、また漢字の名乗り(名前における読み方)の範囲は法的に決められたものではありません。いったん広く使われた読み方というのは、現在たとえ名乗りの中に無くても、将来は辞典で名乗りの範囲に加えられることだってあり得るわけです。
漢字の読み方は個人が決めてはならない
ただし名づけの基本、原則に立ち戻るならば、漢字の読み方というのは個人が勝手に決めるものではありません。昌(まさ)をマと読ませる、朋(とも)をトと読ませるというような、読み方の一部をぶった切って使うのは、やはり乱暴な名づけになります。それがあたかも名づけの一つの方法みたいに思われることもあります。他人に迷惑に思われることはあっても、知性がある、センスがいい、と思われることはまず無いでしょう。歌やドラマなら、女を「ひと」と読んだり、季節を「とき」と読むようなことはあるでしょうが、お子さんが一生使う名前を考えるのは、娯楽ではありません。本人のためにまじめにつけた、と感じさせる名前であれば、親にとってもお子さん本人にとっても使いやすいものです。しかし人に読めなくてもかまわない、と言わんばかりの印象を与えてしまっては、将来、本人や社会の人にとってその名前が重荷になってしまうでしょう。
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